悪女入門 ファム・ファタル恋愛論 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061496675

感想・レビュー・書評

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  • http://naokis.doorblog.jp/archives/femme_fatale.html【書評】『悪女入門 ファム・ファタル恋愛論』〜男を破滅させる女
    http://naokis.doorblog.jp/archives/asakatsu_reading_salon_20160915.html【朝活読書サロン】(9月15日)
    https://shimirubon.jp/reviews/1674936悪女入門 ファム・ファタル恋愛論 - 男を破滅させる女たち - シミルボン

    <目次>
    プロローグ
    第1講 健気を装う女 『マノン・レスコー』
    第2講 脳髄のマゾヒズム 『カルメン』
    第3講 「小娘」が化ける瞬間 『フレデリックとベルヌレット』
    第4講 自らに恋を禁じたプロフェッショナル 『従妹ベット』
    第5講 「金銭を介した恋愛」のルール 『椿姫』
    第6講 ファム・ファタルの心理分析 『サランボー』
    第7講 悪食のファム・ファタル 『彼方』
    第8講 「恋と贅沢と資本主義」の女神 『ナナ』
    第9講 「失われた時間」の嫉妬 『スワンの恋』
    第10講 ファム・ファタルとは痙攣的、さもなくば存在しない 『ナジャ』
    第11講 「神」に代わりうる唯一の救済者 『マダム・エドワルダ』
    あとがき
    テクスト一覧

    2016.09.11 借りる
    2016.09.15 読了

  • タイトルにドキッとして手に取る。おもしろい!かの有名なマノン・レスコーからカルメン、椿姫、ナナ、マダム・エドワルダまで完全攻略。当時の女性(人妻)の恋愛観や未婚紳士淑女の嗜み、愛と金の関係にまで考察が加えられておりさらに納得。悪女とフランス文学、どちらもおいしくいただきたい方は必読。

  • 著者の毒舌っぷりが愛らしい☆ここまで面白く書かれると、全部読破したくなる。

  • 悪女入門。漫画からアニメ化された『惡の華』の台詞にあった「ファム・ファタル」に興味を持って手にとった。
    特に自身はファム・ファタルに興味がないという人でも悪女になろうとしているわけでもない人でも、女性やこういった悪女に興味がある男性であるなら「ああ、こういう女っているよね」といった噂話をしているような気分で気軽に読めものだった。

    ファム・ファタルと呼ばれる「宿命的でかつ破滅をもたらす女」について数々のフランス文学で描かれた恋愛とその悲劇、それを巻き起こす魅力的な女性たちを各章で紹介されながらファム・ファタルのタイプや特徴について述べられている。

    面白かったのが、ファム・ファタルの定義として「悪女」ではないという。主人公である(あるいは恋人である男性)を破滅的な運命に貶めるものの、それに悪意の有無は問われない。悪意的に騙すヒロインもいるだろうが、その意志に問わず物語の流れ上悲劇は起こりうるものである。浪費家であることが彼女たちの条件に添えられていた覚えがあるが、その浪費すら彼女らにとっては悪意あってのものではなく呼吸をするように自然なことであるなら、悪意の有無は問われないのではと推測する。

    ファム・ファタルは美女でなくてはならないという意味でもなく(対象となる男性にたいしては「他の人では補えない完璧な魅力」は必要ではあるが)、蟲惑的でどこかスキがあり鈍く、純潔でありながら何よりも悪徳を愛する。、どこか物語に登場するヒロインというのはいつだってファム・ファタル的な要素を持ちうるのかもしれない。物語において起承転結の転はたいてい悲劇的で破滅的な部分を持ち合わせる。それを引き起こすのはヒロインだけではないだろうが、少なくともそれと立ち会うことにはなるだろう。ファム・ファタルは創作上にエッセンスをもたらすのであれば彼女たちの存在は必要不可欠ではないだろうか。

    有名な『カルメン』から小耳に齧った『椿姫』まで、数々の作品が知れているから、フランス文学に造詣の深い人ならばより楽しめるかもしれない。それに個人的な期待通り『惡の華』の著者ボードレールも度々名が出されていたことから、先にそれを読んでおいた方が楽しかっただろうかとも考える。

    あとがきに書かれたモモレンジャー型とウッフン型には思わず笑った。上手い対比ではあるが、ほとんどの方はモモレンジャーでもなければウッフンでもないだろう。しかしファム・ファタルとして登場してきた女性のように、ああこういう人いるな、という感覚をフランス文学における幻想の中の蟲惑的な女性よりも現実味を感じられた。

  • 著者は性的倒錯者なのではないか。という一抹の不安を掻き立てる始まりだが...

    フランス文学から紐解く悪女。往々にして、このフランス文学ってのは色恋やら、愛と憎悪が渦巻くものが多いね。

    『マノン・レスコー』『カルメン』『椿姫』『サランボー』などなど11人から、ファム・ファタル:femme fataleを学べる一冊。

    日本の小悪魔なんてのが、可愛く見えて仕方ないね。まあ時代背景ってのもあるんだろうが、金の動き方が小国の国家予算並とか。

    序章あたりじゃ、随分と作者の押し付けがましさが溢れてるななどと感じていたが、進むうち、頷かざるを得ない内容。
    最終的には、セックスを通じて瀆神を感じると...

    一番、衝撃的ではあったが、物凄く納得出来たのがエミール・ゾラの『ナナ』
    恋と贅沢と資本主義。

    以下引用「資本主義の本質を生産に置くマルクスも、貯蓄に置くウェーバーも誤りであり、とりわけ近代資本主義を生み出すのは、むしろ富の循環を促す贅沢:奢侈消費であり、その贅沢の引き金になるのは、女に対する男の恋、ひとことでいえば恋愛と性欲である。」

    今日日、流行りの肉食女子とやらが、これをマスターした日にゃ、どうなることやら。

  • フランス文学から恋愛の本質に迫る。

    恋愛小説にあらわれる、男を結果的に破滅へと向かわせるほどに人生を狂わせる女、ファム・ファタル(宿命の女)の分類と分析から、男女関係の深層、本質を見いだそうとする。
    とはいえ、悪女入門という重々しいタイトルには似合わず、クスクスと笑いながら読めてしまう。

  • ファム・ファタルの本質やその技術面からフランス文学を眺めた軽めの読み物。
    全体的には面白かったが、中盤から後半にかけてはやや「悪女」のレベルがトーンダウンした感あり。
    冒頭を飾る「マノン・レスコー」や「カルメン」に比べると、「この女性はファム・ファタルか?」と首を傾げることもしばしば。特に「スワンの恋」のオデットは、計算高い女性だとは思うけど、ファム・ファタルではないんじゃないか。
    男性を一生冷静な気持ちに立ち返らせることなく、破滅に至るまでの恋焦がれさせてこその「悪女」だと思う。

  • 大笑い。さっすが鹿島先生。

  • [ 内容 ]
    男を破滅させずにはおかない運命の女femme fatale―魔性の魅力の秘密は何か。
    宿命の恋の条件とは。
    フランス文学から読み解く恋愛の本質、小説の悦楽。

    [ 目次 ]
    第1講 健気を装う女―『マノン・レスコー』
    第2講 脳髄のマゾヒズム―『カルメン』
    第3講 「小娘」が化ける瞬間―『フレデリックとベルヌレット』
    第4講 自らに恋を禁じたプロフェッショナル―『従妹ベッド』
    第5講 「金銭を介した恋愛」のルール―『椿姫』
    第6講 ファム・ファタルの心理分析―『サランボー』
    第7講 悪食のファム・ファタル―『彼方』
    第8講 「恋と贅沢と資本主義」の女神―『ナナ』
    第9講 「失われた時間」への嫉妬―『スワンの恋』
    第10講 ファム・ファタルとは痙攣的、さもなくば存在しない―『ナジャ』
    第11講 「神」に代わりうる唯一の救済者―『マダム・エドワルダ』

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    [ 参考となる書評 ]

  • 2010/5/1

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著者プロフィール

1949(昭和24)年、横浜に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。2008年より明治大学国際日本学部教授。20年、退任。専門は、19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ風俗』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「All REVIEWS」を主宰。22年、神保町に共同書店「PASSAGE」を開店した。

「2022年 『神田神保町書肆街考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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