- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061586772
感想・レビュー・書評
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親父の本棚から持ってきた本。
「塩の道」「日本人と食べ物」「暮らしの形と美」の3作が収録されています。
いずれも日本人の生活レベルの文化を読み解くお話。
・塩の生産法と販売ルート
塩の生産方法の伝播と販売ルートに関する丁寧な記述が面白い。
塩は生活に欠かせないもの。今では手に入れる苦労なんてほとんどなく、著者曰く「意識することもない」が、歴史上塩を生産し、手に入れることには多くの工夫と労力が割かれてきた。とんでもなく足を使ったであろう渾身の研究ですね。
・戦乱と食料生産
食料を生産する人口と、戦う人口はまったく区別されてきたのが日本の歴史。
戦国時代にあっても民衆はなるべく戦乱に巻き込まれないようにすることが重要事であり、
ゲリラ戦は一般的ではなかった。
⇒自然の植物食料が非常に豊富だったこととはどういう関係があるのか?
・「軟文化」と「硬文化」
日本は軟らかい物質を巧みに利用する軟文化であった。とくに生活を支えていたのが「わら」
草鞋をはじめとしたわら文化は日本の大きな特色。3日に1回は履きつぶしてしまう草鞋は非常に大量に必要になるものであり、子ども時代からわら細工を覚える必要があった。また、この軟文化の特色は刃物をほとんど使わずに多くのものを作ること。わらだけでなく竹細工も同じ。これを各家庭、個人それぞれが身に付けることが生活上必要だったことは日本人の器用さの背景にあった。
⇒他の日本的文化の発現にもこうした生活上の必要の説明が多くあると良かった。
・日本家屋と畳文化
まっすぐな木を使用する住宅だったからこそふすまによって、間取りを自由に変更できる形式が発達した。また、畳も部屋を自由に使える空間にした。
民俗学の本、だけどそれほど小難しいことが書いてあるわけではないです。
日本の歴史読み物として非常に面白い本です。 -
20131223 講演会のまとめのため、読みやすい。日本人とは?ということを考えるきっかけになりそうな本。日本人として大事な事は何か、考えさせられる。
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塩と塩味が好きなので読んでみたのだが、次から次へと、日本の文化や生活に関する謎が明らかになって「ほほー」「へぇー」「はー」と感じ入る。
日本人の生活習慣や風習で、なんでかなーと思うことや、疑うこともなく行っている行為について掘り下げるとこんな歴史があったのかと知ることができた。
岩手の牛、牛のすごさ、これまた知らなかったよ。未明の地と思われていた東北・北海道が、大昔から日本経済を支えていたのである。 -
宮本常一晩年の話がたり。日本人とは何か?というかそれを育てた型やあり方についての深遠膨大な知識。韓国人がどうのという前に、自らの民族史を読み返しても損は無いですは。
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・牛の大きな産地は西日本にあった。牛が東で飼われるようになったのは戦後。
・鎌倉時代、国々に地頭が置かれ、鎌倉の御家人が警察権と租税の徴収を行ったが、そこで自分の勢力をもった武士が戦争を起こした。奈良などの寺社勢力が強い場所には武士がいなかったため、戦争も起きていない。
・トウモロコシは根が深く下りるために、やせた土地でも育つ。
・18世紀初頭、瀬戸内海にサツマイモがもたらされ、その後の享保大飢饉ではほとんど人が死ななかった。サツマイモがつくられた西日本では、江戸時代の人口は増えた。
・古代中国の越が最後に建てた都は山東半島のつけねの琅邪山。 -
専売制であった塩について、知りたいなと思い購入。専売制時代のお話はほとんどありませんでしたが、興味深い内容がたくさんあった。
3部構成で、「塩の道」「日本人と食べ物」「暮らしの形と美」からなる。
日本は、内陸に塩井なるものや岩塩などを存在しなかったため、海岸で塩を造作りそれを内陸まで輸送していた。その輸送する方法や輸送に生業とする者の話、そして輸送には馬よりも牛が使われ、牛の伝播についても書かれていた。
第2部の「日本人と食べ物」辺ではトリビア的な知識が多く得られた。
世界でも類がないこととして、日本は過去二千年はどの間に人口がずっと漸増してきている。異民族が大挙して侵攻してきたことがないのが大きな原因。
また、大規模餓死がないことも原因の一つ。戦国時代に100年も戦争が続いて、みんなが餓死しなかったのは、戦争している人と、食べ物を作っている人たちが別であったことが餓死を防いだ。
これも世界敵に珍しいことだが、ゲリラ戦が行われたことがない。戦争する者と食べ物を作る者が分かれているためゲリラ戦も行われない。ゲリラ戦とは民衆も参加して行われることがおこってくるものらしい。
保存食なるものも紹介されていたが、記述量が少なく消化不良な感じ。発酵に関して興味がわいてきたので、別で読む必要あり。
民俗学者が書いた本。科学者が書く本とやっぱり違いますね。これはこれでおもしろかった。 -
研究者ではなく世間師といわれる宮本常一がフィールドワークでつかんだ史観。