ライフサイクルの心理学 上 (講談社学術文庫 1026)

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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061590267

作品紹介・あらすじ

人は不安定な幼・少・青年期を経て成人するが、一旦大人になってしまえばもう安心だろうか。そうでもない。大人にもライフステージごとに特有の問題が発生し、職業・家庭・精神生活の各局面で様々の難問がふりかかる。仕事上の悩み・転職=退職の危機・妻との関係・子供の教育問題等々がを脅やかす。人々は人生のピンチをどうしのいでいるか。四十人の個人史を詳細に面接比較した画期的研究。

感想・レビュー・書評

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  • 心理
    人生

  • 尊敬する人からの推薦。若いうちなんて個性がなくてあたりまえ^^
    なかなか固くて読み切れなかったが、自分のこれからの可能性を信じ始めて、自由に生きたい、独り立ちしたいという気持ちへの葛藤が芽生えたときに、とても刺さる言葉が存在していて、辛い気持ちになった。。

    ・20歳になってもパーソナリティは、まだ完全に成長してはいない。根本的な変化を求める次の機会は、人生の正午、40歳に始まる。これをユングは「個性化」と呼んだ。
    ・発達期は一部重なる。
    0~22:児童期と青年期
    17~45:成人前期
    40~65:中年期
    60~:老年期
    →今の時代で考えると、+5歳か?
    ・中年期に入ると、成人前期にあったくだらない虚栄心、敵意、嫉妬、潔癖さなどからもっと自由になれる
    ・成人前期には、体力、敏捷性、持久力、生産性などの資質がある。中年期は、叡智、分別、寛容、感情に左右されない同情心、思慮深さ、もののあわれの感覚などの資質が円熟する季節。
    ・30代後半には、人生半ばの危機として、限りある命だと知る期間が訪れる。これは、自己をもっと完全なものにするのに、若い自己が死んでいくのを悲しまなければならないということである。
    ・自分の弱さを認識することが、他者への分別、共感、同館を生む源。自分の弱さ・もろさを自覚することで自分と他者とを同一視できる場合に限り、他者の苦しみを本当に理解できる。この自覚がない限り、他者に対して同情、哀れみ、愛他心といった感情しか抱けない。
    ・人生半ばの個性化により、自己定義と満足感の内面的源にもっと注意を向け始めることができる。
    ・65歳あるいは70歳を過ぎても権威をもつ立場にしがみついていると、重大な問題が生まれる。まず自分と同じ世代の者とは位相がずれ、これまで以上に大きな責任を負わなければならない中年期の世代の者とは衝突する。
    老年期に入ってまで権力をもち続けることは賢明でない。あとに続く者たちとの接触の少ない孤立した指導者になり、かれらから必要以上に理想視されるか憎まれる存在になりがち。
    ・老年期の第一の発達課題は、社会とのかかわりおよび自分自身とのかかわりに新しい形のバランスを見つけること。
    ・生活構造は3つの観点からとらえられる。
    社会文化的環境:階層、宗教、民族、家族、政治体制、職業
    自分のもつある面:欲望、葛藤、不安、幻想、道徳的価値観、理想、才能、専門性、性格、感受性、行動、思考など
    外界への参加:風景、人物、市民、恋人、労働者、上司、友人、おtぅと、父親、など
    →ある選択をした結果、これらの生活構造にどう意味づけされたか、これを追うことが自己と外界を結びつけているかをしるための調査。
    ・結婚はその人を特定の社会環境と結びつける一方で、その人を他の環境から遠ざける
    ・現状維持は、現在の選択を守るorあきらめ・惰性・受け身の黙認、のどちらか。後者の場合には、もっと満足いく生活構造を形成できない限り、衰退の始まりになる。
    ・過渡期。これはある選択が、わずか数日、数週間の間に行わることが多い。離婚とか転職は、その他にさまざまな変化も生じている過渡期の中でもっとも目立っているだけに過ぎず、実は数年かけて進む変化の一部でしかないことが多い。
    ・22~28の大人の世界に入る時期。確固たる選択。自分の人生を価値あるものに。外からは、おとなになり、結婚し、就職し、目標をはっきりと定め、もっと系統だった生活を送れと圧力がかかる。内面では、安定と秩序を求め、よりどころ、仲間、永続するつながり、革新となる価値観を求める欲求が生まれる。
    ここでは2つの課題が生じている。
    ひとつは模索すること、すなわち守備は荷を広げて選択の余地がもっとはっきりするまで確固たるものを決めないでおく。
    もうひとつは聖人として最初の生活構造を作り上げる(配偶者や職業選択)こと、すなわちよりどころ、安定性、連続性をもつこと。
    ・あまりにも早く決めすぎたのでは?視野が狭すぎたか?死ぬまでこうした生き方を続けていきたいか?という問いを大人の世界に入る時期の後半(28ごろ)に思うのである。
    ・新米時代(18~)の重要な発達課題は4つ
    ①夢をもち、その夢を生活構造の中においている
    ②良き相談相手をもつ
    ③職業をもつ
    ④恋人をつくり、結婚し、家庭をつくる
    夢の実現には大人の支えが必要になる。①良き相談相手(通常年上、メンターと呼ばれる人)、②特別な女性が必要。
    ・われわれは自分が何をしているかきちんと理解していないうちに、配偶者を選び、家庭生活をスタートさせなければならない。
    これは他人の助けをかりずやる営みの1つであり、人間の複雑さ、成長、不条理の一面。
    ・20歳代の男性は一生妻や子たちに精神的にしばられる覚悟ができていない。非常に愛情深く、性的に自由で、感情的に親密な関係を持つことができない。
    結婚に伴うお互いの懸念は、相手とか家族や社会機構への義務感に縛られることにある。
    ・自分の内から湧いてくる野心の真価を認めてくれる女性、自分の計画した人生を共に分かち合いたいと思ってくれる女性を求める。
    けど、彼の夢のために彼女の夢を捨てるという選択は、後になって2人でそのつけを払うときがくる。2人の夢の不一致を認めて、なんとかうまく収めることが、
    2人の関係の重要な問題になる。一方の夢を中心ン位生活構造を形成するのは難しい。2人の夢を両方とも大事にした生活構造を気付くことは、実は大変な発達課題。
    ・次第に悪化する夫婦関係の責任は両方にあった。ジムのビクトリアに対する見方が過度に否定的なことから、人生はこの時期にはまだ自分を夫としては落第だったとは
    はっきり考える状態にはなかった。自分がどんな役割を果たしているかを認識する能力も必要だった。
    ・もろい生活構造を築いてしまった背景には、①アイデンティティを確立できず、困難に会うたびに助けを求める少年気質が抜けきれなかった、
    ②自分自身と家族のためにどんな生活をつくりたいかという未来像がなかった、③良き相談相手に巡り合わなかった
    ・もっと根本的な問いから始めなければなかった。「化学者として貢献すべき大切なものが自分にあるのか?」「たいした業績もあげられないのに、このまま研究一筋でいくべきか」など。
    ・10年以上もかけて築き上げたものを壊すことは難しい。脱出するかそのままでいるか、運命を決する決断を下そうとすると、憂鬱で、無口になり、他人に腹を立てるかと思うと自分を責めたりする。
    夢を追求したい、自立して主体的に生きたい、もっと一人前の男性になりたい。ということへの入口に立っている証ではあるのだが。
    ・妻をどうみるか。良い場合には優しく子育て氏、家庭を管理している母親。悪く見れば自分を操縦士、本当になりたい自分にならせてくれない魔女とか身勝手な女として。
    夫がそういう目でみると、妻は夫が何を語りかけても聞こえず、夫にはもっと妻との心の通い合いと自由が必要だということを理解できない。
    妻から見れば、夫がわけもわからずに逆上し、やたら支離滅裂な文句を言い、これまで延々と苦労して目指してきた生活や妻に対して批判的になり、しかもそれが何が欲しいのかも話してくれないと思う。

  • なんで絶版なんだ。時代、国は違えど、男性の成年、中年のライフサイクルをあぶり出した名著。それにしても、自分が同世代だからか、本当に身につまされる記述が多い。

    ・中年期の特別な発達課題は、自分自身の中および他人の中の子どもの部分と年長者の部分の両方にもっと気付くようになること。
    ・中年は兄貴ではなく、親父。それに気付くことは当惑、いらだしさになる。
    ・停滞を経験し、停滞に耐え、停滞と戦う力というのは、中年期に生産性を求める努力につきものの一面である。停滞性は中年期を通して、発達上必要な役割を果たす。
    ・30歳代後半までは、思考、感情、直観、感覚の1つか2つだけがよく発達する。
    ・安定期と過渡期が交互に表れて進んでいく。
    ・40~45の人生半ばの過渡期では、「これまでの人生でなにをしてきたのか?妻や子どもたち、友人、仕事、地域社会ーーそして自分自身から何を得て、何を与えているのか?自分のために、他人のために本当に欲しているのはなにか?」と問うことが大切。
    ・親から離れると言うよりは、親子の絆の程度と内容が変わっていく。
    ・よき相談相手は成人前期において重要。数歳年長。職場で生まれることが多い。ただし過渡的。平均2,3年、長くて8~10年続く。
    ・よき相談相手と同じように特別な女性は過渡的な存在である。

  • 30代前半で管理職になり、家も建て、それなりに生活していたにも関わらず心の充足感が得られず悶々としていた折、息子の塾の親を対象にしたセミナーに参加した時、講師の方が講義の後の雑談で紹介された本です。まさに人種を問わず人は人生において過渡期を迎え、同じような人生を送っていく。数人の男性を十数年間にわたってモニターした、大学の研究結果に基づく心理学の本。

  • 成人期の発達課題をユングのモデルを下敷きにして明らかにする.
    ・3〜17歳:児童期・青年期
    ・22〜40歳:成年前期
    ・45〜60歳:中年期
    ・65歳以降:老年期
    それぞれの間を過渡期と位置づける.
    ユングのモデルは,40歳を「人生の正午」とし,それ以降は「個性化」(本来の自分になる)が起こる.

    35〜45歳の40人の男性に対して,伝記的面接をして,個人史を探る.
    一回1〜2時間の面接を5〜10回実施.
    テープ起こし原稿は一人当たり平均300ページ.

    成年前期の発達課題は:
    1. 夢を持つ
    2. 良き相談相手
    3. 職業を持つ
    4. 恋人を作り,結婚し,家庭を持つ
    ここで,自分の夢と結婚相手との暮らしが不整合になることが多い.

    中年期の発達課題は:両極性の解決
    1. 若さと老い
    2. 破壊と創造
    3. 男らしさと女らしさ
    4. 愛着と分離

    成人期発達の問題は:
    ・友情の不在(同性も異性も)
    ・良き相談相手を持つこと
    ・第2の本職に変わること

  • 翻訳本だからか?ちょっと読みにい。
    また研究対象を男性のみ、職業も「管理職」、「労働者」、「小説家」、「生物学者」とちょっと??と思うような選択となっていて、女性読者としては納得感に欠ける。
    ただ女性を研究対象とすると、男性以上に結婚、出産、子育てによるばらつき要因が多すぎて、発達課題などの傾向を見出すためには膨大な数の対象者を追跡しなければならないことを考えると、男性のみを調査対象にしたのも仕方がないのかとも思う。
    下巻を読んでみないと総合的な評価は出来ないか・・・。

  • 訳が悪いのか読むのにとても時間がかかった。
    人間の発達は成人でとまるのではなく、成人以降も永遠に発達変化しつづける。この当たり前の認識をできたことだけでも収穫。発達=青年特有ではなく、青年の発達に思春期という人類共通の型があるように、成人の発達にも共通パターンがある。
    発達のステージの境目で境目適応ができなくて危機に陥ることがある。いわゆる中年の危機。
    そうしたことを知識としてしっていたり、典型的な危機はどういうものか?とかを知っていればさけられるってもんではないが、羅針盤にはなると思われる。
    生活構造(個人と社会のかかわりあいの基盤、仕事とか地域社会への参加とか)は成人の発達段階におうじて変化していく。

    30歳の過渡期(131)
    安定した生活構造を気づく。青年期は選択の余地をのこして猶予していけるが、この年代で選択をしなければいけない。この過渡期では夢、相談相手、職業、結婚相手がキー(164)

    一家を構える時期(248)
    5つのパターン。
    安定した生活構造の中での昇進
    安定した生活構造の中での重大な失敗、衰退
    脱出(新しい生活構造を求める)
    生活構造に変化をもたらすような昇進
    不安定な生活構造

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