イザベラ・バードの日本紀行 (下) (講談社学術文庫 1872)

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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061598720

作品紹介・あらすじ

北海道へ到達したバードは、函館を起点に道内を巡行、当地の自然を楽しみ、アイヌの人々と親しく接してその文化をつぶさに観察した。帰京後、バードは一転、西へと向かい、京都、伊勢神宮、大津等を巡って、日本の伝統文化とも触れ合う。発展途上の北海道と歴史に彩られた関西-そこで目にした諸諸に、時に賛嘆、時には批判、縦横に綴った名紀行。

感想・レビュー・書評

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  • 下巻は北海道から始まる。アイヌの村々を訪ね、日本人に対する印象とは全く違う感想だ。容姿も日本人全般を醜いと辛辣(正直)だが、彼らの容貌はどちらかと言うと西洋的で、近い物を感じたらしい。毅然とした態度も好ましかった様だ。アイヌの人々に、伊藤鶴吉さんが、蔑んだ態度を取ることに怒っている。ある土地で宿屋の主人がアイヌの人々に、優しく親切な事を喜んでいる文があった。当時も、差別意識を持たない日本人がいたことにほっとした。
    当時、外国人が訪れた土地とイザベラバードが(あえて)探検した土地では暮らしぶりに同じ日本でも余りに差があったようだ。ただし、当時の子供は何処でも小さな大人と称する程彼女の目には不思議に映った様が印象的だった。

  • 蝦夷を旅し、東京に戻る。京都を旅し、伊勢神宮へ。京都へ戻り、大阪へ。神戸に寄って東京に戻る。
    そして帰国

    アイヌ民族を見つめる眼差しは、個人的な印象を含めて公平というかフラットな感じを受ける。観察者の目という気がする。思い出すのは「ゴールデンカムイ」、本筋は別のところにあるのだけれど、背景に描かれるアイヌの生活や彼らとの関わりが面白い。

    宗教面やこの後の日本の進路などの考察にうなずけるところが多々ある。今は少しは良くなっていると思えるところもあるし、変わってないねぇと思うところもある。
    ある国のやり方が全部素晴らしいって言うことはあり得ないと思っているので、良い所は取り入れて見たら?という感じで変わっていくのはどうかな。

  • イザベラ・バード女史はスコットランド人であり、プロテスタントの信者であり、かつ19世紀の婦人である。
    決して、現代の基準で判断してはいけない。
    つまり、当時の白人女性の視点からすると、かなり公平に判断しようとしている事がうかがえる。
    それでも、相当のフィルタが入っているわけですが……。

    下巻は主に蝦夷地の冒険と、その後訪れた京都や奈良、伊勢大神宮について述べられている。
    女史はかなりアイヌに関心を持っていたらしい。
    日本人の開拓地より長い時間をアイヌの村で過ごしているように見える。
    彼女がつぶさに、そして間近に見たアイヌの生活記録はとても貴重なものだと思う。

    また、京都や奈良は、東北に比べれば当然色々とインフラは整備されているし、今もそうであるように、風景の美しさは女史を魅了したようだ。
    また、ここも興味深いのだが、本願寺を訪ね、英語の話せる僧侶と長い時間興味深い時を過ごした。
    この時代に、伊勢大神宮を訪れたという事も、面白い。

  • 明治10年に、アイヌの集落で寝泊まりして、人となりを知ろうとした47歳、イギリス人女性の話。

  • 下巻の前半は蝦夷地だが、アイヌとの交流が中心となる。イザベラはアイヌの人々をいたく気に入っていることがわかる。そして、一旦横浜に戻り、京都や伊勢神宮、大津へ行く。日本語のできるギューリック夫人と2人で行く伊勢神宮。イザベラの楽しい気分が伝わってくる。しかし蝦夷地が一番楽しかったのではなかろうか。後半では日本にも慣れてきてどちらかと言うと、政治的、宗教的、国の発展に関する感想意見が増えてくる。蝦夷地に随行した伊藤がいなかったのも大きいか。そして紀行文のラストでイザベラが日本を離れる時の気持が少しわかる気がした。彼女が当時後ろ髪を引かれながら日本を発ったように、淋しさを感じながら本を閉じる。

  • 下巻は蝦夷地と京都、伊勢、大阪が主な内容となる。なかでも蝦夷編は素晴らしい。現在、北海道に在住のあたいだが、開拓初期の北海道の様子は興味深い。原始の自然が、ページをめくる度に私の目の前に現れる。でも現在でもその片鱗が窺われるのだ!

  • 1878年に日本を訪れ、各地を旅した旅行家の紀行。江戸から明治に時代が移って11年という時期であるということが、まず何よりも興味深い。

    さらに、外国人のために開かれていた都市部だけではなく、東北、北陸から北海道の各地を訪れ、その後も京都、奈良、大阪、伊勢といった地域を広く旅し、日本人と同じ交通手段を使い、日本人と同じ宿に滞在した。そのため、対外向けではない、その時代の日本の掛け値のない姿が綴られている。

    筆者は20代から世界各地を旅していたようで、しかも先進国だけではなく、東アジア、南アジア諸国やハワイなども訪れている。つまり、当時の世界を知った眼で日本を見ているだけに、世界の中における相対的な日本の位置が筆者の記述を通じて分かる。

    筆者の目で見た日本は、必ずしも衛生的ではないし、文化・風俗の面でも健全とはいえない。北日本を旅する間、宿屋でくり返し描かれている日本人のどんちゃん騒ぎや、宿の管理状態の悪さは、筆者を大いに困らせた様子が伝わってくる。

    また、道路の状態や馬などの扱いといった交通インフラの面でも、様々な点で筆者の落胆が伝わってくる。

    日本は江戸時代を通じて文化や衛生面で世界的にも高い水準にあったという印象を持っていたが、それが都市部に限られており、全国的にそうであったわけではないということ、筆者の目で見て、母国イギリスだけではなく他の国々と比較しても優れていたわけではないということは、率直に驚きだった。

    一方で、この時代に外国から来た女性が1人のガイドを連れるだけで安全に数か月にもわたって日本の奥地を旅することができたということは、当時の日本の全般的な社会の落ち着きを感じられる。

    江戸時代の250年以上を通じて比較的平安な社会を持続してきたことが、治安や社会階層の安定性を生み、このような安全な社会をつくっていたのではないかと感じた。

    そして筆者は、日本が都市部から徐々に近代化を進めており、このような安定的な社会と国民性をもってすれば、この国が比較的順調に発展の軌道に乗るであろうことを感じている。

    この点は、筆者のバランスの取れた観察眼と洞察力の高さに驚かざるを得ない。

    一方、興味深かったのは、日本社会の近代化が物質的な点に偏っていることを、筆者が強く懸念している点である。筆者自身は敬虔なキリスト教徒であり、その視点からみると、日本の仏教の宗教としての堕落や、神道を含む宗教に対する日本人の醒めた態度は、非常に憂慮すべきことであったようだ。

    筆者は、この国にキリスト教が根付くことで、このような懸念をある程度解消できることを期待していたようである。しかし、結果として日本は国家神道という政治的な意味づけを持った宗教以外は、その後も宗教に対してあまり関心をもつことなく発展していった。

    日本のそれまでの歴史において神道や仏教、儒教といった宗教が民衆のレベルにまでより深く浸透していたら、この発展過程がどのように異なっていたのか、考えさせられた。

    最後に、もう一つ印象的だったのは、アイヌの人たちの描写である。筆者は東北から北海道に渡り、さらに室蘭や苫小牧、長万部といった地域を訪れ、アイヌの村に滞在もしている。

    科学技術や生産性の面では未開の地域ではあるが、日本の地方で見られたような風紀の乱れはなく、礼儀正しく清潔な生活がそこにはあり、日本の長所といわれていたものを実はアイヌの方がより強く持っていたのではないかとすら感じた。

    全体を通じて思ったのは、江戸から明治に時代が変わって10年少々という時間は、日本の都市部と地方の間で、一つの国の姿が移り変わっていく絶妙のタイミングであったということである。

    旅の中でも、村のレベルでは江戸時代のような光景が見られる一方、地方都市であってもそこには中央政府が派遣した官吏や警察組織が生まれており、徐々に移り変わっていく日本の社会の一断面をみることができて興味深かった。さらに、開拓が本格化する前の北海道では、アイヌのような異なる文化を持った社会も同時に存在していた。

    このような多面的な日本の姿を、当時の状態のまま伝えてくれる紀行文が残されたことは、大変貴重なことであると思う。筆者が旅の行程とそれを書き残すためにかけた多大な労力に、感謝をしたいと思う。

  • 歴史

  • 上巻よりはマシ。アイヌの生活は興味深い。これと、巻末の日本の現況だけでいいんじゃないか。

  • 手放

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