邪魅の雫 (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 417
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  • Amazon.co.jp ・本 (824ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061824386

感想・レビュー・書評

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  • 「鵺」の発売の知らせに慌てて未読だったこの
    「邪魅」を手にした。

    また、久しぶりにこのメンバーのストーリーを読める幸せを噛み締めながら。

    連続殺人ではなく、連鎖殺人だったという内容、
    このシリーズにしては分かり易い気がした。
    とは言うものの、前の本はもう記憶の彼方…

  • シリーズの中で一番切ない…。

  •  刊行されたばかりの時に読んだのだが、再読すると驚くほど内容を覚えていなかった。

     真壁恵は望まぬ祝言から逃れてきた幼なじみを自身の名を騙らせて住まわせることで匿うが、元夫から被せられた借金の取りたてが来るにおよび偽・真壁恵の身を案じて、ひょんなことで知り合った大鷹に護衛を頼む。
     さて、本作は関口巽の他に、どこか精神的に欠けたところのある3人の胡乱な男が登場する。大鷹は『陰摩羅鬼の瑕』に登場した、ひどく気の利かない若い刑事だが、まるで本作での登場を準備するためだけに動員させられたかのように『陰摩羅鬼』ではあまり必然性のない登場人物だった。『陰摩羅鬼』の事件のため刑事をやめて、逗子あたりでボッとしていたところを恵に拾われたのだ。
     彼は決して知能は低くないのだが、ともかく思考がまとまらない。恵に頼まれた護衛は不審な観察者になってしまう。そのうえ偽・恵から目を離した日に偽・恵は殺されてしまう。
     「私」は画家だが、ちょっと異常なほど世間知らずだ。モデルを頼んだ女性につきまとう怪しい男がいることを知るが、警察では取り締まることもできないとわかり、殺意を覚える。しかし、そのモデルはある日、来なくなり、殺されたのではないかという情報が入る。
     江藤は酒屋の住み込み店員である。酒屋の店主が懇意にしている「真壁恵」におすそ分けを届けに行った際に、「真壁恵」が死んでいるのを発見する。彼は自分の関わりのないと思うことには急速に興味を失ってしまう。
     ひとつの殺人事件、かよくわからないのではあるが、別の視点から語られているのだ。

     しかもこれは連続殺人事件の1件と警察は見ている。それは青酸加里による毒殺だからだ。まず商社社員が殺され、次に良家の令嬢が殺されている。
     ここでさらに別の視点が登場する。『塗仏の宴』での服務不遵守で一時的に交番に左遷されている青木は社員の事件に不審を抱き、そのあとを追っている。他方、探偵見習い・益田のもとには榎木津の親戚筋から、榎木津に身を固めさせようと見合いを持ち込もうとすると相手方から断られてしまい、そのうちの1件では相手の妹が殺害されており、何が起こっているか調べろと言われるのだ。視点がありすぎて全体像が見えないというのが今回のキモなのである。

     邪魅という妖怪についての言及はちょっとあるが、邪魅の雫とは、戦中、京極堂が所属していた陸軍の研究所で作られた、1滴垂らすだけで人を殺せるVXガスみたいな猛毒のことである。
     本作は主に青木刑事と探偵見習い益田による刑事物語といった体をとる。となると憑き物落とし京極堂の出番がなさそうで、実際、京極堂の登場はいささか唐突な感じがする。他方、場をめちゃめちゃにする役割の榎木津も今回は関係者とあって、大暴れなしで、まあ、本書の印象が薄かったか。

  • わりと落ち着いていて淡々と物語が進んでいく感じ。

    人の心にはきっと誰にでも「邪」なるものが宿っていると思う。
    ただ、他の動物にはない人間特有の「理性」というものの影にかくれ
    ほとんどの人はそれを持ったままこの世を去っていく。
    しかし、ちょっとした何かのきっかけで、理性の隙間から顔を出す。
    たとえば、たった一滴の液体で・・・

    現代の様々な事件のニュースを見るたびに思う。
    「邪」を抑えきれない人々が多すぎるなと・・・

    今回は榎さんの切ない物語・・・のはずが、出番はとっても少ないなぁ。



    さて、この「百鬼夜行シリーズ」出版されているのは、ここまで。
    もう、5,6年も続編が出ていないそう。
    今年のGWから、一気に読んでしまったので続きが読めないと思うと
    寂しい・・・
    早く、次回作がでないかなぁ・・・

  •  山下さんかっこよくなったなあ、とか、関口先生今回よくしゃべったなあ、とか、色々あるんですが、とにかく百器徒然袋(雨)で赤ちゃんを可愛がる榎さんの可愛さに「YOUもう結婚して子作りしちゃいなYO」と思った結果がコレだよ!
     いつにも増してシンプルかつ真相がわかるまではややこしい事件。事態が進展するまでは正直ダレましたが、新たな犠牲者が出てからはスピーディーでした。陰摩羅鬼で真相がわかりやすかったのは、京極堂作品は基本シンプルな事件がいくつも起きて繋がったり重なったり撹乱し合ったりで謎めくのに対し、陰摩羅鬼は事件(出来事)自体は一つだったからじゃないかなあと今更思ったり。
     作中でも指摘された通り、構造自体は蜘蛛と似ているけれど、真相が明らかになったとき発覚するのは犯人の小ささ。まさに邪な雫。ちっぽけなものが人を狂わせてこの惨事。まさか百器徒然袋(雨)の最初の事件がコレの伏線というか前置きだったとは……とりあえず従兄弟殿に合掌。そんなつもりはなかったろうに切っ掛けになっちゃったんだもんなあ。
     生き残った彼女のこれからがどうなるのか、榎さんに伴侶はできるのか、関口先生は作家として成長するのか、タイミング的に次は再び木場さんメインかなあとか思いつつ、いつになるかわからないけど次巻を楽しみに待ってます。

  • ダメだよね、再読するにしてもやはりこれより前に順番通り読まないと

  • 昭和27年の殺人事件。戦中の研究がきっかけ。
    最初から榎木津は知っていたのだ。彼にイヤな思いをさせたくないから、京極堂が大磯まで出てきたのだ。
    殺人した人は罰せられるが、後ろで背中を押した神崎宏美は罰せられない。わかってみれば、そんな理由で事件が起きたのかぁ。それは榎木津に嫌われてしまうなぁ。
    17年ぶりとなる「鵺の碑」発売されたので、再読。

  • 【2023年105冊目】
    再読です。約11年ぶり。ほとんど覚えていなかったのですが、「鞭」とかはなんか覚えていました、なぜなのか。

    世間を一つくくりにしてしまうと、大変な大風呂敷となるわけですが、その中には無数の世間があって、かつ被っていること、被っていないことがある。本作はその無数の世間で起こる物語であることから、物語が進みながらも、要所で各キャラクター視点の「世間」が描写される構成となっています。

    最初は、誰が誰やらもうさっぱりわからなくてですね、物語のキャラクターたちも混乱しているわけですが、こっちも大いに混乱するわけです。次々と世間が広がっていくので、感情を移入するのもなかなかに難しい。主語は誰か、誰が誰をどう見ているのか、誰にどう見られているのか、主観と客観が入り乱れて、そこに「嘘」という雫が垂らされ、もうね、わやです。

    なのに、最後にはちゃんと黒衣の男が憑き物落としを行い、「世間」に一本の筋が通ります。まさか、最後の最後でものすごく切ない気分になるとは思いませんでした。なんとも、なんとも……。

    最初は無数の世間に翻弄されるので、なかなかついていくのが大変なんですが、気づけば終焉を迎えていました。

  • 再読。読むのに握力試される厚みなのも再確認

    帝銀事件、731部隊など昭和の陰惨とした部分がでてきたり、いつもと調子が違う榎木津におや?となったり、長くて重くていつも以上に登場人物の整理がつかなくて混乱しても読むのを止められない

    毎回関口先生に感情移入してしまうが、今回も同様だった。重いんだよね、わかるよ

  • 京極堂シリーズは面白いのだけど,ちょっと複雑になりすぎている気がするなあ。読解力がないからかしら。

著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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