- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061828728
作品紹介・あらすじ
天才建築家驫木煬(とどろき・よう)が、山奥に建てた巨大な私邸<眼球堂(がんきゅうどう)>。
そこに招待された、各界の才能と謳われる著名人たちと、放浪の数学者十和田只人(とわだ・ただひと)。彼を追い、眼球堂へと赴いたルポライター陸奥藍子(むつ・あいこ)が見たものは、奇妙な建物、不穏な夕食会、狂気に取りつかれた驫木、そして実現不可能な変死体。誰が殺した? でも、どうやって? ――一連の事件の真実(ほんとう)の「真実」を、十和田と藍子は「証明」することができるのか?
密室! 館! 不可能犯罪! 本格ミステリのガジェット満載にして、清新かつ斬新なトリック! 刮目せよ。これがメフィスト賞だ!
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
ほんタメのタクミさんの紹介。
理系ミステリ好きなので、好みに合っていました。人物も面白いし、会話の内容や、数学の話なども面白く読むことができました。謎解きも面白く、一部の謎は自力で考えることもでき、その面でも楽しむことができました! -
館もののトリックって難しい。全く今回も分からなかったですが、結末があのような…。
-
わりと辛い評価を見掛けるけど結構面白かった。
主人公とそのアシスタントに関してはキャラクターが出来上がってるし。だたその他がその分薄かったけど。
後日談からのやる気が凄かった。
絵日記みたいな文章になってるな。
これと同じ様な人体を模したあれはつい最近何かで読んだ気がするんだよなぁ…勿論作品は違うんだけど何だっけ… -
メフィスト賞、館モノ、天才、数学者、帯のコメントは森博嗣、と。
これだけ揃えたら期待度が高くなりすぎるよなあ。
とりあえず「天才」を描くのには失敗していると思う。
せめて館モノ、天才、数学者で無ければ、メフィスト賞としては普通に読めるレベルだった気もするけど、メフィスト賞は取れてないだろうから、残念。 -
★真実――私は、絶対に、負けない。(p.244)
【感想】
・犯人は三分の一くらい読んだところでわかりました。あとは楽しく読みつつその確信を強めるだけ。トリックは、主要なひとつは平面図を見た段階で事件が起こる前にすでにわかりましたがあとは最後までわかりませんでした。
・感想としては、面白かったです。闘いの結末がどうなるのかというわくわくがありました。題名からして猟奇的でおどろおどろしいのかと思ってましたがまっとうなミステリでした。ぼくにとってのミステリのタブーのいくつかにかすってましたが瑕疵にはなっていませんでした。
・人は初見だとなんでもとりあえず類似品を探すものですが、『ガリレオ』かな、それとも森博嗣さんの「S&Mシリーズ」かなとまずは思いました。・・・全部読んだあとだと森博嗣さんの方が近いと思えます。
【内容】
・世界を代表する建築家、驫木煬の新居「眼球堂」に集められた各界の才能たちの前で殺人が起こった(ように見える)。異常な建物に閉じ込められ閉塞感がつのる中・・・。
【一行目】「君、バスで本なんか読んで、よく平気だな」
▼簡単なメモ(読みながら書いているのでその時点でわかったことしか書いてなくネタバレになりそうになったらそこで書くのを中止しているのでたぶんネタバレはないとは思いますが?)
【アーキテクチュアリズム】驫木が提唱している建築についての考え方。少なくとも端からは建築こそがすべてのものの上に立ちすべてを内包しているという建築至上主義に見える。
【藍子/あいこ】陸奥藍子。陸奥A子ならぬ陸奥I子かあ…。フリーの売れないルポライター。最近ギリシャ神話などに興味をひかれている。ワトソン役で視点役になるかな。一見考えなしの小市民っぽいがそれっぽすぎて実は侮れない人物というような気もする。さらに彼女が犯人という可能性だってなきにしもあらずで。驫木初対面のときの「記憶にない『人間』だ。君は誰か」(p.73)という台詞もなんか奇妙だし。「真実――」に続く部分がそれまでの藍子とは別人のようで二重人格のようにも見えるし、数学者の十和田をストーキングしているジャーナリストにしては数学の知識を得てなさすぎるのも怪しい二十五歳。ぼく的には彼女が犯人やとイヤやなとは思います。ぼくのミステリのタブーのひとつに相棒は犯人にしないというのがあるので。
【善知鳥神/うとう・かみ】十和田も感服する天才数学者。驫木煬の子。ほとんど誰も会ったことがない。母に似ているとは言われている。姿を見せないがもしかしたらこの話のキーパーソンなのかもしれない? あるいは今後森博嗣さんの真賀田四季博士的な存在となるのかもしれない? あるいは登場している誰かの可能性も? というかその可能性のほうが強いでしょうけど。
【善知鳥礼亜/うとう・れいあ】驫木煬の妻、善知鳥神の母。ミス日本に選ばれた美貌の持ち主。故人。
【エチケット袋】吐きそうになったとき使う紙袋。バスに備えつけられていたが十和田は初めて見たらしい。
【眼球堂/がんきゅうどう】驫木煬の新居。山奥に建てられた巨大な眼のような建築物。直径百メートル深さ二十メートルの大理石の穴の中に建つ。黒い居住空間は全体に比してそう大きくはない。眼球というからにはさらに巨大な地下があったりして? それでは秘密基地か。いずれにせよわりとハイテクが導入されているようだけど、個人的にミステリのタブーとして建物は機械仕掛けにはしてはいけないというのがあるのでそうでないことを願う。なんでもありになるので。でも、平面図を見る限りたぶんなあ…。鍵のついたドアがひとつもない。ドアの多くは二重になっている。たぶんあのためやな。
【黒石克彦/くろいし・かつひこ】辣腕の政治家。三十六歳。人の命などなんとも思ってないだろうが犯人ではなさそう。自分の手は汚さないだろうし今回は必要がなさすぎる感じ。
【公理】《長く、複雑ではない、事実の真の姿を基礎づけるための最小限の公理をね。》p.173。森博嗣さんの犀川先生はこういうタイプですね。それしかないからそうなんだ、と。
【ザ・ブック】十和田が読みたいと考えている唯一の本。この世に存在する無数の定理のすべてが書かれている。記載されている証明もページ数も無限。著者は神だが神が証明したわけではなく、証明そのものは最初からあり神はそれを書き写しただけ。えー、そんな本あったら数学者としたら楽しないんとちゃう? まあ、定理は無限にありすべての定理は証明されるのだと十和田は考えているということなのでしょう。
【造道静香/つくりみち・しずか】眼球堂の招待客。編集者。二十九歳。小柄な女性。K社で「月刊建築空間」という雑誌を編集している。肩書きの証明はできないしそれなりに謎の存在なので犯人の可能性は捨てられないだろう。被害者になる可能性もある。
【驫木煬/とどろき・よう】世界を代表する建築学者。偏狭なことでも有名。すべての領域の上位に建築があるという思想。鷹を思わせる相貌。新居に招待するというエアメールを誰も知らないはずの十和田のいる場所に送ってきた。先祖は関孝和の係累だとか。犯人の可能性はありすぎるので違いそう。殺人など屁とも思ってないだろうがブライドが高すぎるので殺さないと自分の美意識を証明できないというような考え方をするタイプではなさそう。ただ、被害者候補ナンバーワンではある。だいたいの読者が最初に殺されるのはこいつや! と思うでしょう。
【十和田只人/とわだ・ただひと】主人公。探偵役。放浪の数学者。行く先々で誰かの厄介になりつつ共同研究をしている。なぜそんな生き方をしているのか動機は不明。三十八歳。一人でないと眠れない。モノを持ちたくない。お金も。なのですぐ寄付してしまう。まあ、さすがに犯人ではなく被害者にもならないと思われる。
【南部耕一郎/なんぶ・こういちろう】眼球堂の招待客。ノーベル賞を受賞した物理学者。五十五歳。自分で言っている限りでは驫木とは不倶戴天の敵だとか。事件が発生したとき推理とも言えないような推理をあえてしてみせて皆の気分をラクにしてくれたところなんかはなかなかええ人でかつ大物って感じやなあ。雰囲気的には犯人ではなさそう。どっちかいうと被害者タイプやね。
【二重扉】眼球堂のドアの多くは二重になっており一枚目を抜けると漆黒の闇だ。ドアではなく闇が区切っているということかな。
【柱】大理石部分に立てられている柱の意味がよくわからない。同じかたちどうしを結んでみたりしたけど特に意味はなさそう。途中でわざわざ龍安寺石庭の話を出してきたので盲点になって見えてない柱がもう一本あるのだけはほぼ確実とは思うが。
【平川正之/ひらかわ・まさゆき】眼球堂の使用人。もと料理人。いろいろあって驫木に拾われた二十九歳。個人的にミステリのタブーとして使用人を犯人にしてはいけないというのがあるのでこの人物が犯人でないことを願う。被害者になる可能性はある。
【深浦征二/ふかうら・せいじ】眼球堂の招待客。T医大で精神医学を教えている。脳神経医学が専門。フロイト直系のひ孫弟子。犯人かどうか判断しにくいが普通にバランス感覚がすぐれているのでどっちかいうと被害者の方になりそう。
【部屋割り】一号が黒石、二号が造道、三号は藍子、四号は十和田、五号が驫木、六号が南部、七号が三沢、八号が深浦。平面図を見ただけだが一号と八号は危険そうな感じ。
【三沢雪/みさわ・ゆき】眼球堂の招待客。絵描き。三十二歳。超絶美女。ピカソのように常に変貌していきすでにピカソを超えているとか。《闇の向こうには、ありとあらゆるものが見える。》p.177。この人は完全に被害者タイプやなあ。
【陸奥藍子/むつ・あいこ】→藍子 -
再読です。シリーズ途中で止まっていたのを読み進めるにあたって大分時間が経ってしまったのであらためて1冊目から読み返そうと思いました。初読は2013年。当時こういうものを書かれる作家さんがメフィスト賞を取られたことが嬉しいと思ったのをはっきりと覚えています。
クローズドサークル、いかにも何か起こりそうな見取り図と、本格好きがワクワクする1冊。トリックはなんとなく覚えていましたが、ラストの展開はすっかり忘れていて再読でも楽しめました。1冊目は探偵が意外と普通だったのにちょっとびっくり。
続きを読むにあたってチェックしていて気付いたのですが、このシリーズは文庫化に際してかなり加筆修正されているようですね。続きは文庫で再読しようと思います。変わった部分も楽しみです。 -
そうそう、メフィスト賞ってこんな感じ!
と思わせてくれる、自分にとっては、逆になんとなく懐かしいミステリー