反逆(下) (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061850545

作品紹介・あらすじ

なんたる上さまの冷酷――命乞いをする幼な子の首を刎ねた信長、秀吉と光秀、2人の心理的競い合いを楽しむ信長。信長を討つことは天の道!光秀は長い間心に沈澱していた反逆の囁きから解き放たれた……。戦いの果てにみた人間の弱さ、悲哀、寂しさを、そして生き残った村重、右近らの落魄の人生を描く。

感想・レビュー・書評

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  •  信長に叛逆した荒木村重と明智光秀を通して、戦国時代を描いている。遠藤周作は、きの叛逆と「決戦の時」と「男の一生」が戦国三部作と言われている。
     宗教家がが描く戦国時代は、残虐な信長に対して少なからずの武将は反発しているのだろうが、村重や光秀が期待した人たちは追随してくれなかった。正義を通すことより安全で得することに人はなびくのだ。
     我々は歴史上行われてきた残虐行為について、まるで英雄行為のように肯定しているが、本当の真実は反逆者の側にあったかもしれない。

  • 家臣の遠い過去の瑕疵を今更のように責め立てての追放。宗教を一切認めず、叡山や長島での無惨なまでの皆殺し。非道なまでの信長の行為。
    残すべき文化、宗教、既得権益もあるのではないか。
    完全者である、主、信長が家来や民衆に裏切られ、後悔し思い悩む姿が見たい。

    光秀の本能寺の変の動機は単純なものであった。そしてそれは全ての家臣や民衆の気持ちを代弁したはずだった。しかし、いかに下克上の戦国時代と言えども、主を弑することは、天下の大罪であって理解は得られず、同調者はわずかであった。それが唯一、明晰な常識人である光秀の誤算であった。

    光秀の苦悶と懊悩がよくわかる。ただ、それを逆に主の敵討ちに利用した秀吉の方が、1枚上手だったということか。

  • 後半はその後の荒木村重を詳しく書くのかと思ったら、明智光秀とか、羽柴秀吉とか、柴田勝家とか総花的な内容になってしまった。

    キリシタン大名の高山右近をもう少し深く掘り下げたかっただろうが、それも叶わず。

    戦国時代は小説としてあまりにも沢山面白い題材がありすぎ、作家泣かせのところもあるから仕方のないことかも知れない。

    題名の通り、当時当たり前だった反逆がメインテーマだったが、やはり信長のカリスマ性はすごい。

    信長を抜きには、この時代を語れない。

    いくら、別のテーマを設けようとしても、信長を避けて通れない。

    あまりにも強烈な個性なので、作家は彼の引力から逃れられない。

    遠藤周作も然りだった。

  • 下巻は主に明智光秀のお話です。

    明智光秀・・・かなり信長の事好きです。
    尊敬というよりも
    圧倒的な強さの前の・・・恐怖よりの憧憬という感じです。
    それゆえ・・恐怖に歪む顔も・・みたい・・・みたいな事言ってます。

    「少女のように顔を赤らめ・・・」
    みたいな描写とか・・・なんともあやしい・・・表現が多く・・・面白かったです(笑)

    ただ本能寺にいたる・・・光秀の変化が・・・本当になぞで・・
    このままじゃ「恐怖に歪む顔がみたい」だけだったの!?と思ってしまいます(それは、それでアリですが。)
    本能寺にいたる経緯を史実無視でもいいので何かほしかったです・・。

    ただそうなると・・何か違うな・・って感じていたのかもしれませんが・・(笑)

    とりあえず、面白かったです〜

  • 上巻が荒木村重の視点が多かったのに対し。下巻では明智光秀がメイン。

    日本人特有の感情や、礼儀、筋の通し方など巧く表現できないけれど、日本人を見直すことができる作品。

    また、戦争や争いについても現代のそれと比べて色々な考えを巡らせることができました。

    藤蔵や、だしの最期には思わず泣いてしまいました。

  • 上巻は荒木村重をメインに題名の通り反逆へと傾いてゆく村重の心の変化を細かく描写されている。下巻のメインになるであろう明智光秀がどの様に信長へ反逆を決意すのかどう表現するのか期待をしたが意外にあっさりしていた。秀吉も信長に対して心から心腹している訳ではなくいつか信長と決戦を考えているが最後まで具体化する事がなかった。本能寺の変で終わると思っていたが予想外に賤ヶ岳の戦いで話しが終わる。勝家も秀吉も利家も本編ではあまり出ていなかったので急な登場で全体的に内容が薄くなってしまった印象。読み手としての自分の実力が足りないのかもしれないが・・作品としてはとても読み易い作品でした。

  • 荒木村重を描いた上巻は面白かった。明智光秀を描いた下巻はアッサリ。村重の妻「だし」が魅力的に描かれ、主役を食っている。

  • ★3.5。
    荒木村重の話をもう少し詳細にやってくれるかと思ったら違いました、、、
    この作品って要するに信長という日本史上の特別な異人から放たれる普通の人々の悲哀の物語集ということなのか。現在と同じですよね、トップと同じ思考で生きることなどできる訳ないんですよね、それが人間社会ってもんです。皆、何かを諦めつつ、でも前を向くというか。
    ところで来年の大河、楽しみにしてます。観ようと思ってるのですが、まさに本作とオーバーラップしそうな感じ。その意味でも、望外ですが予習になったかもです。

  • 筆者は、荒木村重の妻だしに愛着があると書かれていたが、この女性に強い感銘を受ける人は多いだろう。死を目前にしても取り乱さないその信念、ちょっとやそっとじゃ真似できない。美しい衣裳をまとい凛と処刑に向かう女たち、肝が据わってて涙が出てくる。
    辞世の歌に生きた証を感じる。肉体も魂もなくなったけど、その思いだけは形としてこの世に残ってる。
    死にゆく人々の姿が印象に残った。死に際に人生が出るんだと思う。

  • 光秀の信長への複雑な思いを、自分が疎かにされてきた恨みだけでなく、世を正す義憤のみでなく、また美学でもなく、“恋する男の歓心を獲た女心に似て”いるものとして描いたのは、他作品と違っていて面白い。
    小説としては秀吉の天下統一の喜悦にあふれた場面で終わるが、主題としてはやはり人間の弱さを描くことであったと思う。歴史小説というよりは「遠藤周作の小説」だなあという印象。

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著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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