- Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061853904
作品紹介・あらすじ
双子の兄弟が殺人犯?しかし兄の妻が余呉湖畔で殺されたとき、兄は博多、弟は酒田にいてアリバイは完璧だった。やがて第二の殺人。兄弟のどちらかが被害者らしいが、死体からは頭と手首が失われていた。犯人の狙いはどこに?犯人の大トリック、多彩な伏線が、結末で読者を仰天させる、大型新鋭の傑作。
感想・レビュー・書評
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双子の兄弟のうち、兄と結婚した女性の遺体が湖畔の別荘で発見された。その時兄弟には2人とも県外出張のアリバイがあったが、次にはなんと、同じ別荘でこの兄弟のどちらかと思われる死体が。死体は頭部と両手首を切り落とされており双子のどちらとも判別しない。謎が謎を呼ぶ展開に…
森博嗣が「ミステリを書くルーツとなったミステリ作品100」として挙げていたので手をつけた(海外ミステリや夢野久作作品などに混ざって日本人作家の作品があったのでおお、という感じ)。確かに、このトリックは森博嗣に通じるもの有り。
知識が無くても普通に読めるけれど、途中に海外ミステリ含む作中アリバイトリック分類、などが含まれるためそういうことにも詳しい人はなるほどなるほどとなりそう。
普通に考える、最初の段階の「ミステリでこの展開って、こういうことじゃね?」の基本(乗り物トリック、人物入れ替わりトリック)が登場→どちらも意表を突いたオチがちゃんと用意してあるのが流石。
登場人物の台詞は時々妙に芝居がかった饒舌さを見せるものの、各人物の言動など1つ1つの描写が、淡々と、且つ余計なモノが無くリアル。
星3.8くらい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
有栖川有栖の『マジックミラー』を読了。初期のノンシリーズ作品。
この作品には、オレが苦手と同時に嫌いでもある時刻表トリックが使われている。これまでミステリはだいぶ読んできたのだが、実は時刻表トリックは本作が初めて。今までは意図的に避けてきた。
単刀直入に言ってしまえば、時刻表を見て推理するのがとてつもなく苦手。本文とは別に時刻表の参照図がいくつか載せられているのだが、見慣れていないせいなのかオレは時刻表というものが嫌いだ。どうしても途中から思考停止してしまう。結果的に、トリックが時刻表の穴を巧みに突いていたものだとしても、作家には申しわけないが完全には理解できていないのが本音である。ああ、実に情けない……。
ならば何故そもそも読もうとしたのか?それは、まず一つに有栖川有栖の作品であるということ。個人的にはこれだけで十分に立派な理由なのだが、それとは別に、この作品ならではの理由もあった。
海外のミステリ黄金期に活躍した作家の一人、ディクスン・カーの有名な作品に『三つの棺』というものがある。その作中に「フェル博士の密室講義」というものが出てくる。登場人物が、あらゆる不可能犯罪ミステリの密室トリックを分類してみせるという内容で、未だに様々な作品でちらほら名前が引用されることがあるほど有名。
この密室講義に倣ったアリバイトリックの分類を、『マジックミラー』では「アリバイ講義」として試みている。文庫版あとがきには該当作品も紹介されていて、これから読む作品の指針にもなった。アリバイトリックも実に多種多様だ。
推理はまともにできなかったが、ストーリーはだいぶ楽しめた。ラストも上手く終わらせているし、ダイアローグから既に騙されていたと気付かされる。しかし見事に騙された時のやられた感もまた、ミステリの醍醐味の一つであるからやめられない。 -
久々にガチガチミステリーでした。
楽しかったぁー。まさかの。まさかの。ではあったけども。そうきたか。なるほどねぇ。あなただったのね。という。
鉄道とか飛行機乗り継いでアリバイ作り。
解説でも言ってたけど、日本以外で鉄道にしても飛行機にしても時間ぴったりに動かしてる交通網なんて早々ないから、日本だけなんだってさ。アリバイ作りに鉄道使うの。
JRすごいね。
ガッツリミステリ、最近読んでなかったのでめっちゃワクワクしました!!!!!たまにはいいよね。ドミステリも。 -
年末整理の中、手を止め再読。有栖川さんの中では個人的にこれが一番。綾辻さん「十角館」、我孫子さん「殺戮にいたる病」に並んで本の楽しさを教えくれた一冊。描写が丁寧で、推理小説なのに暖かさが感じられる。またいつか読んでみよう。
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いやはや、つっかれましたぁ!思えば最初からブレテないんですけどね(当然)。作者さんがとあるところで自信作と豪語!されていただけのことはありました、ほんとにw
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前に読んでいた。
犯人は、まさか?やはり!という感じで読んでいく。
そういうトリックだったのかと感心する。しかし、犯人の思いが凄いと思う。 -
私の有栖川作品初体験はデビュー作の江神・有栖川コンビの『月光ゲーム』ではなく、火村・有栖川コンビの第1作の『46番目の密室』でもなく、このノンシリーズの作品だ。
文庫派である私は単行本、ノベルスで刊行された作品が文庫落ちしてから読むのを習慣としている。この文庫落ちのスパンというのは3~4年が通例なのだが、東京創元社は概ねこの文庫化になるスパンが長く、しかもまちまち。『月光ゲーム』は単行本刊行後5年後で比較的早くはあった。
余呉湖畔の別荘である女性が殺される。それは作家空知がずっと慕っていた女性だった。容疑者と思われた夫は事件当時福岡におり、またその双子の弟は新潟にいてそれぞれのアリバイは完璧だった。空知は亡くなった女性のため、その妹と一緒に独自に事件を調べる。
やがて双子の片割れが頭と手首を切断された死体として発見される。
時刻表トリックに双子の登場、そしてその片割れが頭と手首を切断された死体になるという、まさに本格ミステリ王道を行く設定だ。
新本格組では法月綸太郎氏がクイーンの後継者としてデビューしたが、有栖川氏も熱心なクイーン信奉者であり、さらに自身国名シリーズまで出しているくらいだ。
法月氏は早々に後期クイーン問題に直面し、悩める探偵となり、寡作家になってしまったが有栖川氏はデビュー以来着実に作品を刊行し、いまや現代本格ミステリの第一人者になっている。
そんな彼の最初期の作品である本書にはなんと登場人物を介してのアリバイ講義が盛り込まれており、自らの知見の広さを披露するという度胸振りだ。基本的に私はアリバイトリック物のミステリはほとんど読んだことが無かったため、挙げられている作者は私の守備範囲ではないが、それでも興味が湧いた。
そんなガチガチの本格ミステリを展開しながらも、お話としてもほんのりとしたペーソスが施されており、単なるパズル小説・トリック小説に終っていない。一番最初に「おっ」と思ったのはコーヒーか紅茶だったか、喫茶店で角砂糖を入れるところの何気ない描写。ここに他の新本格作家にはない情緒を感じた。
そして最後の緊張感溢れるサプライズは映像的でドラマ化されても十分映えるシーンだ。いやむしろミステリドラマを意識したかのような演出だ。単純に関係者を集めて長々と推理を披露した上で犯人を名指しするというオーソドックスな本格ミステリが多い中、こういう演出は新鮮だった。そしてさらに仕掛けた作者の企み。これをフェアと取るかアンフェアと取るかはその人のミステリ嗜好によるだろうが、私は有りだと思った。
新装版も刊行されたがそれもまた納得。時刻表ミステリは廃線や廃車となった車種もあるのですぐに時代の流れに風化されやすいが、現代本格ミステリの第一人者の初々しい頃に触れる意味でも、本書を手に取ってみてはいかがだろうか。 -
携帯もネットも無い時代のミステリ。
時刻表トリックは苦手ですが、本書の根幹はそこではない。すごいというより呆気にとられる結末であった。