イビサ (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061859333

作品紹介・あらすじ

贅沢な旅を約束されてパリにやってきたマチコは、男のもとをとび出して背徳的で淫靡な生活に幻惑されてゆく。コートダジュール、タンジールへと旅するうちに魂の殻を脱ぎさったマチコは、“イビサへ”と囁く老婆にしたがい、新たな旅へと向かうのだった。村上龍が渾身をこめて描く究極の破滅的ストーリー。

感想・レビュー・書評

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  • 村上龍の作品は性的に非常にエグくて、富裕層の教養ある描写が多い気がする。
    刺激が強いし、濃厚なので、心の毛穴がパカパカ開くような気持ちになる。

    キウイ畑にある精神病院っていう設定がきれいだったな。
    クライマックスの衝撃が大き過ぎて、呆気にとられる。


    最初の方に出てくる、主人公とやくざの会話が素敵だった。
    (以下、引用)

    男は蛇皮の黒と茶のコンビの靴をはいていて、わたしを抱きしめた。
    「何が見える?」
    あなたと、街と、髪の毛、
    「ジョン・ブックを知ってるか?」
    本ですか?
    「違う、人の名前だ、映画だ」
    知りません、
    「知っていなくてはだめだ、もう三年ばかり前の映画だが、ジョン・ブックという刑事を主人公にしたやつだよ、ハリソン・フォードという役者が主役のジョン・ブックを演じたんだ、観てないのか?」
    観てません、
    「観た方がいい、ジョン・ブックがある女性と恋に落ちる、わかるか?」
    はい、わかります、
    「でもその女性は夫を失くしたばかりで、しかも厳格な宗教に生きる人で、手も握れないのだ、わかるか?」
    はい、
    「二人がダンスをするところがある、サム・クックに合わせて踊るんだ、顔が近づいてキスをしそうになるんだが、しない、我慢するんだ、わかるか?」
    はい、
    「君はわかると思うよ、美しいシーンだった、五年ぶりに観た映画だったが、あんなにきれいなダンスは初めてだった、オレ達も、そういう風にして踊ろう」

  • 自分とは何者か。

    それに対する答えが、我々の「内部」にあると思うことは、二重の意味であやまっている。
    あとがきで村上龍が書いているように、「内部」と思うところにはなにもないのだ。
    それどころか、「内部」とそれに対する「外部」なるものなどそもそも存在しないのである。

    あるのはひたすらに「表面」であり、そのうえに絡み付いている「関係性」のみにすぎない。

    しかし、この「関係性」というものがまた厄介なのだ。

    階級は見えにくくなり、ときに消滅し、しかし支配され続けている。
    支配/被支配を隠すために、われわれは再び疑似の階級を生み出す。

    他者に意志を伝えるとき、意志もまた情報の一つに過ぎなくなり、言語に頼ればこのときメディア=言語は、もはや媒介というよりはるかに障害となってしまう。

    これら「関係性」をめぐる問いに、『イビザ』がすべてこたえているわけではない。
    第一、そのように答えを出せるとも思えない。
    なぜならこれらの問いは、答えを出せばただちにそこで再び問いが生じる類のものだからである。

    ただし、この作中では「モロッコの熱風」が最も明確な形でこれらのことに触れている。
    そして、おそらく、ひとつの(あくまでも、ひとつの)答えを出しているように思われる。
    そして、それは『五分後の世界』にも通じるものである。

    進化を促すのは、知能でも創造性でもない。それは、逃げ続ける力、境界を平気で侵す力なのだ!

  • 物語として、各人物の生き様を楽しむわけではなく、何か深い教訓があるわけでもない。

    ある一つの体験、それも幻覚剤のトリップのような体験を味わうことができる。
    それも、映像ではなく、活字で味わう事にこの作品の面白さがある。

    表現されている様々なメタファーから、
    登場人物や著者の意図を汲み取ることは正直不可能であるし、そんな楽しみ方をする作品ではない。

    この活字から体験したことを、ただありのままに受け止めて、そこから何を感じるかが楽しい。
    そんな作品。

  • 要約: 俺はこんな国を旅してクスリとセックスと美食をやってきたぜ。

  • 本質みたいなものを食った小説だと感じた。ここからなにか大事なことが見に出せそう。

  • やっぱ
    村上龍は天才やと思う
    読むのはいささか大変だったが。
    宝物な一冊。

  • 精神病院を退院して三日後に出会った男に、贅沢な旅を約束され、パリにやって来たマチコ。やがて男のもとを飛び出した彼女は、背徳的で淫靡な生活に幻惑され、コートダジュール、タンジールへと「自分と向かい合う」ための旅を続ける。姦淫、交霊、殺人、愛…旅の過程で様々な経験をしていくマチコは、「イビサへ」と囁く老婆に従い、また新たな旅へと向かうのだった。人間の存在意義を描ききった、衝撃の破滅的ストーリー。

  • この夏にイビサ島を訪れたのでタイトルに惹かれて読み始めたが、中身は村上龍らしくしっかりエロとグロテスクの世界が広がってました笑 とはいえ、突拍子も無い展開もありながらも、パリ、コート・ダジュール、マラケシュ、バルセロナ、イビサと各地に渡り物語を突き動かしていくエネルギーは流石。村上龍自身が彼の地で感じた熱量が込められているのかもしれない。

  • まともがわからない っていう
    ゆらゆら帝国の曲を思い出しました...

  • 彼女は内なる声に導かれ男の元を飛び出し自由になる。
    パリ、モンテカルロ、モロッコ、バルセロナ、イビサ。
    声はどんどん鮮明な形を取り始め、彼女は徐々に神性を帯び
    さりとて貴族のように俗っぽい欲に塗れる。
    変化するのは私ではなく状況だ。
    もっと変われ、変われ。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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