もう一度アップルパイ (わくわくライブラリー)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061956643

感想・レビュー・書評

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  • 去年参加させてもらったイベントで、気になった画家の「緒方直緒」さんが絵を手がけている、中川なをみさん作のお話。
    小学上級生向けです。

    とはいえ、中身の濃さにびっくり。
    ふつうに読める。
    当たり前かもしれないけど。
    でも、小学生がこの本読んで、どんな感想を抱くのかがとても気になる。

    主人公のあきらの両親は離婚していて、シングルマザーである母親は仕事中心の生活で海外へ行き、あきらはおばあちゃんに面倒をみてもらいながら暮らす。あきらは同級生の辻くんの妹、知恵とかかわりを持つようになり、まわりから不良と言われている知恵にふりまわされ、いろいろひどい目に合う。だけど、そんな知恵に自分が重なり、ほっておけないあきら。そんなあきらを辻くんや宮本くんが助ける。離れている母親は、あきらに何度か手紙をよこし、その中で自分の心境が少しずつ変化していくのを素直に綴る。それを読んであきらの心も揺れ動き、あたたかくなってゆく。

    ☆気になったぶぶん

    知恵は大きな目からぽろぽろ涙をこぼしながら、それでもおじさんにすがりついていった。あきらは混乱していた。知恵の態度が理解できなかった。なぜこんなにひどい父親にすがったりするのだろう。もっと反抗したらいいのにと、はがゆくてならかった。

    人は生まれたときから、心の中に空洞をかかえているといいます。その空洞は、受けた愛情によってふさがれていくのかもしれません。しかも、最初に親からの愛で満たすべき空洞のように思われます。しぜんに、親からの愛で心の穴をふさいでもらった子どもはしあわせです。でも、穴がいつまでもからっぽだと、子どもは必死になって自分でうめようとします。親に愛されたい一心で、ときには人を殺すことだってあるのです。
    (母の手紙)

    知恵って、すげえカンがいいの。自分をすいてくれる人って、すぐにわかるみたい。おれなんか最初っからあまく見られちゃってさ。めいわくもいいとこ。
    知恵のやつ、ひねくれてるから、アイラブユーがコンチキショウになるんだ。

    親友親友といいながら、あきらに干渉する洋子の態度に、あきらは気分をわるくしたときもある。でも、思うだけでなにもいわないあきらよりは、洋子の正直な態度のほうがずっといいと思った。気持ちは表現しなければ、相手に伝わらないからだ。

    このごろ、人間はひとりでは生きられない生物だと思うことが多くなりました。愛してくれる人がいて、自分でも愛する人がいて…、つまり、愛が自分を中心にして自由でいききしていなければ、人はしあわせにはなれないと。そういう状態でこそ、人は喜びがしみじみと感じられるのではないかと考えるようになりました。
    私はいつも自分の事だけで精一杯でした。自分が愛されることしか望まなかったのです。いくら愛されても、自分が愛さなければ、ちっともしあわせになんかなれないのに。

  • これもよく図書館で借りてた。
    絵はうーん…なんですが話は面白いです。小学生が主人公なんですが読んだ当時自分も小学生だったんですごくリアルでした(笑)いやー実際ありそうな話だわ。これを読むとアップルパイが食べたくなる!

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著者プロフィール

山梨県生まれ。日本児童文学者協会理事。『水底の棺』で日本児童文学者協会賞受賞、『天游』、『龍の腹』(くもん出版)。『水底の棺』『有松の庄九郎』(新日本出版社)、『茶畑のジャヤ』(鈴木出版)で全国課題図書作品に選定。19年11月に初のノンフィクション『よみがえった奇跡の紅型』(あすなろ出版)刊行。

「2021年 『バトン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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