桜の森の満開の下 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 2000
感想 : 227
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  • Amazon.co.jp ・本 (454ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061960428

感想・レビュー・書評

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  • 満開の桜を見ると、何故かいつも胸がざわつきます。
    音もなく静かに散り、静かに地面を埋めてゆく優しい淡いピンク色には「綺麗」なだけではない、正体不明の怖さがあります。
    不安定な気持ちになるのに惹かれてしまう。そんな魅力を桜に感じるのは、この本に書かれている出来事が、かつて本当にあったからではないだろうか、と思ってしまいます。
    美しく、怖い、なのに目をそらすことが出来ない。そんなお話です。

  • 2015.08.28

  • 一番好きなお話なので改めて購入。桜の下には何もない。

  • この作品に出会ったのは10年以上前なのですが、最初に読んだ時の印象は今も鮮明に残っています。

    満開の桜は、美しく、怖しい。

    一気に咲いて、数日足らずで散ってしまう短い命の儚さ。

    桜を妖艶な美しさ、怖さととらえた安吾の表現に、日本人なら共感する人は多いのではないでしょうか。


    物語の中では、主人公の山賊が次々に人を殺していくという残酷なお話なのですが、美しい人妻に魅せられて、操られる山賊に、不思議と残酷さを感じないのです。

    美しさの前には、残酷なことも残酷とは思えなくしてしまう。

    だから美しい満開の桜の奥には、とても残酷なものが隠されているのではないか・・・
    その残酷なものを秘めた美しさに人は魅了されるのではないか。

    わずか30ページの短編ですが、非常に完成度の高い洗練された文章で綴られており、いつまでも心に残る作品です。

  • 「桜の森の満開の下」と「夜長姫と耳男」は桜の季節になるとワンセットで何度でも読み返してしまう、特別に好きな二作。最初に読んだのは夢の遊民社が「贋作・桜の森の満開の下」を演った頃で、たぶんそのタイミングがあったからこの文庫が出たのだったと思う。遊民社の桜の森~は私も青年館で92年に観ました。

    上記二作は別格として、信心深い狸がお坊さんになる「閑山」や天女の羽衣を返したくない「紫大納言」などはシニカルだけどファンタスティックな日本昔話の趣で好きでした。後半は歴史ものが多く、「二流の人」は黒田如水、「梟雄」は斉藤道三、「家康」「道鏡」はタイトル通り。いずれも大河ドラマなどでおなじみの戦国武将らが、個性豊かな憎めないキャラクターとして描かれていて、たまにクスっと笑ってしまう。比較的現代ものの「小さな部屋」「禅僧」は、夜長姫や桜の森の女房に通じる、男を破滅させるタイプの妖婦が印象的。

    ※収録作品
    「小さな部屋」「禅僧」「閑山」「紫大納言」「露の答」「桜の森の満開の下」「土の中からの話」「二流の人」「家康」「道鏡」「夜長姫と耳男」「梟雄」「花咲ける石」

  • 活字本の良さって読んで想像して読み進めて情報が足されてまた想像して、現実じゃありえない光景が見えるところにもあると思うんだけど、それを上手いこと不気味にやらしてくれるのって良いよね。読んだのは表題作のみ。青空文庫で。

  • 『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』という近頃流行りのタイトルを見て、梶井基次郎の『桜の樹の下には』と、この『桜の森の満開の下』がベースになっているのではないかと思い読んでみた。とてもよかった。安吾も『堕落論』だけじゃないんだな。満開の桜の木の下では皆おかしくなってしまう、というか、花も盛りの一瞬には生命を燃やし狂ったようになるというような、生き物のSaGaを感じた。『櫻子さんの…』は多分読まない。このタイトルを書いてみたかっただけだろうから。

  • 青空文庫で表題作のみ読了。
    タイトルからくるイメージと実際の内容が全然違う。桜の美しさと怖ろしさの対比がすごい。

  • 独特の世界を持つ短編集。
     桜の花に思うことは、人によっても、時によってもさまざま。寓話のような、ホラーのような表題作は、この季節になると思い出す幻想的なおはなし。

  • 表題作は、たしか中学生のときに某通信添削の国語の教材に使われていて読んだ。
    読んだときの衝撃。美しく恐ろしい物語。
    何度も当時読み返した。
    最近、青空文庫でもう一度読んだけれど、感動は色あせず。
    坂口安吾の文章、あらためて素晴らしいと思う。

  • 安吾は怪談から恋愛もの、人間ドラマにドタバタとオール・ジャンルの作品を書いた器用な作家。太宰や漱石の作品に出てくる悩んで自殺するような弱々しい人物ではなく、血の通った逞しく生きる人間を描いている。それにしても、表題作のグロさは桁違いの凄さ。

  • 桜の季節に読み返すほん。
    読むと指先がじんとする。

  • 一本の桜がひらひらと花びらを舞い散らせる光景は綺麗だ。
    しかし数え切れないほどの桜の森で花びらが降り注ぐ光景というのは、音の無い、しんとした寒々しい世界を想像してしまう。
    この話が何の寓意なのかはわからない。寂しさとか、そういうものなのかもしれない。
    美しいけどもじっとその場でうずくまっていると、狂ってしまうような場所が、「桜の森の満開の下」だった。


    表題作含め13作が収録されている。
    持統~孝謙・称徳までの女帝時代の歴史小説、「道教」がおもしろかった。
    悪人かと思ってたけどちょっと道教好きになった。孝謙・称徳女帝も好きだ。可愛い人だったんだな。

    「梟雄」も好きだ。斎藤道三かっこいい!ってなる。

  • 表題作目当て。表題作が本当に素晴らしかった。溜め息が出るくらい素晴らしい。この小説の良さをうまく伝えられない自分がもどかしい。紫大納言と夜長姫と耳男も良かった。寓話が好きみたい。歴史小説は苦手なので読むのが辛かったけど…。岩波文庫の方も読んでみようかな。2011/410

  • 坂口安吾はこんな歴史小説もかいていたのですね。

    報道にも言えることで、
    同じ人物を描いた作品を複数の作家からの視点から捉え直して自らの理解とする、

    って大事ですね。


    桜の森の満開の下が読みたくて買ったものですが思わぬ拾い物でした。

  • 他を認識した瞬間に自己を認識し、圧倒的な物の前で無に還る。美しい。

  • 桜のイメージが変わる作品。美しいものには毒がある。

  • 敢えて詳細に描写しないからこその妖しさと美しさ。
    「恐怖と美しさと色気はマッチする」と何処かのホラーゲーム関連の書きこみで読んだことがありますが、まさにその通りだと感じる作品でした。

  • うーん
    うーーーーん?

    なんというか思ってた感じとは違ったような
    ホラーなの?違うよね…?
    なんとなく切ないような終わり方の気もしなくもないけど丸め込まれてるような気もする(素直に感動してしまっていいものかどうか…)

    姫に全く魅力は感じないけれど男は悪い奴じゃない気がしてしまうという
    首遊びは素直に気持ちが悪いです

  • ファンタジーにカテゴライズしてもいいのだけど、やっぱり小説、にしました。
    1冊の長編かと思っていたので、短編集で意外。
    慣れるまでは、少し読みにくかったため、中々世界に入っていけなかった。
    とにかく、とりあえずタイトルの「桜~」だけ読んでみたら、他のも読めるように。
    思ったほど世界にのめりこめない。
    でも、淡々と、ひたひたと浸みてくる感じ。

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著者プロフィール

(さかぐち・あんご)1906~1955
新潟県生まれ。東洋大学印度倫理学科卒。1931年、同人誌「言葉」に発表した「風博士」が牧野信一に絶賛され注目を集める。太平洋戦争中は執筆量が減るが、1946年に戦後の世相をシニカルに分析した評論「堕落論」と創作「白痴」を発表、“無頼派作家”として一躍時代の寵児となる。純文学だけでなく『不連続殺人事件』や『明治開化安吾捕物帖』などのミステリーも執筆。信長を近代合理主義者とする嚆矢となった『信長』、伝奇小説としても秀逸な「桜の森の満開の下」、「夜長姫と耳男」など時代・歴史小説の名作も少なくない。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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