「競争相手は馬鹿ばかり」の世界へようこそ

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 79
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062120777

感想・レビュー・書評

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  • ピリッと辛口の語り口が下品でないのはさすが。本と映画に造詣の深い著者の考えが舌鋒鋭く記されています。

    自分が知らないものも登場したのですがそれなら観てみよう・読んでみようと思わせる筆致。

    どういうわけか、モームの書いた読書案内の本を思い出しました。取り上げられている作品に類似があるのかしら?

    甘く夢見るような装丁に惹きつけられて読むと、いい意味で挑発されて、裏切られる本でした。

  • 小説を読むことについての講演で、キアロスタミ映画との出会い(『そして人生はつづく』)の話を知れて良かったし、少年少女文学を紹介する章が楽しい。

  • 何によって涙はあふれるのか。〈バラ色の光芒を浴び泡立ち弾ける乱舞の回転する肉体とレースの渦のなかに〉〈めくるめく急速度で回転しながら、晴れやかな微笑と胸のうずく痛みと共に、はっきりと見えてくる〉記憶に圧倒されること、自らとその体験との間には数十年間と言う時間があって、けれどそうではなくて、そう言った個人的な時間に対する感慨が重要なのではなくて、〈ただ、ジャン・ルノワールの映画を見るという体験が、最も重要なのであり、だから、涙はあふれる〉のだと書く、金井美恵子と言う作家のモラルが、自分はいつだって好きだ、と思う。そのモラルと言うものを色濃く感じる一冊。その実践によって書かれているのだと言う事。何に魅惑され、何を書くか。最たる映画、あの光のたばの中から生れる世界と、或いは石井桃子。〈「歌」を思い出すために、記憶の迷宮のような旅路を彷徨することと、冷蔵庫の上にメモ用紙と鉛筆をおいて、鼻歌をうたいながら台所仕事をすることの、どちらが私の好みかと言えば、むろん後者〉であることを、読者は体験済みの事実として既に知っているし、むろんの事として納得する。或いは長井真理「〈悲劇〉の生成としての境界例」を通してある種の小説のつまらなさを紐解きながら、小説を読む愉しみ、〈一つ一つの事件というのが、不幸なら不幸ということだけを意味するわけではなくて〉〈もっと出来事の持つ多様性とか、横道にそれていく言葉自身の持っている力とか、それによって膨らんでいる、そういったものの総体みたいなものをどう読むかということが小説を読むこと〉であり、小説を読むことで読者の経験するものが、〈絶えざる現在というもの〉である事を証明して行く、その快楽と言うべきスリリングさ…。そして指へ。『噂の娘』のラストにおいて、ためらい、痙攣する〈私〉の指と、ひとまず書き終え、けれどまだ書かれていない事に苛立つ作者の指。おわりを示し、けれどおわらないこと、新たにはじまり続ける事こそを示しもする、その指へと至り、読者もまたひとまず読み終える。

    自分は今、作家としての金井美恵子のモラル、読むことと書くことの実践と言うか、何を書くのか、と言う事、何に魅惑され、何に欲望し、如何に書くのか、或いは単純に何に対して「ケッ」となり、「フン」となるのか、と言う事に最も興味があるのだと思う。あとはその実践の内における指や手というもの。そしてその実践を映画と共に形づくる最たるものとしての、石井桃子。

  • タイトルの通り、中身も辛辣で自分の無知を認識できる本。小説や世の中の流れに関することは着いていけるけど、映画に関しては外国語を眺めているかのようでした。自分で考えるということを思い出し、自分で考えていたころを思い出すといった本です、刺激されます。

  • 遅ればせながら、『「競争相手は馬鹿ばかり」の世界へようこそ』へようこそ、と招かれた気分。
    装丁レイアウト、さすが。刺繍したくなっちゃった。

    この人の小説を何冊か…太刀打ちできないかも、と思ったのは、あの頃の私自身が彼女の成熟についていけなかったからなんだな、という気がします。
    しばらく、こういう随筆集を読んでみようかと思います。『タマや』なども。

  • 日常の事、映画、小説やそれに纏わる事、児童文学などを認めたエッセイ集。文体は丁寧なのだが、時として辛辣、批判精神に満ち、其処此処に笙野頼子臭が!?と、思った。彼処まで過激ではないが。この本に書かれている映画は1本も見た事がないので、読んでいてもわからなかった。ゴダールは『ワン・プラス・ワン』しか観た事ないし…。

  • 2009/4/22購入

  • ●腕は立つけど口も性格も悪い女性ライター達に支持されてる(ような気がする)金井美恵子のこのエッセイは、ものすんごく性格悪い? 世に一家言ありすぎ?? いや、そんな言葉では金井先生のクツの裏のホコリの足しにもなりませんですな。
    とにかく、底意地わっるー。嘆息。●とにもかくにも、やたらと島田×彦が嫌いなのはよくわかりました(笑) そらもう理詰めで嫌いと言う以前に、とりあえず虫が好かない、気に食わない、だから彼の発言行動やる事為す事気にいらないってレベルに見えるんですが、それって私だけですかどうですか。●それはそれとして、実は面白かったです。『噂の娘』は、小説としては文体が馴染めないので、読む予定はないのですが。私も修行が足りません。喝! 

  • この人の何がいいかって言えば、文字がぎっしり詰まっているところ。そりゃあもうぎっしり。みっしり。たまらない。

  • 『目白雑録』があまりに素敵におもしろかったので。

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著者プロフィール

金井美恵子
小説家。一九四七年、群馬県高崎市生まれ。六七年、「愛の生活」でデビュー、同作品で現代詩手帖賞受賞。著書に『岸辺のない海』、『プラトン的恋愛』(泉鏡花賞)、『文章教室』、『タマや』(女流文学賞)、『カストロの尻』(芸術選奨文部大臣賞)、『映画、柔らかい肌』、『愉しみはTVの彼方に』、『鼎談集 金井姉妹のマッド・ティーパーティーへようこそ』(共著)など多数。

「2023年 『迷い猫あずかってます』 で使われていた紹介文から引用しています。」

金井美恵子の作品

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