水曜日のうそ

  • 講談社
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062136181

作品紹介・あらすじ

毎週水曜日の正午におじいちゃんはやってくる。15歳の孫娘は大好きなおじいちゃんの話し相手になるのだが、話はいつも腰痛と昔の思い出話。おじいちゃんの息子である父が、そんなおじいちゃんを迎えることに嫌気がさしてきたころ、父の仕事の都合で孫娘一家は引っ越しをすることに。新しい転居先へ高齢のおじいちゃんをつれていくことはできないと考えた家族は、毎週水曜日の正午だけ、以前の家にもどることに決めた。引っ越したことを悟られまいと孫娘一家は、おじいちゃんにうそをつく。しかし、うそをついていたのは孫娘一家だけではなかった-。お互いがお互いを思って「うそ」をついた、優しさにみちた家族の物語。

感想・レビュー・書評

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  • (No.13-28) YAです。

    『主人公の女の子はイザベル、中学生。パパとママと一緒に2LDKのマンション暮らし。パパのお父さんである82歳のコンスタンおじいちゃんは、その近くの小さな一軒家に一人で住んでいる。
    イザベルが小さな時は皆でおじいちゃんの家を訪ねていたが、中学生になった頃からおじいちゃんがやってくるようになった。
    毎週水曜日の正午、30分以上の長居はしない。パパにとってこの暗黙の了解は最初のうち都合が良かったのに、毎週のこととなると負担でいらいらし、それでも懸命に都合をつけていた。

    けれど一家に変化が訪れることに。パパはそれをおじいちゃんには内緒にして、今までどおりの水曜日をおくる計画を立てる。
    無理がいっぱいの水曜日計画をパパは断固貫き通す・・・。』

    最初におじいちゃんは亡くなったことが書かれているので、読者はこれは過去にさかのぼった話なんだとわかって読むことになります。
    水曜日の計画はすごく無理っぽくて現実離れした話のように思えるのに、抵抗なく読めるのは登場人物がとてもリアルだから。
    おじいちゃん、パパ、ママ、ほんとにいそうな人ばかり。イザベルはちょっと子供っぽいように感じますが、一人っ子できちんとしたしつけをして大切に育てられたらこうなるかな。

    パパはなんて周りの人から気を使ってもらっているんだろう、そしてそのことを自覚してないみたいで、読んでていらいらさせられました。だけどいるいるそういう人!幸せな人だよね。
    パパは「おじいちゃんのためにはこうしなくちゃ」と一方的に決めてしまいます。おじいちゃんに相談することなく。もうこの年だと変化は受け入れられないからと。
    でも、実は変化することに抵抗があったのはパパのほうだったのではないかと思えるのです。自分の生活は変えても、おじいちゃん(つまり父親)に変わって欲しくなかったのでは?
    おじいちゃんが譲れなかったのは長年過ごした家で最後まで暮らすということで、それ以外だったら変化は受け入れることが出来たのに。
    そもそも水曜日に会いに来るようになったのはイザベルが中学に入ってからなんだから、この習慣に執着しているのはおじいちゃんではないと思う。父親と毎週会っている立派な息子という自分に執着してるのはパパ。

    ママはパパ操縦に関しては天才的な手腕を発揮してます。すごい!
    イザベルもほんとに良い子。いろんな思いを飲み込んで、家族のために努力するんだから。
    そしておじいちゃん。きっと息子のことはよく理解してるんだわ。「あの子は小さい時からこうだったなあ、仕方ないな、協力してやるか」なんて思ってたんじゃないのかなあ。子供は幾つになっても子供ってことで。

    いろいろあってもイザベル一家は幸せな家族なんだと思います。そこで育ったイザベルはきっと良い家庭を築くでしょう。

    この本はマイミクさんのところで知って図書館で探したのですが、そうでなかったら読まなかったと思います。
    児童書やYAとしてはあまり覚えがないほど表紙が地味。「水曜日のうそ」という字が反転しているのは印象的ですが、それでも地味。
    棚で見かけてもきっとスルーしちゃったな。
    読み終わってみるとなかなか象徴的ではあるんですが・・・。

  • 読み終わった時、胸の中に温かさと二度と会えぬ家族への寂しさが広がる作品でした。(系統は違いますが、小川洋子さんが好きな方は好みかもしれません。)

    物語の最初では「自分は家族の中では透明人間だ」と感じているイザベルも、いつの間にかしっかり意見を主張するようになっていましたね。対して父親は、おじいちゃんが亡くなるまで変化しない。子供の柔軟さと、大人の頑なさが上手く書かれているなと感じました。

    ジョナタンは10代なのに、イザベルの父親より人格者なのでは…(笑)

    良い本に出会えました。家族を大事にしないとなぁ…その人が生きているうちに、ですね。

  •  感想の前に、まずこの作品の紹介文を……(アマゾンよりコピペ)
    (※本のオビにこれと同じ文章が載っている)

    ”毎週水曜日の正午におじいちゃんはやってくる。15歳の孫娘は大好きなおじいちゃんの話し相手になるのだが、話はいつも腰痛と昔の思い出話。おじいちゃんの息子である父が、そんなおじいちゃんを迎えることに嫌気がさしてきたころ、父の仕事の都合で孫娘一家は引っ越しをすることに。新しい転居先へ高齢のおじいちゃんをつれていくことはできないと考えた家族は、毎週水曜日の正午だけ、以前の家にもどることに決めた。引っ越したことを悟られまいと孫娘一家は、おじいちゃんにうそをつく。しかし、うそをついていたのは孫娘一家だけではなかった―。お互いがお互いを思って「うそ」をついた、優しさにみちた家族の物語。”

     わたしはこれを読んで「だいたいネタバレやんけ!!」と思った。
     要するに、おじいちゃんがうそに気付いてないフリをしてたってことなんだろ? どうせそうなんだろう?
     で、読んだ結果、やっぱりそうだった。

     しかも、この作品にはツッコミどころがたくさんある。
     お父さんのついた「うそ」は、ものすごく非現実的で、常識ある社会人なら誰だって却下すると思う。 
     まず何よりも、そんな大掛かりなうそ、すぐばれるに決まってる。いちいち考えるまでもないことだ。引っ越したことだけでなく、お母さんが妊娠したことも隠すなんて、その場しのぎもいいとこだ。
     費用の面からいっても、TGVでリヨンからパリまでは日本円で往復3万円前後かかるみたい。
     たいていお父さんとイザベル(主人公の孫娘)が毎週これに乗っているので、毎週水曜日が来るたびに6万円程度の出費なのだ。
     日本で言えば、東京から大阪に引越したのに、新幹線に乗ってこれまでどおり東京に住んでいるフリをし続けるのとだいたい同じ。
     いくらおじいちゃんがそれほど長生きしなさそうだといっても、経済的につらくないか、それ……。
     あと、まあこれは別にいいんだけど、お母さんが妊娠したのは計画外のことらしい。なにやってるんですか(笑)

     ……とまあいきなりネタバレしてるわ、ツッコミどころ満載だわ、正直読まなくてもいいんじゃね? と疑いたくなるような本なのだ。


     ところが。
     最後まで読んだら、そんなことはどうでもよくなった。

     「親孝行 したいときには 親はなし」
     誰でも知っている、古くさい言葉だけど、いつまで経ってもこの言葉が生き残り続けているのは、いつの時代でも、子どもが親と過ごせる残り時間にたかをくくっているからだと思う。誰もが知っている教訓なのに、誰もが同じ失敗を繰り返し続けてきたのだ――大学で教鞭をとる、お父さんのようなインテリでさえも。もっとも、お父さんのうそは、根本的におじいちゃんを思う気持ちから出たものだ。そうでなければバカにならない電車賃をかけて、毎週おじいちゃんに会いに行くなんてできない。ただ、親孝行の仕方を間違ってしまったのだ。それがなんとも、せつなかった。

     いまのうちに少しでも親孝行しよう。
     たまには電話しよう。
     聞き飽きた話でも何度でも聞こう。
     実家に帰ったときは、肩をもんであげよう。
     炊事洗濯を手伝ってあげよう。
     そんな決意を促される本。

     この本は読書感想文コンクールの課題図書になっていたみたいだが、むしろ社会に出た大人たちのほうが身につまされるものがあると思う。
     おじいちゃんが老いるとはどういうことかをイザベルに語ってくれているシーンも、すごく興味深い。

    原題:Mercredi mensonge

  • 切ないくらいしんみりする話。うそはうそで通すことで均衡が保たれたのかもしれない、と思いました。
    本当のことをいえないやさしさってあると思います。

  • 1時間30分

  • 「おじいちゃんと自分」「父母と自分」「好きな同級生と自分」の3つの視点がよく描写されてる物語。中学生の反抗期が少し混ざったような成長期に、両親には見せられない姿、話せない話を祖父母には元気に見せていたなぁと自分自身の中学生時代を思い出させられた。ジョナタンがイケメン。家族物語ではあるものの、個人的には甘酸っぱい恋愛物語という印象が大きく残った。そしてフランス文学やっぱり好きだなぁと感じました。

  • 男前なおじいちゃんとボーイフレンド
    ダメ男のお父さん

  • Books A to Z より

    なんとも言えない、娘と父、祖父、ボーイフレンド、、
    フランスの家族の物語。。。

  • 「外国の本っておもしろい! ~子どもの作文から生まれた翻訳書ガイドブック」の「1. 外国のくらし」で紹介されていた10冊のうちの1冊。

  • おじいちゃんの気持ちを考えるとモヤモヤが残る。

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