ポトスライムの舟

著者 :
  • 講談社
3.23
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本棚登録 : 1718
感想 : 389
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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062152877

作品紹介・あらすじ

お金がなくても、思いっきり無理をしなくても、夢は毎日育ててゆける。契約社員ナガセ29歳、彼女の目標は、自分の年収と同じ世界一周旅行の費用を貯めること、総額163万円。第140回芥川賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • パワハラや同調圧力や、職場でありがちだろうけど、あまり良い環境と言えるのかはわからない人たちのお話に感じた。
    ささやかな幸せで満足するというのはもちろん素敵なんだけど、周りにいたらもう少しやる気を給料や境遇にも活かせるようおせっかいしたくなりそうな主人公…
    ただ、淡々と日々が進む様子を描かれているのは好みで、読み心地は好き。

  • 私が読む津村記久子氏作品の19冊目にしてやっと、芥川賞受賞作である本書を読んだ。

    本書には2作品が載っているが、初めの『ポトスライムの舟』は読み始めてすぐに「ああ、これは確かに津村さんの作品だ」とわかる文体だった。

    芥川賞受賞作品に対して漠然と苦手意識があるのだが、『ポトスライムの舟』の方はちゃんと読めた。
    私の身近には居なくて良かったが、「そよ乃」という人物がとてもリアルに想像できて、こういう人、私は無理だなと思った。
    そよ乃は、そんなに重要人物ではないので後半は登場しなかったが。

    関西弁はいいな。
    他人同士が仲良くなれる魔法の言葉のようで羨ましい。

    もう1作の『十二月の窓辺』はやや飛ばし読み。
    酷いなんてもんじゃないパワハラの話。

  • 芥川賞受賞作。
    一年で世界一周できる金額を貯めようと薄給なりに頑張る主人公。なんの事はない日常の話なんだけど、読み終わった後、私も日々を一生懸命生きようという気持ちになった。

    「十二月の窓辺」の方は作者の体験も入っている?
    上司も相当酷いが、主人公自体もなんだかなぁと思う人柄だった。自分の事ばかりで親い人の辛さを分かってあげれなかったのは、自分の身の上に起こっている事だけで精一杯だったから…だけでしょうか?
    この話だけなら★3つ。

  • 芥川賞を受賞した表題作ともう1編。
    淡々と綴られる文章はトーン低めな印象、でも独特のコミカルさとはっとさせられる鋭い観察眼が感じられました。

    「ポトスライムの舟」に描かれている女性たちの切迫感が切ないのです。
    彼女たちと同世代ゆえ、余計にシンクロしてしまう瞬間が多かったのかもしれません。
    物語の結末は、呆気ないような、でも大体のことって案外こんな感じかもな、という具合がリアルでした。
    感情の波を刺激されたせいか、短い文章ですが、読み終えたときに少しだけ疲れていました。

    「十二月の窓」は職場のパワハラ上司がおそろしい···。
    執拗にいびられる主人公がどんどん退路を絶たれて、余裕を失っていく感じに胸が苦しくなりました。

  • 表題の『ポトスライムの舟』と『十二月の窓辺』の中篇小説2篇。前作の方は工場社員とバイト掛け持ちで労働に明け暮れるアラサー女子が職場で見た世界一周旅行ポスターをきっかけにその費用の163万円を貯めようという目標を持ったところから始まる物語。最後にナガセは世界一周旅行に行けるのだろうか?と気になりつつ読み進めましたが、本人だけでなく、周りの友達や親や職場のリーダーといった人達の人間模様にも変化が現れて、じわじわと新しい世界がポトスライムのイメージとともに広がっていくところが面白かったです。しんどいこと、辛いことを抱えた人たちを暖かく見守る視点が感じられて、瑞々しさも感じて癒されました。一方後作の方はタイトルが示すように寒々しくて重かったです。職場のパワハラにかろうじて抗っていこうとする新入社員の記録です。V係長のようなパワハラ上司がどこかに本当にいそうで恐ろしかったです。パワハラの無い世の中になって欲しい。最後が衝撃でした。
    オフィス街を見つめる目が変わりそうでした。

  • 表題作が良かった

  • 現時点での津村作品ではダントツに一番好き。ゆるやかで、コミカルで、哀しくて、優しくて。主人公ナガセの生真面目さに好感が持てた。
    世界一周旅行のお金を貯めようと、しゃかりきになって仕事を掛け持ちして働くナガセ。単調な日々にどうにか意味を持たせようとする彼女の姿勢に過去の自分を重ね、結婚生活の気苦労を抱えつつも、どうにか自分の足で立とうと懸命なナガセの友人や職場の主婦には今の自分を重ね。そんな彼女らのドラマにポトスライムの緑が鮮やかに映えるようで、とても心地よい読後感であった。泣かせる話ではないのに、勝手に泣きそうになった。
    みみっちく情けない日々でも、時にはクサって蹲ってしまっても、明日はほんのすこしだけ明るいに違いない。日々のすみっこに転がっている、そんなささやかな幸せを信じさせてくれる一編だ。
    表題作だけでも素晴らしいのに、併録の「十二月の窓辺」も甲乙つけがたい出来だった。がしがし働く人には、こちらの方が印象に残るかも。パワハラ上司、v係長のヒステリーがおっそろしかった…。この救われなさに、世知辛さをこれでもかと感じさせられたが…後半の展開にはびっくり。泣かせる話ではないのに、またしても泣きそうになった。
    私は、津村さんが描くカタカナ表記の女主人公が大好きなのだ。不器用で損ばっかりしてるけど、だからこそ、明るい未来が待ってますようにと願ってしまうのだ。よろよろとした足取りでも、なんとか前を向いて歩く姿が、まるで自分のようだからかな。


  • あまり面白くないな、何を言いたい話なんだと思いながら、なんとかポトスライムの舟を読み終えた。ブクログに登録しようとしたら、芥川賞受賞という記載があり驚いた。なぜ受賞できたのか理解できない。

  • ポストライムの舟
    お金、働く、ということに縛られたいという欲求が誰かしら心の中に持っているのかも。縛られるということはある意味楽なこと。それがふとした事情で離れて、結局そのあとも単なる日常に戻るだけなのかも知れないけれど、心の中でさよならを言うだけの余裕ができる。物語りは淡々と進み、事件らしい事件も起こらないけど、日常の中に渦巻く感情を見事に表していると思った。
    12月の窓
    パワハラの話。怖い。自分が誰かにそうなっていないかが。

  • 「ポトスライムの舟」「十二月の窓辺」の二作品収録。
    両方ともOLが主人公の話だけど、淡々と物語が進んでいき終わってしまった。

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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞など。他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『水車小屋のネネ』などがある。

「2023年 『うどん陣営の受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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