ヘヴン

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062157728

感想・レビュー・書評

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  • p161〜
    病院を出てからの百瀬とのやりとり

    ホームのベンチに座って電車を待っていると、深緑色をした車両の正面がゆっくりとやってきて、大きな動物が息を吐くような音をさせていっせいに扉を開き、僕たちを乗せてからゆっくりと動き出した。(p47)


    電車は立ちならぶ家すれすれを走ったり、畑をいくつも横切って、できあがったばかりの夏の真ん中をまっすぐにゆくのだった。(p49)


    駅に着いてしまうと、何もかもがうんざりするくらいいつも通りのままで、しかしそこにも、あてもなく伸びてゆく淡い影のように夏の夕暮れがせまっていた。さっきまでふたりでいたあの公園にそそがれていた夏の成分と今ここに漂っている夏の成分は、どこまでも関係のない、まったくべつのものであるように思えた。(p70)


    窓からはいろんなものが見えたけれど、僕はなにからも見られていなかった。そこにある巨大な夏も、僕と同じじようにまだ一歩も動いていないように見えた。(p77)


    看護婦がその耳もとで大きな声を出して薬の説明をしていたりした。まるで空中に書いた大きな字をなぞるようなしゃべりかただった。(p144)

  • 「ブッカー賞」の翻訳部門「ブッカー国際賞」の最終候補として紹介
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99161184

  • 苛めに耐える子供たち。
    読むのが辛くなる程酷い苛め。
    コジマのその後がとても気になる。


    我が子が中学生になるのは何年も先だけど、
    小学校でもいじめはきっとある。
    もっと注意深く見て一日でも早く気付いてあげなきゃと。
    相談しやすい環境と関係作りをしなければと。
    必要性を強く感じた。

  • 僕とコジマが自分のクラスに居たら、自分はどう接していたのかな。考えると苦しくなる。

    2人への苛めの描写は辛くて、何度も涙が流れてきた。

    百瀬とコジマ、どちらの言葉が正しいのか。百瀬の理屈に丸め込まれそうになる。
    でも、自分が正しいと思うものを信じられる心があればそんなものはブレないのかもしれない。

    僕が新しく手に入れた、奥行きのある世界。
    きっと僕の人生ももっともっと深く素敵なものになって行くのだと信じたい。


    作者が簡単な漢字を意図してひらがな表記にしている箇所は何かのメッセージなのでしょうか。

  • とにかく読むのにエネルギーがいる。それでも最後主人公はヘヴン(救済)を見つけるものと信じて読み進めましたが、最後まで見当たらなかった。斜視の手術で得た新たな視界がそれなのか。ならそれまでの登場人物との会話はなんだったのか。要はイジメからの解放や、斜視の治療ではなく、全ては主人公だけの外部(新たな視界)や内部(それによる心持ち)だけの話だったのか。ふたたび読み直せば分かることもあるかもしれないが、この作品を私が再び手にすることはないだろう。

  • 「2010本屋大賞 6位」
    九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/709617

  • 深刻な社会問題をテーマにした内容だが中途半端な感じしか残らなかった。ヘヴンが象徴するものは何だったのか。

  • 読んでいて腹が立ってしまった。
    イジメ陰湿であり容赦がない。
    子供だと色々な形で増幅するかもしれない。
    大人は気づかないのだろうか。気づかないふりをしているだけなのか。
    現実にこのようなことがきっとあるのだろう。
    そう思うと益々憤りを感じてしまう。
    大人になっても、自分の吐口を弱者に向ける輩が多くいる。
    無くならないだろうと悲しく思う。
    コジマはどうなったのだろうか?

  • 初めて読む作家さんの本。新しい作家さんを開拓するのは、いつもワクワクと緊張がある。
    生々しくて不快感を感じる部分もあったけど、ラストは泣いた。
    川上未映子さんの他の著作も読んでみたい。

  • 読んでて「僕」にも「コジマ」にも
    自分を照らし合わせてしまった。
    終わり方がちょっと寂しく感じたけど
    さっぱりしててよかった。

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著者プロフィール

大阪府生まれ。2007年、デビュー小説『わたくし率イン 歯ー、または世界』で第1回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞。2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で第14回中原中也賞受賞。2010年、『ヘヴン』で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第20回紫式部文学賞受賞。2013年、詩集『水瓶』で第43回高見順賞受賞。短編集『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞受賞。2016年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞受賞。「マリーの愛の証明」にてGranta Best of Young Japanese Novelists 2016に選出。2019年、長編『夏物語』で第73回毎日出版文化賞受賞。他に『すべて真夜中の恋人たち』や村上春樹との共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』など著書多数。その作品は世界40カ国以上で刊行されている。

「2021年 『水瓶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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