- Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062175272
感想・レビュー・書評
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サクサクとは読めなかった
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廃墟となった遊園地を舞台に描かれた、幻想的で物悲しくて少し温かな物語。さまざまな動物が弔われるその場所で明かされる、それぞれの物語の真実。
たかが動物、されど動物。彼らが人間と同じような心を持っていないとは、誰が言い切れるのか。言葉が通じなくて理解ができなくても、決して分かり合えない存在ではないのかもしれません。
お気に入りは「ブクウスとツォノクワの丘」。まさかビッグフットとは……! あまりに異様な物語の真相は、一番哀しいものでした。 -
【収録作品】カマラとアマラの丘-ゴールデンレトリーバー-/ブクウスとツォノクワの丘-ビッグフット-/シレネッタの丘-天才インコ-/ヴァルキューリの丘-黒い未亡人とクマネズミ-/星々の審判
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廃園になってしまった郊外の遊園地跡に、不思議な青年が墓守をする、動物たちの墓がある。そこにペットを葬るためには、その青年と向き合い、自分の一番大切なものを差し出さねばならない・・・・。奇妙な噂に引きつけられるようにして遊園地跡にやってくるものと青年のやりとりを描いた短編集だ。
ミステリー風の内容になっているけれど、テーマとしては、動物(それも、ペットとされる愛玩動物)と人間の関係性についてで、難しいテーマだからか、重たい雰囲気のものが多い。 -
2012 11/6
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閉鎖された遊園地にある秘密の動物霊園。墓守をする青年。5つの短編。表題作が好きだった。動物との関わりをミステリー仕立てにして複数揃えるのは、なかなか厳しいかなぁ。トリビア的な動物の話は興味深かった。
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廃墟となった遊園地にある秘密の動物霊園と墓守の青年の物語。
人間のエゴや身勝手さを強く感じた。
後からじんわり沁みてくる感じは良いのだけれど、もうちょっと文章が熟れてたらなぁとも思った。 -
あらすじだけを読むと切ないホラーもしくはファンタジー要素を含んだミステリーだろうかと思ったが、解き明かされていく謎は切なさを通り越して、形容しがたい重さを運んできた。相利共生あるいは片利共生とも受け取れる人間と動物の関係は、しかしそんな四文字では片付けられないほどに深さを増すことがある。異種であるゆえに出会い触れ合えることを幸運とするならば、異種であるゆえに招く不運もまた当然のごとく存在し、通じ合えるのに越えられない壁が見えたときの絶望ははかりしれない。それでも、肉体の先に魂の溶けあう余地がきっとあると信じたくなるような四話(プラス一話)だった。
それはそうと、キーパーソンの能力に関することが不明のままということは、続編を期待してよいということなのだろうか? -
「カマラとアマラの丘 ―ゴールデンレトリーバー」
「ブクウスとツォノクワの丘 ―ビッグフット―」
「シレネッタの丘 ―天才インコ―」
「ヴァルキューリの丘 ―黒い未亡人とクマネズミ―」
「星々の審判」
初野晴さんの作品が大好きで、新作のたびに読んでいる。新しい何かを書いてくれる小説家さんだから。
この『カマラとアマラの丘』も自分の求めてるものを与えてくれた。
舞台は訳ありのペットが埋葬されるという夜の遊園地。そこで墓守をする不思議な青年のもとにやってきた者たちと、動物たちをめぐる出来事が中心となって展開される。
非常に読みやすいが、ここにある物語は安易に「感動した」と言えないような重さを持つものばかり。
人間の勝手な気持ちに搾取され、翻弄される動物たちの姿が描かれているが、その真相においては、単純なミステリにある謎の解明の驚き以上に、人間の傲慢な思いをはるかに超える動物たちの姿に衝撃を受ける。
特に「シレネッタの丘」と「ヴァルキーリの丘」はすごいことになっている。
「シレネッタの丘」
既視感を覚えるほどミステリによくあるような一家の殺人事件と密室の状況が刑事の口から語られるのを読んでると、異和感を強く感じる。
しかし真相で完全に自分を飛び越えられた感覚。強烈かつ、沁みる。
「ヴァルキーリの丘」
衝撃度ではこれが一番。利権絡みの醜い争いに、わかり合うことなどできないような少年たちの行動、そして動物たちが絡んだ恐ろしい推測。
とことんまで俗悪にまみれさせた上で語られる真相。
「シレネッタの丘」同様、心にどすんとくる物語になっている。
あと思ったのは、犯人当て小説レベルにミステリとしてガチガチのものとは、そもそも前提というかルールみたいなのが異なっていることか。
それぞれ「動物」というブラックボックス(この言い方もモノ扱いかも知れないが)がミステリとして見たときも根幹にあり、そうした既定不可能な生物を扱っているから生じてしまう空間がこの作品で描かれている。
動物に思考はあるのか? 魂はあるのか?
単純に切り捨てられないミステリの新しい方向性のひとつがここにあるのかもしれない。
そして翻ってみれば、「普通」のミステリで対象とする人間たちも、突きつめれば「ブラックボックス」だ。
本作は思った以上に、ミステリの根源に踏み込んでる気がしてきた。