ふたつの月の物語

著者 :
  • 講談社
3.87
  • (34)
  • (69)
  • (39)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 529
感想 : 79
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062178808

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 生き別れのふたごの少女。ふたりに秘められた力。ダムに沈んだ村と、そこにあった秘められた儀式。などなどワクワクする要素がぎゅっと詰まっています。
    ひと昔前の少女まんがを思わせる展開に心を奪われました。なにせ、身寄りのない少女が、謎の富豪の養子候補として別荘に呼ばれるという、いかにも! な幕開けですし。そういう仰々しさは扱いいかんによっては寒々としたものになりますが、この作品ではまず酒井駒子による表紙絵が、その仰々しさを受け止める入り口として作品を盛り立てる役割を担っています。あとは僕がこの手の物語が好きだから、余計に楽しめたというのは大きいでしょうが。
    ファンタジーを土台にホラーで味付けし、SF要素に繋がるエンターテインメントの幕の内弁当的な作品です。本を読むことが面白くなってきた頃合いにオススメしたいですね。

  • よくできた和製ファンタジー。

    二人が贄にされるのかと思ったが、節子さんはそこまで腹黒い人ではなかった。それやったらホラーだもんなあ。

    オオカミ信仰は関東に多く、『オオカミの護符』なんかも一時期ちょっと話題になったので、民俗学好きの富安さんならそういう本に刺激されて物語ができたのかなと思う。
    (参考文献が巻末にあればよかったのに。子どもは読めなくても、オオカミ信仰は富安さんの創作ではなく実際にあるということを知るきっかけになったのでは、と。)

    美月と月明のキャラクターをわかりやすく書きわけてあるので、子どもにもとても読みやすい。
    しかし、二人の特性が今一つ上手く活かされていないように感じた。もしかしてシリーズ化するつもりだったのかもしれないが。
    あと神様が親切すぎませんか。分かりやすいというか。神様の言葉としては。

    物語はサクサク進み、面白く、ちょっと不気味で切ない、そしてオチもしっかりある、子どもにすすめやすい本だと思う。

    酒井駒子の表紙も、いつもは「内容に合っているのか?単におしゃれっぽくて流行りのイラストレーターだから使っているのでは?」と疑問を持つことも多いのだが、今回はちょっとダークな内容と合っていると思う。月明が顔を隠しているのも想像が膨らんで良い。

  • 養護施設で育った美月(みづき)と、たった一人の家族だったおじいちゃんを亡くしたばかりの月明(あかり)を、養子にと申し出てきた老婦人がいた。
    老婦人の出した不思議な条件に、二人の出生が合致していたのだ。

    老婦人の湖畔の家で初めて対面した二人は、お互いの持つ不思議な力に戸惑いながら、謎の多い老婦人が二人を選んだ理由を探り出す。

  • 面白かった。
    なかなかどうして悪くない。
    23:30に読み始めてスルスルと読み進み2:50に読み終わった。
    大口真神をアマゾンで検索して出てきたので購入した。
    この著者さんは本書が初めて。

    自身の出生を知らぬ主人公、ダムの底に水没した村、狼信仰。
    このキーワードで読む前から期待値は上がっていました。
    カバーイラストからシリアス、ダーク、ヘビィな印象を持っていたが読み始めると、あらら?案外ライトなのかしら、と思うほど軽快に話は進んでいく。ちょっぴり設定の糊付けがくどいなと感じる部分があるが、逆に言えば伏線や物語の設定を丁寧に説明してくれていたので(あれ?あの人はなんて発言していたっけ?)などとページを遡ることはなかった。
    二人の主人公が物語をグイグイと引っ張っていくので、緊張感のあるシーンがあっても電車の窓から見た景色みたいに過ぎ去って行きます。テンポが良いのでページをめくる手が止まらず読み終わってしまった。
    読んでて一番興奮したシーンは物語終盤にあります。ネタバレだから伏せますけど臨場感と雰囲気が良いです。説明したいけれどごめんなさい。書きたい感想がネタバレになってしまうからこれ以上書けない!
    あかりの服の文字には思わず吹き出しました。お気に入り。

    ビンとラベルから重厚な味を想像していたが、いざ飲んでみたらスッキリ飲みやすい、このお酒なかなかどうして悪くないじゃない、そんな読後感を体験しました。

  • 児童ファンタジーとして良くできていると思う。酒井駒子さんの挿し絵も雰囲気に合っていて良い。楽しく読めた。

  • すごい話だった。全体的に悲しみに覆われているけれど、読み進めずにはいられなかった。
     養護施設で誰にも心を開かずに育った美月(みづき)と、お寺のおじいちゃんに拾われて愛されて育った月明(あかり)。二人で出生の謎を探っていく過程はドキドキした。その秘密は暗くて悲しくて、ちょっと怖そうだったから。
    でも、冷静で聡明なみづきと、明るくて行動的なあかりの対比は楽しい要素だった。
     最後はやっぱり悲しくて、涙が出てしまった。
    みづきとあかりには、湖月荘での記憶は残っているのかな? 残っていて欲しい。せっかく絆が生まれたんだから。

  • 名古屋が誇る児童書専門店、メルヘンハウスさんにて完全なるジャケ買い。酒井駒子さんの描く哀しげな双子らしき少女の表紙がきれいで、手に取らずにはいられなかった。

    双子の少女の物語って神秘的で好きです。離れ離れにお互いを知らず、全く異なる環境で育った 美月と月明、どちらも月にまつわる名前が付けられている。そして、二人とも不思議な力を持っている。

    里子に招かれた二人が不思議な別荘と、ダムの底に沈んだ村、神社、の女主の秘密を少しずつ知り、自分たちの出生の秘密に気づきいてしまう…

    こういう、日本の文化が背景になったファンタジーっていいですね。中学生くらいのお嬢さんにもおすすめしたいです。

  • とても雰囲気がしっかりしている物語だった。
    世界にほころびがないというか・・・
    表紙の絵にふと気持ちがひかれて、そのまま物語の世界に入っていけた。
    無数にのびた可能性の枝から、最終的に選ばれた未来も、これで良かったと思えるもので、うん。良かった。

  • 富安陽子が得意な「ふしぎなもの・こと」をめぐる、女の子ふたりの「出会い」の物語。作者のなまえを見ずに読みはじめたら、富安陽子の作品だとは最後まで気がつかなかったかもしれない。これまで読んできた彼女の作品とは雰囲気が異なり、「おもい」ファンタジー。酒井駒子の装画も「おもさ」を伝えている。対象年齢も主人公の女の子ふたりと同じ中学生以上からだろうか。

  • 十五夜読書にて。
    謎めいた幕開けから引き込まれました。
    不思議な力を持つ2人の少女、湖底に沈んだ村、月読神、大口真神、魂呼び、、、と私の好みのツボを付いてくる作品でした。
    民俗学的要素の絡め方も巧くて魅力的に描かれています。
    QEDとか好きなので薀蓄てんこ盛りも大好物ですが、くどくならない程度に自然と物語に組み込んでくるこういう作品もとても好きです。
    ”お調子者=ポップコーンの匂い”とかの表現も面白い。
    最後の節子さんの決断は少し哀しさが残りますが、良い幕引きだったと思います。
    美月と月明のその後の物語が読みたいな。

著者プロフィール

1959年生まれ。1991年『クヌギ林のザワザワ荘』(あかね書房)で第24回日本児童文学者協会賞新人賞、第40回小学館文学賞を受賞、1997年「小さなスズナ姫」シリーズ(偕成社)で第15回新美南吉児童文学賞を受賞、2001年『空へつづく神話』(偕成社)で第48回産経児童出版文化賞を受賞、『盆まねき』(偕成社)により2011年第49回野間児童文芸賞、2012年第59回産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞、2021年『さくらの谷』(絵・松成真理子 偕成社)で第52回講談社絵本賞を受賞。絵本に「やまんばのむすめ まゆのおはなし」シリーズ(絵・降矢なな 福音館書店)、「オニのサラリーマン」シリーズ(絵・大島妙子 福音館書店)などがある。

「2023年 『そらうみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

富安陽子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
辻村 深月
西條 奈加
富安 陽子
有川 浩
まはら 三桃
乾石 智子
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×