- Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062183673
作品紹介・あらすじ
ねぇ、銀杏。わたしたちは確かに友達だったよね?
わたしが観覧車の幽霊になって随分時間が経ちました。この観覧車には変わった人がいっぱい乗ってきます。盗聴魔、超能力を持つ占い師、自信喪失した女記者、ゴンドラでお見合いをする美人医師……みんな必死にくるくる生きてる。
だから今、わたしは人を思う力を信じてる。そうしたらいつかもう一度、あなたに逢えるかな?
これはすれ違う人々の人生と運命を乗せて、回り続ける観覧車の物語――。
感想・レビュー・書評
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色々な人たちの運命が交差して絡まっていく。
長いこと積んでたこの作品をどうし今読んだのか。それこそがこの小説に取り込まれたとしか思えない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
複雑な背景を抱えた複数の登場人物が入り乱れた構成はさすが。
しかし、それぞれの人物が特殊すぎて感情移入しづらく、そのせいで人間関係から生まれてくる感動も伝わりづらかった。
登場人物がよく泣くのだが、どうして泣いているのかよくわからないことが多かった。
会話の中で人物の背景を探るようなシーンでは、話がかみ合っていないかったり、言葉の選び方が唐突だと感じたりすることが多かった。
そんな人物が何人もいるものだから、枝葉が広がりすぎていて、何を伝えたいのかわからない。
読み終えてみて「これは何の物語だったんだ?」という印象。
白川三兎の作品の共通することの多い「芯のあるヒロイン」はなく、また「どんでん返し」もインパクトが弱かった。
登場人物を変わったあだ名で呼んで、終盤で実はこの人とこの人は同一人物でした、という展開は少し飽きてきた。
また、他の作品でのあだ名のトリックが明かされたときには何かしらの感情を呼び起こされたが、本作で登場人物の正体がわかっても、「それがどうしたんだ?」という感想を抱くばかりだった。
白川三兎の作品が好きで8割方読んでいるが、面白くないと感じたのは本作が初めてだ。 -
死んで観覧車の中の地縛霊になってしまった千穂と彼女の幼馴染である銀杏を巡るファンタジックな青春物?
二人の視点が交互に綴られる物語。
銀杏の訳の分からないエネルギーに引きずられてどんどん読み進めてしまうんだけれど、何か色々消化不良…。
強引に全てを結びつける為の『突風』とか、千穂の消え方とか、最後の銀杏と彼の事とか、え?それでいいの?と言いたくなった。
正直どの人の結末も今ひとつすっきりしなくて、唐突に話が終わらされてしまった感がある。
千穂にとっても銀杏にとっても何か変わるきっかけが物語の中であったとも思えず、ちょっと微妙な読後感だった。 -
なかなか~~
言い回しの妙
意地っ張りで・・
好きだな -
観覧車の幽霊とオッチャンとかぐや姫と銀杏がどう繋がるのか繋がらないのか先が気になって一気に読んだ。占いも運命も信じないけどこんなのあってもいいよなって思う。人を信用しない彼がこのあとどうなっていくのかが気になるなー!
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観覧車に住み着いた、幽霊の物語。
著者らしい価値観や雰囲気を散りばめた、ライトな青春ファンタジー。
思っていたよりやや甘ったるく、そのまま終わってしまった。
他作のように、キレや魅力、捻りがもうひとつあってよかった。
3- -
『八ヶ月近く地縛霊をやっているけれど、私は概ね穏やかな日々を送っている。初めは古株の幽霊が新入りの私をいびりに来るのでは、とビクビクしてゴンドラの中で息を潜めて過ごしていた。』
『出会いに確率は関係ない、と私は思う。互いに引力があれば、自然と結合する。いかに不可能に思える確率でも、引力の働きによって二人の手は繋がる。それが運命というものなのだ。』
『明日の価値が下がったのは自分の進歩が止まったからだ。丸一日過ぎても無駄毛しか成長しない自分にがっかりする時がある。でももっとがっかりするのは成長しようとしない自分に何一つ疑問を感じない時だった。』
『裸で包丁を握るのは二回目だな、と私は恐怖心を打ち消すためなのか、無意識のうちに過去の楽しい思い出に浸っていた。正確には違うな。あの時はエプロンをしていた。』
「自慰(G)と愛(I)の間に挟まれたHは、当然セックスの意味だろ」
「あたしはそっちの説がいい」
「同感だ。じゃ、ホテル行こうか」
「手が早いのね」
「愛を育むのはセックスのあとでいいんだよ。アルファベットの神様がそう決めているんだから」
「占いに来る人はみなさん悩みを抱えているから騙すのは簡単です。心が弱っていると目が曇り、自分の願望しあ見えなくなります」
「それは詐欺にならないんですか?」
「夢を売るのが占い師の仕事です」
「私はあなたに助言し、それに基づいてあなたは誰かを救うことになります。その誰かは別の誰かを助け、その別の誰かは、と連鎖が続いて、いつかは回り回って私を救うのです」「素敵な考えですね」
「理想ではありません。現実に行われていることなのです。世界が入り組み過ぎているのでわかり難いのですが、全ては繋がっているのです。私もあなたもこの世界を滞りなく回転させる大事なピースの一つなのです」
「飲んだら乗るな。乗るなら飲むな。いざ、乾杯!」
「あなたに残された時間は十五分を切っている。観覧車が一周する間に私の心を捕まえることができないなら、あなたにもうチャンスはない」
「そんな横暴な。十数分で何ができるって言うんだ」
「百メートル走のメダリストは十秒で世界と歴史を変える」
『耳が痛かった。同じ相手と百回寝るのは相当なエネルギーが必要になるを愛情の継続、マンネリの打破、ムード作り、テクニックの向上、それらの努力を怠ってはなし得ない偉業だ。』
『二週間前に恋を葬り、しばらくは喪に服す誓いを立てたのに、新しい恋が不意に現れて私から喪服を剥ぎ取った。』
『確かに死者を忌み嫌うのっておかしい。ちっとも汚くなんかない。生きている人間の方がずっと汚い。』
「もしも私が超能力者だったら自分の能力を隠すわ。テレビなんかで公にしたら、私を悪用しようとする人もきっといるから。まともな人ならそう考えるでしょう?」
「そうだな」
「だから本当の超能力者は目立たないようにして、その能力を自分や自分の大切な人のためにこっそり使っているのよ」
「お前の言う通りだ。バトル漫画の主人公が戦闘開始のしょっぱなから必殺技を出せないのと同じなんだな」
「う〜ん ー まあ、そういうことだね」
「先生、『ピザ』と『ピッツァ』の違いってなんですか?」
「アメリカ人が作ればピザ。イタリア人が作るとピッツァ」
「あの主人はイタリア人なんですか?」
「純血の日本人よ。でもイタリアのピッツァ学校できっちり修行したから、彼の肘から下はイタリア人なの」
「自分を大切にすることよ。人の心はガラス細工のように脆いものなの。稀に防弾ガラスみたいにタフな人もいるけど、大抵はソフトに扱わなくはならないの。もし壊れたら自分の手を傷付けることにもなるでしょう? だから自分が怪我しないことを第一に考えて慎重に優しく扱えばいいのよ。そうすれば自分も他人も傷付かないで済む」
「奈良の大仏のような鈍感さと、大仏をCTスキャンできるほどの鋭い感受性を合わせ持っている不確かな人のようですね?」
「迷うことは悪くないことです。それだけあなたの未来に可能性が溢れているということですから」
「愛情の目盛りは注ぐ側、振り撒く側にしかついていない。受ける側には量を計る術はない。否応なく受けるだけだ。」
「間に合ったか?」
「ギリギリね」
「それは良かった。イーストウッドも映画の中で『時間を守らない奴は人生で何一つ守ることができない』って渋く言っていたからな」
「好きな男ができた」
「俺よりもいい男か?」
「奈良の大仏のような鈍感さと、大仏をCTスキャンできるほどの鋭い感受性を合わせ持っている不確かな男よ」
「面白い喩えだな」
「うん。お似合いだったから。みんなが認める理想のカップルだった。無駄にラブラブしてなくて、いつも自然な感じで。相手に依存するんじゃなくて、手を取り合って世界と共存している、そんな感じだったの」
『生まれ変わりがあるとしたら、次は素直な生き物になりたい。誰かに優しくされた時に『ありがとう』と言葉に出して感謝できる生き物になりたい。』
「無理。『誰かにそばにいてほしい』ってのは『誰でも構わない』ってことだから。それじゃ銀杏に失礼だよ。そんなふうに他人を利用したくない」
「勝ち負けやプライドなんてつまらないものよ。あれこれ考えるのは歳とってからで充分。若いうちは欲望に従いなさい。お金が落ちていたら、とりあえず拾うでしょ?」
「山田さん、私もそれなりに代価を払っているのよ。みんなと同じようにね。女医でもフリーターでも、美人でもこの世のものとは思えないほど不細工でも七十五点の顔でも、みんなそれぞれの罰を受けている。人生に対して各々の代価を支払っているの。それだけはわかって」
「悪気を感じる必要はないんです。好きになったことで相手に迷惑がかかるかもしれないけど、それは同性愛に限ったことじゃないですよ。『好き』って気持ち自体に罪はありません。だからリラックスして恋を楽しんでください」
『ある初対面の人が私のことを「B型でしょ?」と決めつけた。「ううん。O型」と私が言うと、その人は「そう言われればO型っぽいよね」と訂正した。そこで私は「ごめん。嘘。本当はAB型なの」と言った。そうすると「だから天の邪鬼なんだ」とその人は納得した。でも私の血液型はA型だ。占いなんていい加減なものだ。」
「テレビなどの『今日の占い』で射手座は「カラーコンタクト」、牡牛座は「ものまね芸人のブログ」がラッキーアイテムだというのが気に入らない。アマゾンの奥地で暮らしている射手座と牡牛座の原住民はどうしたらいいんだろ?」
『新しい実感はもう一つある。救いようのない不快感だ。私たち日本人の気紛れな優しさで支給されるワクチンの数が決まっちゃう。ここはなんてふざけた世界なんだ。』
『今、目が合ってしまうと、私の理性は宇宙の彼方に吹っ飛んじゃう。私の理性が地球に帰還する頃には、間違いなく人類は猿の支配下に置かれている。』
『世界が私の背中を押した。ポンとわたしは柴崎の目の前に押し出された。この世のあらゆるものが私の恋を応援しているみたい。運命が私の味方についているんだ。これほど心強い援軍はいない。』 -
びっくりするくらいバラバラで、バラバラだけど繋がってて、みんなぶきっちょで。
誰にも共感できなくてなんだかなーと思いつつ、最後はやられる。
言葉の何気ない使い方、ニュアンスが好き。 -
ばらばらの短編集のような話が、みんな繋がっていたというオチ⁈に、たまらなく魅力を感じます。