- Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062184571
感想・レビュー・書評
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最近、テレビ番組で活躍されている若き社会学者古市憲寿さんの作品。個人的には彼のテレビにおける歯に衣着せぬ発言が結構好きなため、今回の本もそれに期待して購入した節がありました。
古市さんの戦争観というものを期待していたのですが、今作品に関しては戦争博物館訪問記といった側面が強かったです。世界各国の戦争博物館に行って、各国が戦争のどの部分にフィーチャーしているのかを見出していくという趣旨のものであり、広島の戦争博物館しか行ったことのない自分にとっては「同じ戦争博物館でも国によってこんなに違うのか」と新しい見方を提供してくれるものでした。しかし、内容に関しては「この国の博物館はこんな感じ。この国の博物館はこんな感じ。」と非常に淡々としたものであり、面白味という点に関して言えばイマイチという印象を持ちました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古市の戦争論。戦争論ではないか。世界の戦争博物館を巡りながら、過去の戦争を考えている。いつも通り飄々とした古市節が健在で、軽妙な軽口と皮肉が印象的。
個人的に古市の好きなところは、ある出来事との時間的、心情的距離感を素直に描いているところ。彼の専門(?)は若者論だと思うが、現代の若者がとらえる「今」を視点として、時代をプラグマティックの見つめ直す。ここがいい。
今回の戦争にしても、日本という国のアイデンティティにしても、強い思い入れがある人からすれば軽薄で無礼極まりない物言いだと思う。しかし有形無形に関せずあらゆるものは風化する。それをありのままに残そう、国の記憶として継承しようという努力はもちろん否定しないし、それがあってこその共同体だと思うが、それでもやはり抗えずあらゆるものは風化する。それは存在としての形も変化させ、それが持つ意味自体を確実に変えていくのだ。
そういう現実にさらされている人間であることの地平に立って見つめたとき初めて見えるものがあるはず。だからこそより意味のある解釈が成り立つはずだ。
彼の感性は、恣意的ではないにしろそういうものを教えてくれる。でも彼がメディアで用いられる原因がそこにあるとは思わないけど。
17.6.18 -
評論と呼べるのかどうかわわからないが、日本の置かれた状況と諸外国の戦争に対する考え方がよくわかると同時に、今の若者は、戦争にならないように動くのではないかと、かすかな期待を抱かせてくれる。
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誰も戦争を教えてくれなかった。
だから僕は、旅を始めた。
広島、パールハーバー、南京、アウシュビッツ、香港、瀋陽、沖縄、シンガポール、朝鮮半島38度線、ローマ、関ヶ原、東京……。
「若者論」の専門家と思われている28歳社会学者。
そして「戦争を知らない平和ボケ」世代でもある古市憲寿が、
世界の「戦争の記憶」を歩く。
「若者」と「戦争」の距離は遠いのか、
戦勝国と敗戦国の「戦争の語り方」は違うのか、
「戦争、ダメ、絶対」と「戦争の記憶を残そう」の関係は歪んでいるのでは――。
「戦争を知らない」のはいったい誰なのか、
3年間にわたる徹底的な取材と考察で明らかにする、
古市憲寿、28歳の代表作! -
世界各地の「戦争博物館」を通して、戦争を考えるという趣旨の本。試みとして面白いと思うし、日本では戦争と言えば、「あの戦争(アジア・太平洋戦争)」がピックアップされすぎているのではないかという問題提起など、はっとさせられる論点も少なくない。しかし、著者特有のちょけた感じが本書でもいかんなく発揮されていて、これを読んで不快に感じる読者も少なくないだろうなともったいなく思う。また、将来は無人機同士の血の流れない戦争が行われるかもしれないといったあまりに楽観的な物の見方にはちょっとあきれた。
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テレビでは割と本音でコメントをしているのを見て、以前から気になって今回やっと1冊目ですが読めました。
戦争博物館では、国の平和と戦争に対する姿勢が見ることができるのではという考えから、世界中の戦争博物館(記念館)を訪れ、その体験(感想)がメインとなる内容。
ただ、こういった博物館のハコモノは、展示のテクノロジーの発達スピードによる時代遅れや、戦後70年となる今、そもそも若者は戦争に対する切実感(リアル感)がほぼ無くなってきており、メッセージを伝えることに限界があるのでは?という結論に。
新鮮だったのは、戦争には悪いイメージがあるが、スポーツ観戦のような楽しさや、景気回復の側面、人間には本来非日常的なことに喜びを感じる部分があるなど、一般的な日本人が持つ戦争に対するイメージと真逆のことも書かれている。
K-POPやSEKAINO OWARIなどの楽曲が出て来たり、巻末ではももいろクローバーZとの対談もあって、20代の若者の思考に少し触れられる。
この著者のような社会学者とは一体何なんだろうということを読んでいる間、考えた。
学生の頃からたくさん勉強をして、大学では留学したり海外旅行をして、この世界の成り立ちを少しでも知ろうとしている。
うらやましいというか、自分はもっと勉強すれば良かったという後悔(笑)と、著者のような頭の良い人間の思考に追いつきたいような感情(笑)。
何はともあれ、この内容にある歴史のほとんどは知らないことばかりだったけれど、大事なのは知ろうとすることなのかなと、自分を鼓舞しました。 -
戦争博物館をテーマに、日本や世界各国(偏りあり)が「戦争」や「平和」をどう捉え、伝えているのかを見ていく本。
注や巻末の博物館レビュー、ももクロとの対談などおまけ部分(?)も充実。戦争について考えるときって、眉間にしわを寄せて悲壮な顔で臨まなきゃいけないような気がしてしまいがちだけど、こんな風に自然でいいんだと思う。
こちらを読んで博物館の存在意義や面白さを考えることもできるし、「戦争」についてどういう態度であるべきか考えることもできる。 -
同じ敗戦国のドイツ、イタリア(対日戦としては、戦勝国)だけでなく、韓国や中国などの戦争博物館の検証結果が示されている点で、信頼がおける「戦争論」だと思います。