- Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062190947
感想・レビュー・書評
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中国人残留孤児に関するミステリー。目が見えない生活。双子
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久々に心底満足するミステリーを読んだ。
もうすぐ70歳になろうと言う和久は、全盲の視覚障碍者である。様々ないきさつがあって、今は一人暮らしをしてはいるが、仲がこじれてしまい疎遠になっている娘と小学生の孫娘がいる。
腎臓病に苦しむ孫娘は既に母親から一度腎臓移植を受けているが、一年半後に拒絶反応が出、週3日の人工透析に縛られた生活を余儀なくされている。一度失った家族の絆を取り戻す為にも、己の不明を償う為にも、なんとしても孫に腎臓をやりたいと願う和久。しかし、長年のストレスから来る飲酒、精神安定剤、睡眠剤を常用して来たせいか腎臓の数値が悪く移植が許可されない。「孫の為にも役だってくれない」と言う娘の刺す様な言葉に、無力感と今までの暮らしの記憶が蘇る…。
そして、何年も顔を出さなかった岩手の実家に老母と兄を訪ね、孫にとって伯父に当たる兄に腎臓移植を願い出ることを思いたつが…。直ぐに移植を申し出たわけではないにもかかわらず、「適合検査」そのものを頑なに拒む兄。何故?満州引きげの時に生き別れ、中国残留孤児となっていた兄は本当の兄なのか?こみ上げる疑念は膨れがるばかり。和久は兄が本物かどうかを調べ始める…。が、それと共に不審な事が身の回りに次々と起き始め、疑心暗鬼の淵に追いやられて行く。
中国残留孤児問題とその背景、視覚障碍者の日常に潜む恐怖がじわじわと伝わって来る所は、並のホラーよりもずっと怖い。暗闇の中で誰かがそこにいるかも知れない恐怖。自分を襲うもの、語りかけるものの姿や顔を見られない恐怖は、信じていた者を疑い、疑った者を信じてしまいそうになる。また、中国人としても、日本人としても確実な存在証明や生活の保障を得られずに半世紀近くを生きた中国残留孤児の無念と怒り、国への不信も読むにつれて強く深く読む者に迫ってくる。
不穏な事が次々と起こり、和久だけでなく周囲の人間までが安全を脅かされるに至って、それまでの伏線が見事に繋がり驚く様な真実が明らかになる…。あの戦争、満州での出来事、引き上げ、生き別れ、それらもある意味闇と言えよう。そして中途失明者で全盲の主人公の完全な闇。それらの闇に香る「嘘」とは。読み応えのあるこのミステリーは「第60回江戸川乱歩賞受賞作」
個人的にも絶賛おすすめである。 -
残留孤児として帰国していた兄が本物か疑う盲目の弟。
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ある意味乱歩賞受賞マニュアルにある、中途での視覚障害者が主人公。
新人賞の乱歩賞として考えるなら中々いい出来だと思います。
しかしながら、ストーリーのネタ、オチ、推理のトリックを活かす為の主人公の人間性の肉付けが透けて見えるようで、なにか嫌でしたね。 -
中国残留孤児、密入国、肝臓移植、盲目老人の日常生活など盛りだくさんの内容をよくまとめ上げたという推理小説の秀作。
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デビュー作とは思えないよく出来た作品。筆者の思わせぶりな風景描写もあとから考えると伏線で、それをきっちり回収しているのも見事。他の作品も読もうと思う。
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読後感は悪くない。
盲目の世界に入り込みドキドキした。
あーやっぱり。。。という結末。 -
デビュー作とは思えないプロらしい作品。
主人公に共感を持てない部分もラストの何もかも変わって見えるシーンへつながる見事さがあります。