- Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062190947
感想・レビュー・書評
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中国残留孤児、視覚障碍者の主人公という設定を土台に据えたかなり骨太なストーリー。文章はシンプルかつ、伏線の張り方に回収、終盤の畳みかけ、どれを取っても高水準な作品である。トリックの肝の一つである、いつも側に寄り添っていた兄、というのはやや出来過ぎな気はしたが、兄の出自や、孫娘の顛末など、最後まで気を抜けない作品で、一気に読まされるだけの筆力は感じた。ただ、非常に残念な点が二つある。まず一つは致命的なタイトルセンスの無さで、古風でありつつ、「見える」でも「聴こえる」でもなく、判別つき難い嗅覚、しかも「匂う」ではなく「香る」としたのはいいとして、あまり想像を掻き立てられないタイトルだった。もう一つは、主人公の年齢設定だろう。孫娘のいる60歳の還暦を迎えた主人公の一人称にしてはかなり違和感があり、40歳ぐらいに感じられる。語る言葉の端々からは老齢による「老い」を全く感じず、視覚障碍者としてのバックボーンとの兼ね合いに引きずられるあまり、今一練り込み不足だったように感じた。共感を得難い頑固さや我儘は確かに老人のそれではあるが、その部分が単なる性格にしか感じなかったのも、主人公の年齢設定に違和感を覚えた次第である。この辺りのリアリティは少し致命的かつ、中国残留孤児という設定に合わせただけのように捉えてしまったのが残念だった。総じて、伏線回収、設定などは魅力的であったものの、作為性でややリアリティが損なわれた部分があったのが非常に惜しい。
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目の見えない和久の視点から語られる物語。視覚以外の情報で物語が進むのが斬新。戦争と家族について考えさせられる。
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下村作品、8冊目ですが・・・本当に!この筆力には圧巻です。 参考文献の多さが、圧倒的で
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最後の真相明かしはよく考えられているが、そこから逆算してすべてが構築されていることが透けて見えてしまう。
しかも文章が硬いというか、「描写」じゃなくって「説明」になっている。
これじゃあ、とてもページを繰る手が止まらない、という感じにはならない。
人物造形もイマイチ真に迫るものがなく、特に主人公が70歳近い老人であるという印象が全く伝わってこない。
まあ、映画やドラマなど映像作品では描くことが難しい、「常闇」という主観に文章作品でチャレンジした意欲は買うが。
この程度で江戸川乱歩賞受賞と。
ちょっと信じられんなあ。 -
気に入らないのはタイトルだけ
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全盲の主人公が、兄が中国人と入れ替わっているのではないかという謎に挑む。
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不法入国事件、自宅に届く不気味な俳句、娘との不仲に孫の病気、誰かに狙われている気配などなど
幾筋も張り巡らされた謎を解かんとする、主人公の危なっかしさにハラハラさせられました。
目の見えない一人暮らしのおじいちゃんが酒と安定剤を飲み、記憶もあやふやになりながら謎解きに動き回るんですもの…。
盲目の暗闇での恐怖感、それも作者の狙いなのだろうけど、探偵役はもう少し溌剌としてる方が安心して読めた気がします。
身内を疑うやるせなさや、戦争による残留孤児問題と暗い内容でしたが、希望の見える結末にホッとしました。 -
視覚障害を活かしたトリックがふんだんに。視覚を奪われる恐ろしさを追体験。中国残留孤児についても認識を改められ、最後にはきちんと感動されられる、さすが乱歩賞受賞作。それにしても、主人公は中々のクズ。