- Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062190947
感想・レビュー・書評
-
40代で視力を失った村上。彼は満州からの引き揚げ組であり、ロシア軍から逃げる最中に兄とはぐれていた。しかし、残留孤児として中国人に育てられた兄は、村上が失明した後に帰国し、母と同居する。村上は孫娘のための腎臓移植を兄に頼みに行くが断られ、「兄は本物の兄なのか」という疑問を持ち始めるー。
最初から最後までとてもスリルがあり、一気に読んでしまった。結末も予想できず、好きな感じのどんでん返し。残留孤児や満州引き揚げについてこれまで知らなかったが、予想以上の過酷さだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ミステリーらしすぎて、ネタからいろんな設定がされたように感じられた。
謎解きはすごいんやろけど、物語には入り込めんかった。主人公も気難しいし、イヤミスに近い感じ。ってことで星3つ。
ラストがいい話になったのが救いかな。 -
盲目の高齢な主人公という自分と大きく環境の異なる主人公ではあったけど、物語にぐんぐん引き込まれ、終盤に向け自然にスピードアップしていく。
読み進めるうちに主人公と一緒に疑心暗鬼になっていき、胸がギュッとなる。ラストに向けて一気に収束していく展開、すごかった。
家族のつながり、優しさと思いやりにほっとしました。良かった。。 -
江戸川乱歩賞受賞作で、「このミス」3位という実績に惹かれて読んでみました。
社会派小説ばりばりで、中国在留日本人孤児、視覚障害者、腎臓移植などの現代日本の抱える様々な問題を、主人公を通して描いているかなりヘビーな話で、主人公にも感情移入しにくくて、正直前半は読むのに疲れたのですが、いろいろと小さな謎が積み重なっていった伏線が、終盤一挙に解決される爽快感は、ミステリーならではのものでした。読み終えてみると、かなり読後感も良くておもしろかったと思います。
ただ、乱歩賞という賞への応募作ということで、盛れるだけ盛ったという感じで、やや欲張りすぎのところもあったかな。暗号まではいらなかったように思いました。 -
むー、なかなか面白かったしトリックも鮮やかだったんだけど、69歳全盲の主人公って時点で物語に派手さは無いよな。ただこのトリックを使うには今のタイミングだとこの設定しかないのもよく理解できた。練られてる。目が見えない人の世界をほんの少しでも垣間見えた気がして描写にはいちいち感心した。しかし70代の兄貴屈強過ぎでは?
-
江戸川乱歩賞ということで興味を持ちました。
満場一致で賞をとられたということで、かなり期待して読みました。
確かに内容は読みやすく、伏線をすっきりと回収し、なおかつ考えさせられる深い内容、救いのある終わり方でした。
中でも、目の見えない主人公の生活感が非常にリアリティーを持って描かれていたのではないかと思います。
ただ一点、本当に些細なことで指摘するほどではないのかもしれませんが、左利きの兵士の謎解きの部分のみどうしても腑に落ちません。
おそらく当時は左利きは右利きに強制させられていたでしょうし、そうでなくても刀を振るうのに左利きだから普通と違う、というのは少々無理があるのではないでしょうか。
概ねすっきりとまとめられていたからこそ、ほんの些細な部分が気になってしまいました。
しかし、中国残留孤児という重いテーマをしっかりと扱っており、昨今の軽いミステリが流布する中で、こういったミステリももっともっと出てきてほしいと思います。 -
目の見えないヒトが巻き込まれるトラブル、と、その謎解き…これはある意味ハードルの高い設定。だって主人公には何も見えないんだから最後の最後に、実は、こうだった…なんて後付け、とかつじつま合わせがいくらでもできちゃう。だから読み終わった後「なぁんだ」と思ってしまいそうで。
でも、そんな心配、余計なお世話でございました。いやー、そう来たか、そう来たのかっ!
これでもか!と盛り込まれるネタと、その状況の描写の豊かさ、そして伏線の鮮やかな回収の流れに溺れつつ読む。
主人公の「見えない不安」はそのまま読み手の「先の見えなさ」へとつながり、手さぐりで進む怖さにどっぷりと浸った。あぁー、ホントにホントに面白かった。 -
緊迫感溢れる導入部から盲目の主人公にタッチするまでの展開が実にスリリングで身を乗り出して読んだ。
少々話が急展開過ぎるのでは、とも思ったがその心配は筆者の思い過ごしだった。
盲目の人が抱える恐怖や緊張感はひしひしと伝わってくるし、戦争によるフラッシュバックも実に強烈でまるで戦場に放り込まれたかのような恐怖や緊張がある。
中国残留孤児や兄弟、母親、父と子といった切っても切れない家族の絆を描いた本作は間違いなく傑作と言っていい。第60回乱歩賞受賞も頷ける。