闇に香る嘘

著者 :
  • 講談社
3.63
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本棚登録 : 1335
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062190947

感想・レビュー・書評

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  • 40代で視力を失った村上。彼は満州からの引き揚げ組であり、ロシア軍から逃げる最中に兄とはぐれていた。しかし、残留孤児として中国人に育てられた兄は、村上が失明した後に帰国し、母と同居する。村上は孫娘のための腎臓移植を兄に頼みに行くが断られ、「兄は本物の兄なのか」という疑問を持ち始めるー。

    最初から最後までとてもスリルがあり、一気に読んでしまった。結末も予想できず、好きな感じのどんでん返し。残留孤児や満州引き揚げについてこれまで知らなかったが、予想以上の過酷さだった。

  • ★3.5

    27年年間、兄だと信じていいた男は偽物ではないかー。
    全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追うー。

    村上和久は、孫の夏帆に腎臓を移植しようとするが、検査の結果適さない事が分かる。
    夏帆の母で和久の娘・由香里は夏帆に腎臓を提供していたが、
    その腎臓は1年半しか保たれなかった。
    後は兄・竜彦しかいなかった…。
    和久は、岩手の実家を訪れて竜彦に移植を依頼するが、迷うことなく断られる。
    検査さえも頑なに拒絶する竜彦の態度に違和感を覚える。
    中国残留孤児の兄が永住帰国した際、既に失明していた和彦は兄の顔を確認していない。
    竜彦は偽物ではないか?
    満州で生き別れる前の兄は、思いやりがあり、家族の事を第一に考える性格だった。
    しかし、再会した兄は家族の苦労な想像もせず、自分の事を最優先している。
    性格も自己中心的になった。そう、まるで別人の様に…。
    疑惑を抱くと、どんどん膨れ上がる。

    和久は、視覚障碍者。精神安定剤の影響で、自分の記憶すら曖昧な中、
    真相を知りたい一心で、手探りの孤独な捜査を始める。
    全盲の和久の日常生活の大変さも丁寧に描かれていた。
    外出ひとつにしても不安感・絶望感・恐怖感が凄く表わされてた。
    それ故に、読んでて辛いなぁと思いました。
    中国残留孤児についても丁寧に描かれていましたが、何だか遅々として進まない感じがした。
    盲人ならではの、疑心暗鬼の描写は素晴らしかった。

    全てが明らかになった時、*゚Д゚)*゚д゚)*゚Д゚)エエェェ物凄く驚かされました。
    いつくもの驚愕の事実…。そうだったんだ…。全ての疑いが反転した。
    非常によく練り上げられた作品でした。
    優しさからの嘘が沢山だった(*´︶`*)
    でも、そこに至るまでとても読み辛かった。入り込め無かった。そこが残念でした。

  • ミステリーらしすぎて、ネタからいろんな設定がされたように感じられた。
    謎解きはすごいんやろけど、物語には入り込めんかった。主人公も気難しいし、イヤミスに近い感じ。ってことで星3つ。
    ラストがいい話になったのが救いかな。

  • 盲目の高齢な主人公という自分と大きく環境の異なる主人公ではあったけど、物語にぐんぐん引き込まれ、終盤に向け自然にスピードアップしていく。
    読み進めるうちに主人公と一緒に疑心暗鬼になっていき、胸がギュッとなる。ラストに向けて一気に収束していく展開、すごかった。
    家族のつながり、優しさと思いやりにほっとしました。良かった。。

  • 江戸川乱歩賞受賞作で、「このミス」3位という実績に惹かれて読んでみました。
    社会派小説ばりばりで、中国在留日本人孤児、視覚障害者、腎臓移植などの現代日本の抱える様々な問題を、主人公を通して描いているかなりヘビーな話で、主人公にも感情移入しにくくて、正直前半は読むのに疲れたのですが、いろいろと小さな謎が積み重なっていった伏線が、終盤一挙に解決される爽快感は、ミステリーならではのものでした。読み終えてみると、かなり読後感も良くておもしろかったと思います。
    ただ、乱歩賞という賞への応募作ということで、盛れるだけ盛ったという感じで、やや欲張りすぎのところもあったかな。暗号まではいらなかったように思いました。

  • 反転した後のストーリー展開があれよあれよという具合で読み応えたっぷり。
    前半、腎移植、残留孤児や中国人の細々とした社会派を思わせる書き込みがちょっと重たすぎたので、飛ばし読みしてしまったけれど伏線もあったんだなぁ~後にして思えば。
    謎の人物、不可解な点字など、盛り沢山だったのでミステリー読みには楽しめた本でしたね。

  • むー、なかなか面白かったしトリックも鮮やかだったんだけど、69歳全盲の主人公って時点で物語に派手さは無いよな。ただこのトリックを使うには今のタイミングだとこの設定しかないのもよく理解できた。練られてる。目が見えない人の世界をほんの少しでも垣間見えた気がして描写にはいちいち感心した。しかし70代の兄貴屈強過ぎでは?

  • 江戸川乱歩賞ということで興味を持ちました。
    満場一致で賞をとられたということで、かなり期待して読みました。
    確かに内容は読みやすく、伏線をすっきりと回収し、なおかつ考えさせられる深い内容、救いのある終わり方でした。
    中でも、目の見えない主人公の生活感が非常にリアリティーを持って描かれていたのではないかと思います。
    ただ一点、本当に些細なことで指摘するほどではないのかもしれませんが、左利きの兵士の謎解きの部分のみどうしても腑に落ちません。
    おそらく当時は左利きは右利きに強制させられていたでしょうし、そうでなくても刀を振るうのに左利きだから普通と違う、というのは少々無理があるのではないでしょうか。
    概ねすっきりとまとめられていたからこそ、ほんの些細な部分が気になってしまいました。
    しかし、中国残留孤児という重いテーマをしっかりと扱っており、昨今の軽いミステリが流布する中で、こういったミステリももっともっと出てきてほしいと思います。

  • 目の見えないヒトが巻き込まれるトラブル、と、その謎解き…これはある意味ハードルの高い設定。だって主人公には何も見えないんだから最後の最後に、実は、こうだった…なんて後付け、とかつじつま合わせがいくらでもできちゃう。だから読み終わった後「なぁんだ」と思ってしまいそうで。
    でも、そんな心配、余計なお世話でございました。いやー、そう来たか、そう来たのかっ!
    これでもか!と盛り込まれるネタと、その状況の描写の豊かさ、そして伏線の鮮やかな回収の流れに溺れつつ読む。
    主人公の「見えない不安」はそのまま読み手の「先の見えなさ」へとつながり、手さぐりで進む怖さにどっぷりと浸った。あぁー、ホントにホントに面白かった。

  • 緊迫感溢れる導入部から盲目の主人公にタッチするまでの展開が実にスリリングで身を乗り出して読んだ。
    少々話が急展開過ぎるのでは、とも思ったがその心配は筆者の思い過ごしだった。
    盲目の人が抱える恐怖や緊張感はひしひしと伝わってくるし、戦争によるフラッシュバックも実に強烈でまるで戦場に放り込まれたかのような恐怖や緊張がある。
    中国残留孤児や兄弟、母親、父と子といった切っても切れない家族の絆を描いた本作は間違いなく傑作と言っていい。第60回乱歩賞受賞も頷ける。

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著者プロフィール

1981年、京都府生まれ。2014年に『闇に香る噓』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は「週刊文春ミステリーベスト10 2014年」国内部門2位、「このミステリーがすごい! 2015年版」国内編3位と高い評価を受ける。著書に『生還者』『難民調査官』『真実の檻』『失踪者』『告白の余白』『緑の窓口 樹木トラブル解決します』『サハラの薔薇』『法の雨』『黙過』『同姓同名』『ヴィクトリアン・ホテル』『悲願花』『白医』『刑事の慟哭』『アルテミスの涙』『絶声』『情熱の砂を踏む女』『コープス・ハント』『ロスト・スピーシーズ』などがある。

「2023年 『ガウディの遺言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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