住友銀行秘史

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (474ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062201308

感想・レビュー・書評

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  • これだけのメモをよく取っていたな、というのが第一印象。
    著者ご自身のバイタリティに感服。普通なら心が折れる状況でも、見失わずに貫徹した。
    バブルとは、驚きの時代だったということがよくわかる。今ではありえない。
    ただ、営業のやり方は参考になる。

  • 1990年、バブル真っ只中の日本金融界で起こったイトマン事件。本事件は経営不振のイトマンを立て直すために住友銀行から派遣された河村社長による不正経理事件だ。莫大な負債を隠すために絵画取引を利用するなど、当時としてはその意外な手段が注目された。

    一躍時の悪役となったイトマンのメインバンク住友銀行はこの事件をどのように片付けたのか。著者は当時の住友銀行員でありながら、銀行を守るためにその事件を匿名で世間に暴露し、事件解決に奔走した。それから20年以上を経て、著者は当時の詳細な業務メモをもとに事件の真相を語る。

    本書の多くは断片的なメモを並べているだけで、正直、読み物としてはおもしろくない。すぐれたゴーストライターを付けてほしかった。また、「住友銀行秘史」と言いながら、結局イトマン事件のことしか触れないって、どうなの。

    とはいえ、住友銀行によるイトマンへの会社更生法適用失敗から、XデーならぬZデーのイトマン取締役会での社長退任動議のクライマックスは読み応えがある。

  • バブル絶頂期にまきおこった、住友銀行とイトマンを巡る事件に関する詳細が記されている。

    著者は元住友銀行の元取締役であり、組織内部から状況を伺い、逐一をメモとして残した。住友銀行という組織を護るただ一心に、陰に陽に行動し事件のおとしどころを探っていく姿は、感銘しかない。

    巨大組織の中とはいえ、実は組織の大小は問わず、実に人間臭いところで組織が動かされていくことが、手に取るように分かり非常に面白い。

    勤め人なら読んでおいて損はない、一冊だ。

  • 当時の住銀中堅社員の目線から見たイトマン事件の記録。
    あくまでも当時の著者の立場から事件を振り返ったもの。

    ●危機を察知してからも行内は保身や派閥争いで動きが鈍い。そうこうするうちにイトマンの借金は劇的に膨れ上がる。銀行の危機察知から詐欺師たちの巻き返し、住銀のカネをしゃぶれるだけしゃぶり尽くそうとする詐欺師たち、それに操られる会長、幹部、イトマン、、。
    ●行内政治、イトマンでの多数派工作、社長の追い落とし、、財界の大物でもある磯田会長を篭絡していた詐欺師、会長や役員に直電する詐欺師、、これ恐ろしいのは事件の全貌はいまだに明らかになっていないということ。今後も明らかにはならない。数千億円が闇に消えた。
    ●謎は30年たっても謎のほぼ謎のまま。伊藤寿栄光とは何者なのか。そもそも不動産でイトマンの取引相手、それが役員クラスでスカウトされて社長と二人三脚で不動産投資に邁進する。さらにするするっと住銀の会長と昵懇の仲になり、住銀役員に電話で指示したりもする。イトマン社長の嫁が当たり前に5000万円受け取ったとか、イトマン社長は会社のために頑張っていたのか私欲が絡んでいたのか、その辺も謎。磯田会長の娘が勤務する会社での絵画取引、ここに許永中が絡むがここらも謎が多い。登場人物が何を考えてそんなことをしていたのか??というのはわからない。イトマン処理反対派の役員らもどこまでのことを知ってそうしていたかはわからない。磯田会長もどこまで何を知っていたのか知らなかったのかわからない。そういう積み重ねがイトマン事件であるバブルであったというところだろうか。

    ・磯田会長は戦前生まれのバリバリエリート。
    ・70歳すぎても住友銀行に君臨、アンタッチャブルな存在に。
    ・一人娘を通じて詐欺師が侵食。
    ・磯田会長派の役員は磯田の子飼い。高卒を磯田が引き上げた。
    ・イトマン社長も磯田の子飼い。高卒を磯田が引き上げた。
    ・イトマンには住銀が首都圏進出やら初期の不良債権処理を押しつけた貸しがあった。
    ・著者は中堅幹部候補として事件を知って処理する方向へもってこうと悪戦苦闘。
    ・著者の上司が当時は役員だった西川善文。のちに頭取として君臨。
    ・著者が住銀辞めたあとに楽天副会長やらになるのは全て西川の後ろ盾によるもの。
    ・そういえば東芝もとある社長が傍流の子飼いを自分の出世に帯同させて引き上げて社長にまでして原発で失敗してグループ解体へまっしぐら中なので似てる構造。
    ・エリートたちの世界はコネ、同期、兄弟分、子飼いなどの関係性でつくられている。案外に狭い世界。そこに地べたにいた詐欺師が入り込んだことで起きたのがイトマン事件などなどバブル期の事件。

  • 本人のメモ書きを時系列に掲載したもので、所々に解説があるが、イトマン事件全体の説明はないので注意。自分は「堕ちたバンカー」の後に本書を読んだので、流れが理解できたが、これを最初に読んでいたらなんだかわからなかっただろう。
    しかし事件当事者の一次資料であり、臨場感があり流れさえわかっていれば大変面白い本だと思う。

  • 面白かった

  • 実際に事案に関与した当事者の一人からの、詳細な記録。つぶつぶの事象の列挙が中心で、全体のストーリーが見えにくい面はあるが、迫力はある。実名で記載されており、大企業の派閥争いがうかがい知れる点も興味深い。

  • 当時の住友銀行の部長が、イトマン事件について書いた本。ほとんどの登場人物が実名で書かれている。著者が当時つけていたメモを基に書かれているため、日付や場所、発言にも信憑性があり、説得力がある。巨大銀行、巨大企業の意思決定のやり方や、内部抗争の実態について理解できた。
    「(国会答弁補佐)野一色部長は想定問答集にあちこち付箋をつけて「これでもう完璧だ」と言う。私は「そんなに付箋だらけにしたら、どの付箋が何をさしているこかわからなくなってしまいますよ。こういうのは、自分の知識の範囲で答えるしかないんですよ」と応じた。実際、その場になって彼の担当分野について質問されると、彼はどの付箋だかわからなくなって、ページをめくりながら往生していた」p193
    「(役員の動き)皆、流れを読んで、いま何をするのが得策なのかを嗅ぎ取る。それに乗ることにかけては超一流なのだ」p314
    「(野村證券 中野常務 1990年)子供を入れたくない企業ワースト10を知っているか。1 イトマン、2 秀和、3 住銀、4 野村證券、5 大昭和製紙。野村が住銀より下なのでホッとしたよ」p452
    「(裁判)相手側(許氏や伊藤寿永光氏側)の弁護士も、おそらく元検事総長などの相当の大物がでてくるはずだ。彼らは、検察がどういうロジックで攻めてくるかがわかるから、相当慎重にならざるを得ない」p458
    「もし、銀行で頭取になりたいのならどうすればよかったのか。それは何もしないことだ。減点主義の組織なのだから」p464

  • 四半世紀前の話だが、銀行員というより、ヤクザな世界だなぁと実感。メモばかりで時間の経過や流れが繋がらないのが残念。ネタはとても良いものなので、池井戸さんあたりが小説にしたら面白いのになぁ。。

  • イトマン事件の顛末を当時部長クラスの著者(トップ昇進組、転出後のちに楽天DLJ社長)が、自分の当時の詳細なメモをもとに日時単位で記録する。
    イトマンという中堅商社がバブルの最中不動産(ヤクザ絡み)でズブスブになってしまうところに、住友銀行が当時の天皇と呼ばれた会長がこれまた身内共々ズブズブに入り込んでしまい、銀行を巻き添えに総額5000億円の損失を出す。
    全く仕事(適正なサービス・商品を提供し対価をもらう)という話がなく、校内の争い、および外部からの圧力を使って内部に関わっていく話が繰り広げられていく。
    とても生々しく面白い。銀行が生き生きしていた時代ともいえるが、30年弱でこうも変わるのかという感慨も起こる。

著者プロフィール

國重惇史(くにしげ・あつし)
1945年、山口県生まれ。68年、東京大学経済学部を卒業。同年、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。渋谷東口支店長、業務渉外部部付部長、本店営業第一部長、丸の内支店長を歴任。94年に同期トップで取締役就任。日本橋支店長、本店支配人東京駐在を経て、97年、住友キャピタル証券副社長。銀行員時代はMOF担を10年務めた。
その後、99年にDLJディレクトSFG証券社長になり、同社を楽天が買収したことから、2005年に楽天副社長に。楽天証券会長、イーバンク銀行(現楽天銀行)社長、同行会長を経て、14年に楽天副会長就任。同年、辞任。現在はリミックスポイント会長兼社長。

「2016年 『住友銀行秘史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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