- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062205047
作品紹介・あらすじ
〈黒い結婚篇〉中島京子、窪美澄、木原音瀬、深沢潮
〈白い結婚篇〉成田名璃子、瀧羽麻子、森美樹
感想・レビュー・書評
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結婚
それは人生の墓場か、楽園か─。
7人の作家さんによるアンソロジー。
窪美澄さんが読みたくて手に取った。
【黒い結婚】
窪美澄 『水際の金魚』
「美人で頭も良くていい子」と遅くに子どもを授かった両親から溺愛されて育った世間知らずのちづるという女性の話。初めて付き合ったMもまぁ相当にクズな男だけれど、ちづるも世間知らずすぎだろ!Mとの手痛い別れから、自分を好きになってくれる人なら誰でもいいとした見合い結婚もまた闇への入口だった。うわぁ、美澄さんドロッドロだー。ヒモに不倫にドロドロだー笑
深沢潮『かっぱーん』
33歳。自分とどっこいどっこいの見た目の友達 加奈が結婚したことを知り、心中穏やかではいられなくなった(笑)菜々子。一時期 夢中になっていた韓国人AV男優テファの画像を携帯で見つけてから 、テファの嫁が運営する「韓国カップルは世界平和の第一歩!」という超怪しげなセミナーに参加することになる。心が弱っている時の甘い誘いは怖いですなぁ…。とはいえ菜々子も結構ヤバい女だった。わたしは人生で「かっぱーん」を感じたことがあっただろうか?いやいや、「かっぱーん」ってなんだよ!笑
木原音瀬『愛の結晶』
「パートナー平等出産推進法」により男性も妊娠出産出来るようになった。男性の妊娠を散々貶していた裕貴が、第二子となる子を妊娠する話。これ、【黒】の方の話なんだ…。いざ自分が妊娠となって怖気付く裕貴。妊娠出産なんて女性だって何回経験しても毎回怖いよ!生理痛だって男性には理解出来ないじゃないかー!でも産まれてくる子どもは天使じゃないかーー!裕貴はまず「生理中の女の子は神様みたいに扱いなさい」を聴きなさい。(え?これ作詞 男の人なんだ!)
中島京子『家猫』
ホラーだ!吐き気がしそうな母親と息子だ!
この息子崇拝の母親にとても似ている人が近所にいたのを思い出した!昔 公園で子どもを遊ばせていたら 孫を遊ばせにきた老夫婦の奥様が、孫の事など旦那様にお任せで延々と息子の自慢話を私に聞かせてきた笑 「こんなお姑さんのいる家に嫁ぎたくねー!」と恐怖を覚え 家に帰ったわたし。玄関別の完全分離型二世帯を建てて住んでいたようだけれど、数年して息子夫婦が出ていったと聞いた…。
(O言O)
【白い結婚】
森美樹『ダーリンは女装家』
白い結婚で1番良かった。
高校時代、大好きなバンドのボーカル青人に 強引なナンパオヤジから助けてもらい「いつも、俺のことずっと見てるよね」と話しかけられた真歩。それから25年。偶然 再開した青人は女装家になっていた。
幸せってこんな日々のことかーって思う。
瀧羽麻子『シュークリーム』
結局惚気かよっ!!ってつっこむ。
結婚式を目前に控えたカップル。夫となる人のシュークリームの食べ方から、ちょっとした事が気になりだし やがて不満と不安が募っていく…。全ては壮大な惚気の伏線かよっ!!!にしても、そんなシュークリームの食べ方 イヤだ笑
成田名璃子『いつか、二人で。』
死ぬ間際まで、死んでからもなお こんなにも夫から愛されている自信がない…笑。そんないい嫁ではないと反省。黒い時期も 白い時期も乗り越えて 最後は穏やかに「幸せの方がちょっと上回る結婚生活だったな」と思えればいいな。
これはめちゃくちゃ面白いという作品はなかったけれど、【黒い結婚】の方が先に読み終えた。
人の不幸はなんとやら…( ≖ᴗ≖)笑 -
第一印象は、大胆な装丁!黒/白で、天地が逆になっているとは。造りの面白さは勿論だけど、結婚生活を人気作家たちがそれぞれ黒い結婚篇/白い結婚篇で描くというテーマも気になって手に取ってみた。全体的な印象としては、とにかく黒のえげつなさが半端なく、白は思ったほど白くはなかったなと。(純白すぎてもシラケてしまうので、ほどよいくすみ具合ではあったけど。)
後味の悪さは別として、どの作品も面白く読めました。白で一番好きだったのは、森美樹「ダーリンは女装家」。ほどよく乙女チックでほどよく斬新で。黒で印象に残ったのは、深沢潮「かっぱーん」。結婚詐欺の話が怖すぎて!結婚に焦る女性の気持ちがこじれすぎてこんな展開になるとはと心底ゾッとした。
全体を通して圧巻の出来だったのは、中島京子「家猫」。語り手を替えながら描かれる結婚の側面。それぞれの思惑が、別の視点によって明らかになる。伏線の回収が見事すぎて…!背筋が寒くなった。
欲を言えば、白も黒と同じ4篇収録にして欲しかったな。黒白交互に読み進めるつもりが、黒の毒が強すぎて白を2篇続けて読んでから、黒4篇白3篇だったことに気付いてバランスが悪くなってしまったという。そのせいもあって黒の方がインパクトが強く感じてしまったかも。でも、今回は半分が初読みの作家さんで、色々新しい発見があってよかった。アンソロジーの面白さを堪能できたかな。 -
結婚についてのアンソロジー。
黒の話がどれも恐ろしくて。黒を全部読んでから白を読むと、なんだかほっとする。
初読みの作家さんも数人いたけれど、どれも楽しめた。
「いつか、二人で。」が好きだったかな。黒を読んだあとだったから余計に、かも。
夫婦でこんなふうに歳を重ねられたら素敵だなと思う。(私はもう無理。)
シュークリームのシューは、食べてほしいなぁ。でもまぁ許容範囲なのかなぁ。ちょっとお行儀悪いけどなー。
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黒の濃度が強めなので、結婚のもつダークサイドに陥りすぎないよう命綱を装着し、お読みください。
くれぐれも、人生のなかでこの本を読むタイミングを間違えないよう、お気をつけください…。では、どうぞ。
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7人の女性作家による「黒い結婚」「白い結婚」をテーマにしたアンソロジー短編集です。
本を手にしたときは気づかなかったのですが、この本は本は表紙から「黒い結婚」の話4本展開され、裏表紙側から「白い結婚」の話3本が始まる形になっています。
しかも、それぞれの側を読むためには、本をくるっと上下逆にしなければならず、「なんて凝ったデザイン!」と驚きました。
「黒い結婚、白い結婚」というタイトルだったので、あまり深く考えずに「黒い結婚」側から読み始めました。
窪美澄さんのお話目当てで手に取ったので、「黒い結婚」のはじめが窪美澄さんの作品で、うれしかったです。
窪さんの他の作品にも共通するような、現実味のある黒さでした。
黒い結婚側でいちばんゾッとしたのは中島京子さんの「家猫」です。
息子の母、息子、息子の元妻、息子の家に住み着いた若い女、という4人がそれぞれ順番に自分の立場からみた過去と現在を語る形式なのですが、その話のかみ合わなさがもう、ホラーです。
特に息子の母、息子、若い女の、自分しか見えず、自分の都合のいいようにまわりを解釈するところに、真っ黒な闇を見ました。
こうした闇は現実には、当事者以外はなかなか見られない部分なので、まさに小説でしかマジマジと見られない真っ黒さだと思います。
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黒い結婚側が短編4本とも、なかなかの黒さだったので、「白い結婚に中和してもらおう!」と、本を逆さまにして裏側から読み始めましたが、「白い結婚」とはいうものの純白な話ではなく、オフホワイト気味の3本だったため、漆黒の黒を中和しきれずに終わりました。
それでも瀧羽麻子(たきわあさこ)さんの「シュークリーム」は、少女マンガのような味わいで唯一純白に近いお話で、この本のなかでいちばん最後に「シュークリーム」を読むことができ、ほわっとした気持ちのかけらを取り戻せたことはよかったです。
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考えてみれば、「黒or白い結婚」というテーマでお話を考えつつ、他の作家さんとはちがうテイストで書くというのは、なかなかの難問ではないかと思いました。
なぜなら、「黒or白い結婚」という方向で考えたときに、読み手が思い描くお話のイメージは、似ているものが多いだろうからです。
その読み手が抱く結婚へのイメージを、よくも悪くもぶち壊しつつ、かつ、出尽くしたシチュエーションを打破してお話を構築しなくてはならないのですから、7人の作家さんの実力は相当なものであることが、ここからもわかります。
ただ、かなり「黒い結婚」の濃度が強めな1冊だけに、自分の人生のなかで、いつこの本を読むかは、慎重に考えた方がよいでしょう。
次にこの本を手に取る方が、結婚のもつダークサイドに取り込まれないことを、祈るばかりです。 -
結婚をテーマにした7人の作家による競作。「人気作家」と謳っているが、読んだことがあるのが、窪美澄のみで、あとは全て初読みの作家さん。でも、抵抗なく読めた。表紙にもあるように、「結婚は墓場か、楽園か」をテーマにしており、黒い結婚の方は、今流行りの「ゲス不倫」や宗教絡みに近い結婚詐欺など、読んでいて、本当に「墓場」と感じた。その分、後から白い結婚を読むと、ほっとするから、良く出来た内容だと思う。
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黒い結婚から読んだ方がいい気がした。なんというか黒い方は本当に黒かった…白い方は幸せな気持ちにさせてくれた。
結婚は墓場。これは自分次第なのだな。
2021.12.24 読了 -
[墨田区図書館]
ブクログのトップに「母親病」が出ていて題名に興味。
子どもの世話に明け暮れて自我が後回し、なくなっている"母親"病かしら??
でも筆者について検索したら、本書や「主婦病」などが既にある。まずはそちらを読んでみよう。
そう思って最初に入手した本書。
「好きなものは後」派の私は、「黒い結婚」から読み始めることにした。
表題通り、「黒い結婚」は普通に表から、でも「白い結婚」は裏表紙から本を天地逆にして読み進める両サイドスタートの綴じ方。きっと本を探す際に困るからだろうから両サイドとも「黒い結婚 白い結婚」と表題そのままにしているんだろうけれど、どうせ背表紙がちゃんとあるんだし、白い結婚サイドは「白い結婚 黒い結婚」にしてくれればいいのに、と思いながら読み始めた。
不思議だったのは、どの話もある種"黒い結婚"でいいのでは?と自分が感じてしまったこと。黒い結婚のあと、やった、これからは白い結婚だ、とうきうきしながら読み始めた最初の話も、穏やかに妻をまつ夫という設定にはにこやかに眺めていられたけれどそのくせ要所要所に暗雲もどきが顔を覗かせる。最後の種明かしでは少し涙組みたくなる感動的な心境を味わったものの、「終わりよければ全て良し」「本人たちが良ければ○」といった、ある種現実的な、「白だけ」ではない、「最後だけ白」とか、黒も混じった灰色的な話だった。
そういう意味では読み終わっても清々しさを感じず、約1wを経て感想を書こうとしても最初の一話以外の白い結婚はすぐには思い出せず、本のイメージとしては「黒と多少黒くないもの、黒だけではないもの」と言った感じで、「白」が印象に残らなかったことが意外で印象的だった。真っ白ではない、ということは、エッセイのようにある種地に足のついた、現実的にあるかもという話に仕上がっていると、好意的?にもとれなくはないが、逆によくありそうな?「水際の金魚」や「家猫」こそが陳腐なドラマ(作られた感がある)のようで、完全にSFチックになっている「愛の結晶」と同類とされそうな、「かっぱーん」こそ現実的に感じた。この感想は単に私の文章やストーリーに対する選り好みなのか???
このレビューを書きつつ、何故だろうと自問自答したが、一つだけ納得した思い当たる点があった。家猫の最初の妻の話同様、"鬱"というか、"暗示"というか、"モラハラ"というか、、、、恐らくそのあたりに自分としては現実感を抱いたのではと思う。約3年前に友人が離婚の原因として挙げた際に初めて耳にした言葉で、それからその事例などを耳にするようになったが、言葉や態度や内容などの"され方"には様々な種類があるだろうけれど、いわば他人からの評価によって生じる"心の不均衡"、それがとても身近な現実と現代社会の問題点として自分の中に根差しつつあるように思う。する方こそ問題なのは否めないが、している側が存在しない(意識していない)かもしれない状態で感じてしまう被害、"被害となってしまう側"の問題も強く感じているからかもしれない。
読んでみて、自分が想像していた、作り物以上にどろどろとした黒と感じたかったまばゆいまでの白ではないことを知り、他の作品を続けて読むことに少し躊躇中。元来"物語"が好きな私にとってこの作者の話はエッセイに近い現代小説のようなもので、もし読むとしたら、娯楽や勉強の気分ではなく、読後に何とも言えない心に濁りを感じる決意で読まなければならないかもしれない。迷うな。
現世では見つかっちゃったんだねぇ(〃ω〃)
現世では見つかっちゃったんだねぇ(〃ω〃)
かっぱーんってなんだろ?!そして『家猫』のリアル話が1番怖い((((;゜Д゜)))
かっぱーんってなんだろ?!そして『家猫』のリアル話が1番怖い((((;゜Д゜)))
かっぱーんはね、いまだに謎 笑
本能のままに生きれば(主に性的行為で)かっぱーんを感じられるらしい...
かっぱーんはね、いまだに謎 笑
本能のままに生きれば(主に性的行為で)かっぱーんを感じられるらしい。
息子大好きな母親、本当に恐怖だった…。嫁はさぞかし苦労しただろうよ( ߹ㅁ߹)