墜落現場 遺された人たち (講談社+α文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062569491

感想・レビュー・書評

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  • 1985年8月12日に発生した日航機墜落事故で、亡くなった乗員・乗客の遺体の身元確認班長による手記の続編。
    身元確認の壮絶さを記した前著『墜落遺体』。本書では、そこでは触れられなかった部分を当事者に取材する形でまとめている。

    章立ては以下の通り。
    第1章 遺族たち
    第2章 生存者たち
    第3章 自衛隊員たち
    第4章 医師、看護婦たち
    第5章 葬送のとき

    前著に比べ章立ては半分程だが、章タイトルを一読するだけでなるほど各章が濃密なのだろうと感じる。
    特に第3章と第5章については、前著でほとんど触れられていない。考えても見れば、墜落現場で様々な遺体に直面し、搬入する作業にあたったのは自衛隊員である。また、遺体が搬入された後、写真で見ると体育館に整然と棺が置かれているが、このお棺は誰がどのように手配したのか。また、身元確認が済み、遺族とともに被害者が家に帰る際も、遺体を乗せる車は霊柩車である。これだって誰が準備したのか。
    この手の部分はほとんど光が当たらない、まさに舞台裏といえるため、非常に重要なことだと考える。
    さらに、遺体搬入は自衛隊員だし、前著でも記されていたが、警察関係者も医療関係者も皆不眠不休で働いていた。でも飲まず食わずなわけはなく、山の案内や炊き出しその他手が届かないところを補ってくれた存在もあったはず。本書では第2章で記されるが、それが上野村の村民であり、ボランティア団体の人々であった。こちらも貴重な資料になると思う。

    この事故は15年、20年とTV局側が節目と考える時に番組が組まれる。大変な事故だったのだから風化させるべきではないし、この事故を知らない世代に知ってもらうためにも番組を放送することは大切なことだと思う。しかしながら、その際に描かれたり、取材されるのはやはり遺族中心となる。当然だろうけど。ただ、本書を読むとやはりあの期間、あの地域にいた皆が大変だったのだとつくづく感じる。

    また、前著でも感じたことだが、遺族は災害や特に事故により家人を失った場合、振り上げた拳の落としどころに苦しむ。だからこそ、本件のように日航旅客機の事故となれば、日航に気持ちをぶつけざるを得ない。私が遺族でもきっとそうなるだろう。その一方で、企業の責任とは何か、どこまで誰が負うべきなのかということも思う。
    その一端として、日航社員のとある行動が記されいる。遺族や自社の責任を想い、退職したのちも個人の意思で御巣鷹山に入り、折れた墓標を新しくしたり、山道を整備するなどしている。ただ、これは個人であって企業ではない。
    本書には記されていないが、日航はJALグループ社員の研修施設として「安全啓発センター」を設置し、展示室には当該事故の直接原因とされた後部圧力隔壁や後部胴体などの残存機体、ボイスレコーダーや遺品等を保管している。ただ、ここは日航だけが利用しているようで、全日空や他の航空会社は利用していないようである。…なぜ共有しようとしないのか。

    本書で唯一残念に思ったのは、第2章にある「たった一人の目撃者」(141頁)の部分。ここでは墜落する飛行機を群馬県側から目撃した方へ取材している。ここから見えたという場所が文章で綴られているのだが、ここは写真が欲しかった。そこから見える景色を一枚、モノクロでいいから掲載するだけでより分かりやすくなったと思う。

  • つくづくプロって凄いと思う。

  • この本を読む前に、著者の前作『墜落遺体~御巣鷹山の日航機123便~』を読むことをおすすめする。この事故自体を知らない人は、インターネットで、この事故についてさらっと調べてみてから読むと分かりやすいかもしれない。
    とにかく悲劇としか言いようのない事故だった。その事故で、残された遺族達や、関係者のもとを著者が訪問し、その後の出来事や、当時のことを振り返る。この事故がきっかけで離婚してしまった夫婦もいれば、当時、身元確認を一緒に担当した職員と、家族同然の付き合いを続け、元気に生きているおばあちゃんもいる。この事故について、さらに深く掘り下げて考えたい人におすすめの著書。

  • 考えさせるものがあった

  • 4062569493 293p  2008・6・25 7刷

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    日本人の記憶に深く刻まれた、520人の生命を一瞬にして奪ったあの大事故。当時、最前線で全遺体の身元確認にあたった著者が、やむにやまれぬ思いで、大事故の裏に現存する、人々の知られざるその後を追跡。落下する機中で書き残された遺書が遺された家族の中に生きているさま、ひとり息子を失った母のやり直し人生…極限の惨状を共有した者だけに語られる心の叫び、魂の声がここにある。

  • (2008.08.14読了)
    去年『墜落遺体―御巣鷹山の日航機123便』という本を読んで泣かされました。同じ著者が、「墜落現場 遺された人たち」という本も書いていることが判ったので、探して購入し、すぐ読むつもりだったのですが、結局、1年後になってしまいました。

    1985年8月12日午後6時56分ごろ、羽田発大阪行き日本航空123便ジャンボ機が、群馬県御巣鷹山の尾根に墜落。乗客、乗員520人が死亡した。生存者は4人だった。(13頁)
    あれから今年で、23年になります。このニュースは、お盆で田舎に帰っていたときにラジオで聞いた覚えがあります。多分、8月13日の昼ごろだったと思います。それからしばらくは、テレビ、新聞、週刊誌をにぎわしました。
    この事故に関する本は、結構たくさん出版され、近年では「クライマーズ・ハイ」という小説の題材にもなっています。
    文庫になっているのを拾ってみると、以下のようなものがあります。20年経過してもまだ出版されています。
    墜落の夏―日航123便事故全記録 吉岡 忍著(新潮文庫)(1989/07)
    日航ジャンボ機墜落―朝日新聞の24時 朝日新聞社会部編集(朝日文庫)(1990/08)
    墜落遺体―御巣鷹山の日航機123便 飯塚 訓著(講談社+α文庫)(2001/04)
    壊れた尾翼―日航ジャンボ機墜落の真実 加藤 寛一郎著(講談社+α文庫)(2004/06)
    墜落現場 遺された人たち―御巣鷹山、日航機123便の真実 飯塚 訓著(講談社+α文庫) (2005/07)
    クライマーズ・ハイ 横山 秀夫著(文春文庫)(2006/06)
    爆発JAL123便―航空機事故、複雑怪奇なり 加藤 寛一郎著(だいわ文庫)(2006/06)
    隠された証言―日航123便墜落事故 藤田 日出男著(新潮文庫)(2006/07)

    「墜落遺体」は、遺体確認現場責任者としての体験記でしたが、「墜落現場 遺された人たち」は、墜落した日航機123便の関係者の人たちに関する本です。
    事故後に書かれた手記の引用や著者が取材してまとめたもので構成されています。
    事故で死亡した方の遺族、日本航空の貨物本部部長・岡崎彬、上野村消防団・猟友会会員、陸上自衛隊第12師団相馬原駐屯地、陸上自衛隊第1空挺団習志野駐屯地、多野総合病院・医師、看護師、日本赤十字病院・医師、看護師、葬儀屋、等実に多くの人たちが登場します。
    現場へ空から行くのが陸上自衛隊の中の空挺団、陸路山を越えて行くのが陸上自衛隊、山の中に詳しいのが猟友会の方々、医師・看護師で現場へ行くのが日赤の方々、運び込まれたけが人を担当するのが病院の医師・看護師、遺体身元確認のために協力するのが歯科医師、放射線技師、遺体の管理は葬儀屋、実にいろんな人が関わり、今後のためのことが考えられていることが分かります。

    著者 飯塚訓(いいづか・さとし)
    (2008年8月24日・記)

  • 偶然見付けたものでしたが別で登録している「墜落遺体」を書いている飯塚氏の作品。かぶる内容も多かったですが、別視点から見られるものや、科学的に証明出来ない不思議な出来事の話等、とても興味深い内容でした。日航機123便関係は様々な本に目を通しましたが(買っていないもの多し)飯塚氏の作品が一番読みやすかったと思います。
    日航が終わってしまった今、この事件も風化されてしまうかも知れません。興味を持ってくれた若い方に「墜落遺体」と合わせて是非読んで貰いたいと思います。

  • 墜落遺体の後日インタビュー集。
    極限状態で残した遺書は涙で読めなくなりました。
    娘を亡くす同じ悲しみを背負ったのに表し方が異なったために別れてしまったご両親。
    遺書に残された「立派になれ」という言葉をしっかり受け止めた息子。
    衝撃を受けるニュースが多々あれど次々に過去になっていく毎日で、それによって当事者だけではなく大きく人生が変わってしまうことを忘れずにいたいです。

  • 御巣鷹山の日航機墜落事故に警察官としてかかわった著者が、遺族や地元住民、自衛官、医師や看護師、葬儀屋など、さまざまな形で事故に関わった人々にインタビューしてまとめた本。あの大事故に関して、知らないことがたくさんあったのだなあと、改めて認識しました。また、著者の飯塚氏はインタビュアーやノンフィクションライターとして確かな実力を持っていると思います。誠実で謙虚な文章に好感が持てます。

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著者プロフィール

飯塚訓
1937(昭和12)年、群馬県に生まれる。日本大学法学部卒業。1960年、群馬県警察官として採用され、以後、警察本部課長、警察署長、警察学校長等を歴任。
1985(昭和60)年、高崎署刑事官在職時に、日航機墜落事故が発生、身元確認班長になる。1996年、退官。
著書に、『新装版 墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便』(講談社+α文庫)、『墜落の村 御巣鷹山日航機墜落事故をめぐる人びと』(河出書房新社)、『完全自供 殺人魔大久保清vs.捜査官』(講談社)、『墜落捜査 秘境捜索 警察官とその妻たちの事件史』(さくら舎)、『刑事病』(文藝春秋)などがある。
現在は、講演活動などを通じて、日航機事故の語り部として、命の尊さを伝えている。

「2015年 『新装版 墜落現場 遺された人たち 御巣鷹山、日航機123便の真実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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