大栗先生の超弦理論入門 (ブルーバックス)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062578271

感想・レビュー・書評

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  • ポイントは3つ。超弦理論は数学的矛盾の解消を根拠とし、実験や観測で証明されてないながらも物理学の統一理論として最有力候補であること。二つ、超弦理論へと至る素粒子論はこれまで湯川・朝永から南部・小林・益川とノーベル物理学賞を受賞してきた日本人がその研究をリードしてきたが、そのバトンを現在は大栗先生が継承していること。そして三つ、超重力理論と超弦理論を交差させることで9次元と10次元の壁は定数の変化で乗り越えられるものであり、これを突き詰めればいつか2次元と3次元の壁を超える理論も夢ではないってこと。イエィ。

  • 「宇宙は本当にひとつなのか」「宇宙はなぜこのような宇宙なのか」を読んで、最新の宇宙論を知ると、最終的にそれが、現代物理学で相対性理論と量子力学とを結びつける最有力候補である「超ひも理論」(この本では超弦理論)と密接に結びついているようだということがわかりました。
    そこに、この本が現在科学書としては異例のベストセラーになっているという記事を見かけたので、早速買って読んでみました。
    最先端の理論を相当がんばって噛み砕いて説明してくれているのですが、それでもやはりかなり難解。9次元や10次元の空間の性質・幾何学を数学的に解くことによって求め、実験的に明らかにされているクオークなどの既知の素粒子の性質との適合性をみることで理論の正しさを確認して行こうとしているようだということはおぼろげに感じ取れましたが、日常体験とはかけ離れた感覚の世界で、もはやSFとの区別がつかない感じです。
    ただ、いかに常識的な感覚外のSF的世界のように見えても、そこから得られた計算結果が現に実験的に確認(または否定)されているというのは、まさに科学。すごいし、おもしろいと思いました。

  • 何とか噛み砕いてわかりやすく説明してくれています。
    が、やはり物理のぶの字にも触ったことのない人にはキビシイかも。
    ある程度の基礎知識があって、へ~と思い、それなりに理解していて初めてスゴイ!となるような。

  • 大変面白く一気読み。
    超弦理論以前から興味あり、いろいろ啓蒙書読んできたが、あまりよく理解できたとは言えなかった。他書では通り一辺倒に触れられている部分も、本書ではたとえ話などで分かりやすく理解できるよう書かれており、とてもよかった。
    また、超弦理論の最前線で実際に研究に携わってこられた方ならではの、理論誕生の歴史や現場の話は、臨場感あふれており、非常におもしろかった。
    それにしても、第2次超弦理論のくだりからの、今の最前線の本理論の話は、「次元は絶対的なものではない」など、想像をこえたビジョンで、目眩がしそうだ。まだまだ、この宇宙(だけでなく多元宇宙だっけ?)には、分からないとだらけだ、と思うと、呆然とするとともに、早くこの宇宙のナゾを解き明かしてほしい。今後の超弦理論の発展に要注目だ。

  •  天才である大栗博司教授が、自身の専門である超弦理論の進展を数式なしに正確な説明を試みたものである。超弦理論は、物質や宇宙はどのような仕組みで存在しているのかを解明するための有力な手段であると見られている。素粒子が点ではなく2次元の弦であると想定して理論構築してみると、現在主流の標準理論よりもうまく説明できる場合が多々あるとのことである。
     難解な学問を一般人にもわかるように、かつ変な比喩にならないような説明は、けっこううまく行っている様に思える。他にも一般人向けの素粒子物理学系の解説書を書いたり講演しているだけのことはある。
     しかし、たとえば回転対称性など、この人には自明なことも一般人には難しく、説明がいまいち力が入っていないと感じられるところもある。もともとが難しい学問分野なのだから、そう簡単に理解できるものではなく、なんとなく分かったような分からないような読後感でも十分なのかもしれない。

  • 幻冬舎から新書で出ている「重力とはなにか」、「強い力と弱い力」に続き、ブルーバックスでも大栗先生の本が出版された。幻冬舎の二冊では、今非常に注目をされている物理の話題が、分かりやすく説明され、楽しくて知的好奇心をそそられる本だった。
    本書は、先生の専門である超弦理論について物理学を本格的に学んでない人にも丁寧に解説し、様々な比喩を用いてイメージがつかめる様に工夫されている様だ。ブルーバックス50周年を記念したこともあるのか、専門領域ということもあるのか、本書は普通の教科書的なものではなく、なんというか熱意の伝わってくるものを感じた。
    書かれている内容については、朝日カルチャーセンターでの講座を聴いていたのが理解の助けとなり、かなりスムーズに読めたと思う。ただ、ゲージ原理の説明を金融市場のたとえで説明されていたので、そういう素養のない自分には少し理解が難しかった。
    本書も先生の手書きのイラストがふんだんに使われており、見るだけでも楽しいと思う。理論物理の最先端に関する一冊、何度でも読み返したい。

  • どこかに感銘を受けたのではなく、書物全体として感銘を受けた。記述が平明かつ本質的。難易度は読み手にもよるが、興味や好奇心が読書の推進力になるのも珍しいかもしれない。科学、物理、数学に対する信頼を培うことに成功しているのも大きな功績だろう。

  •  超弦理論が非常にわかりやすく説明されていて、超弦理論の持つ意味、役割がどういうものなのかイメージできるようになってきた。超弦理論を歴史的経緯とともに紐解いていくことで最終的に、空間、そして時間が幻想であるという大胆な仮説が登場する。一見受け入れがたいこの仮説についても、どうしてそのような仮説が成り立つのかが隙なく説明されていて認めざる得ない。とはいっても分子の振動が温度に繋がるという感覚がようやく受け入れられるようになったぐらいではやはり抵抗がある。分子論のように超弦理論も身近な物になれば受け入れやすくなるのだろうか。
     そして大栗先生の本は本当に分かりやすい。分かりやすくするために数式を使わず文章だけで説明している本は多いが、かえって分かりにくくなっているものが多い。しかし本書は文章だけで説明しているのにもかかわらず分かりやすい。やはり大栗先生が超弦理論の最先端の研究者であることが大きいし、何をどうを伝えれば理解してもらえるのかを理解していて、さらには伝えたいという気持ちが分かりやすさにつながっているように思う。

  • 宇宙は「ひも」でできているという話を聞いたのは30年くらい前、大学生のころでした。

    当時、物理科に籍を置いていた私は、ミクロな世界では、常識に反した不思議なことが起きるという量子力学を習い、実際にトンネル電流を測定する実験を行い、(実感として)確かに素粒子は確率的に世界に存在しているのかもしれないと思うようになっていました。

    そんな私でしたが、物質を細かくこまかくしていくと、最後には「ひも」になるとか、世界は26次元でできているといった弦理論については、「そういう数式が当てはまるだけでしょ」って冷ややかな目で見ていました。

    そう、10年もしたらこの仮説はもっとよい仮説に置き換わるだろうって。
    少なくとも、「ひも」はないよなぁって。

    ★★★

    ところが、本書を読んで何故、点ではなくひも(正確には弦=一次元)でなければならないのか、どうして、空間が9次元(10次元)でないと安定して存在できないのかということが分かったような気になりました(実際は分かってないのですが)。

    空間とは何か、時間とは何か、宇宙の初めに何が起こったのか、、、それは、ほんの短い時間しか生きられない人間にとって最大の興味なのではないでしょうか。

    難解な話をこんなに分かりやすく説明できる大栗先生に嫉妬すら覚えつつ、、、。

  • 最後の方の物理的な内容は正直ついていけなかったが,例え話やそこに辿り着くまでの物理学者たちのエピソードが面白かった

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著者プロフィール

カリフォルニア工科大学フレッド・カブリ冠教授/ウォルター・バーク理論物理学研究所所長
東京大学カブリIPMU主任研究員
米国アスペン物理学センター所長

「2018年 『素粒子論のランドスケープ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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