完全無欠の名探偵 (講談社文庫 に 24-2)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062637787

感想・レビュー・書評

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  • 大財閥の総帥白鹿毛源衛門の孫娘りんの監視役として山吹みはるが高知の女子短大に送られる。この山吹みはるは2メートルの大男で、極めて気のいい男なのだが、相手を知らず知らずのうちに饒舌にしてしまう。喋りまくった後に自分自身で隠された真相に気付くというのだ。一種の超能力だ。この山吹みはると白鹿毛りんが、複雑に絡み合ったある事件を解決するというもの。複雑な関係も最後にはお互いにピタッとはまり込む。これにもちゃんと理由が用意してある。
    作者のデビュー第2作だそうだが、結構力作だ。使われている土佐弁も面白いし、みはるの人柄がいい。シリーズにしても面白かったかもしれない。後の神麻嗣子の超能力事件簿に繋がる作品だ。

  • ’21年3月11日、読了。

    西澤保彦さん、大好きですが…まあ、感想としては、「彼にしては…」という感じでした。ただ、デビュー2作目の作品だそうで…凄いですね。

    様々なエピソードのピースが、最後にピタッとハマる様は、流石!あとがきによると、若竹七海さん「僕のミステリな日常」に強く影響されての作品、らしいですが…。

    僕としては、青磁と朱華房子のその後、なんか気になるなぁ…。

  •  業師西澤保彦のこれは2作目なのだそう。幻想的なfragmentと現実的なscheneの各話を交互に綴る二面構成だが、白鹿毛りんが両方の主人公で探偵役なのだなとはすぐわかる。主内容である高知での現実編では狂言回し的なキーパーソンである山吹みはるの超能力によって隠されているべき事実が次々に読み手には明らかになり、全体の事件が解決に至る。と枝葉を刈り取れば単純な話なのだが、実際にはいずれも変わった名前の登場人物たちがメインの事件やら関係ない挿話やらのあちこちでからみあってややこしいことになっている。ミステリとして読めば主事件の謎や解決は大したものではないが、それより何より土佐弁で繰り広げられるドタバタ劇がなんといっても本作の魅力だろう。地元とはいえうまいものだ。

  •  タイトルからして、メタ的なミステリィかな、と思っていたのだけど、意外とちゃんとした(って言い方もあれだけど)ミステリィでした。ご都合的な部分も多々あったものの、それも含めて作品の味になっているのが巧い。物語としては陰鬱でどろっとしたものなのだけど、それをあまり感じさせない軽妙さで、とても読みやすかった。
     そしてなんと言っても、本作は土佐弁に尽きる。実際に聞いたことがあるわけではないのだけど、血肉の通った方言ってこういうもんだよな、と。ちょっと音で聞いてみたくなった。方言を文字で書き表すのってもの凄く難しいはずなのだけど、いやはや脱帽です。

  • 山吹みはる、彼を前にすると何故か脈絡もなく話をしたくなってしまう。そしてそれによって過去の事の真相に話した本人自身が気付いてしまうという、一風変わった探偵ミステリー。
    勿論、彼自身は自分のそんな不思議な能力に気付いていないし、会話をしている人が自分の過去に思考を走らせているとは思っていないところが面白いです。
    そしてそんな展開で果たしてストーリー展開は大丈夫なのかというと、みはるが派遣された原因でもある白鹿毛りんという大財閥の孫娘、彼女が鍵を握っていました。彼女もある“能力”を持っていてそれによってきちんと物語は進行していくのです。
     少女視点の“鳩の死骸”の話と白鹿毛りんが高知にとどまっている理由を探っていく話と並行して話は進んでいきます。
    登場人物の名前がまた個性的で読むのに難儀しました(苦笑)。

    いろいろと普通とは違うなぁと思いながらも、読み終わった時なるほどと思えたのだからミステリーとしてそこそこ楽しめたということです。

  • 特殊能力を持つ山吹みはる。彼を前にすると人は忘れていた些細な記憶を思い出す。
    その彼を取り巻く人々の記憶と現在の事件が絡み合う。

    登場人物が多い上に一風変わった名前だから、誰が誰か分からなくなること多々。
    あまりにも多くの謎がありすぎて、どう纏めるんだろうと思っていたが、綺麗に纏めていたので読み応えも十分。
    読みながらだいたいのことは予想できたが、満足のいく話だった。

  • 小さな輪が最終的に全てつながるというそんな話。
    一つ一つは大きな事件じゃないのですが
    つながった時はピリッとしました。

    タイトルが良いですね。

  • 訳の分からぬ“大がかりな”事件を調べるりんの元へ訪れた青年みはるは,人の心の奥にわだかまる不審事を当人に推理展開させ,真相を喋らせてしまう“超能力者”だった。みはるの周辺では,浮気,脅迫,殺人と様々な事件に潜む真相が,泉が湧くように顕わにされる。さて,りんの掴んだ“大がかり”な真相の連鎖とは。
    出会った人の話がちょっとずつ関連していて,最後に一気につながる。
    ストーリィはぜんぜん違うが京極堂シリーズのような展開。

  • ずっと積ん読してた本。かれこれ四、五年ぐらい?高知に行きたくなる本。
    ミステリとしてみると、小話がいくつもあって実は繋がってたって構成。登場人物が自分でサクサク謎解きしていくため、こちらが考えてる時間はそんなになかった印象。ただ本全体で扱われる事件に関しては、自分で謎解きできるのかも。フラグメントは必要なのかと戸惑ったが、解説によると必要らしいですね。

  •  予想しない方向性の名探偵。
     これは確かに完全無欠の名探偵だわw

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著者プロフィール

1960年高知県生まれ。米エカード大学創作法専修卒業。
『聯殺』が第1回鮎川哲也賞の最終候補となり、1995年に『解体諸因』でデビュー。同年、『七回死んだ男』を上梓。
本格ミステリとSFの融合をはじめ、多彩な作風で次々に話題作を発表する。
近著に『夢の迷い路』、『沈黙の目撃者』、『逢魔が刻 腕貫探偵リブート』などがある。

「2023年 『夢魔の牢獄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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