- Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062645904
作品紹介・あらすじ
ついに文庫化
あの感動を再び!
胸に「H.SENO」の文字を編み込んだセーター。外国人の多い神戸の街でも、昭和12年頃にそんなセーターを着ている人はいなかった……。洋服屋の父親とクリスチャンの母親に育てられた、好奇心と正義感が人一倍旺盛な「少年H」こと妹尾肇が巻き起こす、愛と笑いと勇気の物語。毎日出版文化賞特別賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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今年映画化ということで、なんと12年ぶりに再読。
小学校の図書館で、上巻表紙の青空と下巻表紙の夕焼けがとてもキレイで目立っていた思い出が。
当時を振り返りつつ、表紙が同じ講談社文庫にしました。
当時はなんの疑いもなく、「Hっておもろい子やなぁ」「戦争ってあかんなぁ怖いなぁ」と思いながら読んでいましたが、批判的なレビューに書かれている通り確かにちょっと左寄りですし、史実と異なる部分もあるそうです。
ですが、これは自伝っぽいフィクション小説だと割り切れば楽しめます。
父・盛夫の質問に対して丁寧に答えてくれるところがとても素敵。
母・敏子といい夫婦だなぁとしみじみ感じました。
Hが頭を使ってお小遣い稼ぎの商売するエピソードやなんでもかんでも興味を示すあたりが、いかにも河童さんで面白いです。
小説としては好きなのですが、いつか自分の子どもに読ませるとしたら他にもいくつか同時期に読んでほしいかな、という感じです。
「永遠の0」なんかといっしょに。
終戦記念日までには下巻も読み終わりたい。
2013/08/05-09詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦時下であるが故に思っていることを素直に言えない理不尽さ、綺麗事ばかり言う大人たちへの不信感…
戦争に関する映画や小説はたくさん見聞きしたが、こんなに親しみを覚える作品は初めてだった。戦争に対して私が感じていた疑問や不信感を当時の子供たちも感じていたのだなと思う。 -
舞台美術家、妹尾河童氏のベストセラー小説。映像化も多数で、最近もテレビ朝日の開局55周年記念企画として映画化されていましたね。
形式は短編連作で、エッセイ風。漢字は総ルビになっていて、小学生でも十分に読める内容になっています。
少年Hの目から見た戦争が、少年のままの声で、分かりやすく丁寧に描かれています。戦争というものが、色濃く伝わる、そんな良作でした。 -
文庫化を待ち望んでいた作品でした♪ 読み応え充分♪
日本人が読んでおくべき、知っておくべき極近い過去の重い歴史を、1人の少年の目から見た史実として“生き生き”と活写している読みやすい文章は、おそらくは もの凄く 価値あるもののように思えます。
作者自身でもある“H”少年の日常は、その時代を実際に生きた当人だからこそのリアリティをもって迫ってくるけれど、決して悲観的ではなく、むしろ楽観的にすら見えてくるたくましさがありありと伝わってきて、ジンと胸にくるものがあり、時におかしく、ほんの少し悲しくもあった少年時代…
H少年の成長を追っていくに従って、否応なくその生活すべてに深く関わってくるあの“戦争”というものを、忘れることなど誰もできないのだなと感じてしまう。世界中を巻き込んだ狂乱の実態は、やはり「知らない」では済ませられるはずもなく、この国で何があったのか、その時この国の1人1人は何を感じ何をしていたのか?
とは言え重いばかりではなく、読み手のことを考えてほぼ全ての漢字にルビをふっているなどの配慮もあり、誰でも手に取りやすくなっている。
本当に心に残る物語でした。 ^^
蛇足ですが、願わくば文部省推薦(今は文部科学省?)図書とかにはしないでいただきたい。子供の頃、『文部省推薦図書』とか『夏休み読書感想文対象図書』とかの言葉を見るだけで、その本はゼッタイにつまらない面白くないのは確実だから読まないでおこう、と本気で思っていた人間として、ささやかな希望ですw -
戦争が表面化していく中で、もがき苦しみでも楽しんで生活していく自伝的長編小説。
少年の淡々とした考え方やいつの時代も子供は子どもらしいとほっこりさせられる。
世の中が暗い時代になっていくのに、少年たちの明るさに救われた。
妹尾少年の友だちや家族もいい味を出していると思う -
初めは何を言っているのかわからなかったけど、でも途中から戦争の理不尽さが描かれていてとても辛かった。少年までもが今では考えられないような困難なことをやらされていることが辛く、僕はそのような人達の苦しみに応えられるほどの努力をしたい
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昭和の親子愛のお話。ノスタルジーも含め好きな内容です。
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多感な肇少年が神戸で経験した戦時の記録
少年Hとは著者である妹尾河童氏の少年時代の本名である肇のローマ字の頭文字”H”をクリスチャンである母親が息子の手編みセーターに編みこんだ事が由来です。
上下巻からなる本作は著者(1930年生まれ)が太平洋戦争を体験した10歳から17歳頃の思い出を小説としたもので上梓されたのが1997年ですので当時の少年Hが体験したであろう出来事はノンフィクションだと思いますが、少年Hが感じたり行動した根本的な戦争に対する考え方は余りにも戦後を知り抜いている現代の我々の考え方に近似しており如何に活発で聡明で哲学的思索をする少年Hだとしても戦後の平和的思想が意図的に主人公の思想として刷り込まれている小説はいささか綺麗過ぎてちょっと不快感が拭えません。
洋服屋を営む妹尾家は神戸近郊で普通の暮らしを営んでいるが当時の都会生活者の大勢の運命と同様に段々にきな臭い戦争へと巻き込まれ空襲に遭い家が消失し父親は消防士、母親と妹は岡山へ疎開し主人公は叔父さんの所で居候し家族バラバラな生活を余儀なくされるが、少年Hは明るく逞しく混迷の時期を過ごして行く。
戦争時代の市井の人々が体験した食料難や強制労働・空襲対策等について少年目線で快活に語る様は当時の暗く不安な社会状況が手に取る様に判ります。少年Hの行動力や繊細な心の動きには感動を覚えますが本小説が総ルビという事もあり勇気・正義・友情等に力点を置く児童小説的な側面も有りそこそこのボリュームある小説にしては読み応え感が薄いのは否めません。