- Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062723411
作品紹介・あらすじ
ダムがあるから大丈夫、のはずがウソだった。役立たずダムが誘発する"水害"を検証する!!アメリカの大ダムづくりを推進し、政・官・財癒着に安住したツケが被災地にまわった。
感想・レビュー・書評
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2004年は各地で洪水の水害が相次いだ。
ダムが万能と信じていた住民は洪水なんてまさに「寝耳に水」
被害は激甚になり、多くの命が失われた。
こういった「ダムの失敗例」を丹念に取材し、著者の天野氏はダムの無益さを訴える。
彼女の主張は土木的にも環境的にも一理とおっているので賛成できる部分がある。
たとえば、現在の日本の河川治水手法は乾燥したヨーロッパで低地にあり、河川水運が発達しているオランダから輸入された考えである。
その方法とは高い堤防を築き、河川をまっすぐにするというものである。
これは降水量の少なく河川勾配の緩やかな河川に適した工法であり、降水量が多く、河川勾配が大きい河川の制御方法ではない。
そのため、2004年の新潟、福井豪雨、兵庫県の豊岡水害の全てで、河川の曲線部で破提し、激甚な洪水になった。
河川を直線化することによって曲線部は減るが、減った分水流のエネルギーはその数少ない曲線部に集中する。
そのため、一度破提したらものすごいエネルギーで洪水が広がるのである。
また、地道な堤防改修などは予算がとりにくく、ダムなど大事業になるほど国からの補助金が取れるため、
都道府県や国土交通省はやりたがるのである。
そのほかにもかなりの例があるが、全般的に通して公共事業が本当に市民の為になっていない現状に警鐘を鳴らしているのが重要な点であると考える。しかし、土木の専門知識の背景のない人には単なる「ダム」反対論にしか読み取れないと思われる書き方なのが少し残念だ。
ダムというのは大陸で一つのダムで流域降水量の何十パーセントもの水を貯水あるいはコントロールできる
ものならある程度効果があるかもしれないが、日本のような一つのダムで数パーセントしかコントロールできない国土にダムを作ることこそが無駄な公共事業といえる。
しかし、本当にダムというのは失敗例だけなのだろうか。ダムというののは100年の技術である。まだまだ人類が適正な使い方を習得できているのだろうか?
成功例を踏まえたうえで、ダムは河川整備のなかでどのような位置付けがふさわしいのか、どのような施設があるべきか、このような議論があって初めてダム撤去が本当の世論になるのではないだろうかと思った。
また、治水に関する知識(堤防、水害、ダム、堰、水利権)の正確な知識がないと本質を見誤ってしまう恐ろしさも感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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