感情教育 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062734349

感想・レビュー・書評

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  • 感情教育という作品の名前通り自分が感情教育をされたように感じた、心に触れられて胸が苦しくなり息ができなくて本を読んでいて久々に自然と涙が流れた
    大抵の恋愛小説は2人が出会うところor既に出会っている段階から作品が始まるが、この作品は多くの部分が2人それぞれの生まれてからの人生を描いているためよりそれぞれの人物に感情移入できたのだと考える
    読んでいてあたらめて自分は男が嫌いだし女が好きだと思ったし結婚に夢を抱けなくなった

  • 不運な運命に翻弄されて生きてきた理緒と那智。大人になって出会っていく二人。あっという間に読んでしまってた。恋愛の話にとどまらず、親子関係、夫婦関係、義理の親との関係、いろんなところで共感できたから、のめりこんで読めたんだろうな。いい本だった。

  • 孤独と飢えに縁取られた苛烈な愛ではなく、互いの隙間を埋められるやわらかな愛を差し出して生きてゆけるようになるまでのお話。美しい文章でした。

  •  この間読んだ『白い薔薇の淵まで』がよかったので、旧作を読んでみた。これもまた、女性同士の恋愛小説である。

     著者が本作について書いた文章によれば、これは私小説なのだという。著者自身と人妻との道ならぬ恋を元にした恋愛小説なのだ。

     全3章。第1章でヒロインの一人・那智の半生が、第2章でもう一人のヒロイン・理緒の半生が描かれる。第2章の最後で2人は出会い、第3章で恋の顛末が描かれるという構成だ。

    《読者の反応よりも、批評家の言葉よりも、彼女の感想が一番こわかった。第一章は懐かしいアルバムを見るように、第二章は自分の知らないアルバムを見るように読んだ、と彼女は言った。第三章はどうだった、とおそるおそる訊ねると、穏やかな春の海が見たくなった、と恥ずかしそうに答えてくれた。わたしは感動して泣いてしまった。今でもこのときのことを思い出すと、泣けてくる。あれほど美しい愛の言葉を、わたしは聞いたことがない。》

     ……と著者が書いているように、理緒は著者自身の、那智は著者のかつての恋人である人妻の分身なのだ。

     レズビアンの恋愛というものを、これほど生々しく、美しく描いた作品を私は知らない。
     『白い薔薇の淵まで』が山本周五郎賞を得たのに対し、本作は野間文芸新人賞の候補にのぼりながら受賞を逸している。そのことが示すとおり、エンタテインメントとしての完成度・洗練度は『白い薔薇の淵まで』のほうが上だ。しかし、ある意味でぎごちない本作のほうが、「書かずにはいられなかった」という切実さが強く感じられて、私は好きだ。

     印象に残る文章がたくさんある。たとえば、理緒が高校生のころ、同じ学校の美少女たちに寄せる思慕を綴った一節――。

    《彼女たちに理緒がさりげなく注ぐ眼差しや賛美の言葉を、それが恋とも気づかぬままに、彼女たちは厚い友情として享受した。視線に温度があることを、さしのべる手に痛みが宿っていることを、くちびるに悲しみが寄り添っていることを、彼女たちはついに気づかなかった。薔薇の葉裏に潜む青虫の孤独など、薔薇にとっては知ったことではなかったのだ。》

     次の一節も、同性愛うんぬんを抜きに、普遍的な「愛ゆえの懊悩」を表現した言葉として胸を打つ。 

    《断ち切ろうとしても断ち切ろうとしてもどうしても断ち切ることのできない那智への気持ちを、友情に変換できないかと理緒はずいぶん悩んだことがある。セックスさえしなければ、自分たちの関係は親友と変わらない。親友ならば恋人と違って別れることはない。恋がいつか終わってしまうかもしれないことをおそれなくてもいいのだ。
     でも、そんなことは不可能だった。セックスなしで那智とつきあうことなんてできなかった。今から那智と親友としてやり直すこともできるわけがない。自分たちは恋人以外の何者でもなかった。心と体で離れがたく結びついていた。それこそが愛だ。愛とは相手の血を吸って生きることだ。魂は肉体のなかにあるのだ。》

     さきに引いた「これは私小説である」という文章は文庫版にも収録されていないのだが、その中の次の一節が、本作の特別な価値を示してあまりある。

    《同性同士のカップルには、子供をつくることができない。それがせつなくて、やりきれなくて、なんとしても二人の愛の結晶を遺したくて、わたしは『感情教育』という小説を書いたのかもしれない。離婚しても子供が育っていくように、二人が別れても小説は残る。彼女を失った今となっては、それだけがわたしの魂を救ってくれる。》

  • あまりにも濃密で、あまりにも美しくて、狂おしいまでに切なくて、
    これを読んでしまったらあまりにも完結されすぎていて、
    恋をする気力も、生きる気力も、表現するという意欲すらも奪われてしまうほど燃え尽きてしまう。

  • テーマが同じなせいかこの人の本は3冊読んだけど全部似てる。
    おもしろいけど1冊でいいかもっておもっちゃう。

  • 初中山可穂作品。これを読んだときに私はいろいろと悩んでいたんですが、これを読んで私と同じような人もいるんだって知りました。悩んでいた私の心に響いた作品。だから、とても思い出深い小説です。

  • これも女性同士の恋愛を基とした小説です。
    3章に分かれています。
    あたしがいちばん好きな中山可穂さんの作品です。

  • これもぐだぐだ。痛い。感情移入しすぎに注意。【取扱いには十分ご注意下さい!】

  • 前の会社で泣きながら読んだ

著者プロフィール

1960年生まれ。早稲田大学卒。93年『猫背の王子』でデビュー。95年『天使の骨』で朝日新人文学賞、2001年『白い薔薇の淵まで』で山本周五郎賞を受賞。著書多数。

「2022年 『感情教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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