シェエラザード(下) (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062736107

作品紹介・あらすじ

日本人が抱く喪失感はこれだったのだ!

弥勒丸引き揚げ話をめぐって船の調査を開始した、かつての恋人たち。謎の老人は五十余年の沈黙を破り、悲劇の真相を語り始めた。私たち日本人が戦後の平和と繁栄のうちに葬り去った真実が、次第に明るみに出る。美しく、物悲しい「シェエラザード」の調べとともに蘇る、戦後半世紀にわたる大叙事詩、最高潮へ。

感想・レビュー・書評

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  • 上巻の内容からは急展開して話が進んでいきます。

    下巻はやはり船とともに海へ沈んでいった多くに方々のことを考えさせられます。日本がどんな状況に置かれているかも分からないまま、言われるがまま、船に乗せられ、なにも分からないまま死がやってきた。

    この事件を、ようやく語ってくれた老人。語りたくない人はたくさんいるのかもしれませんが、やはり戦争を知らない世代になんとかして語っていって欲しいと思いました。戦後、平和と繁栄を手に入れた日本には、戦争に翻弄され死んでいった多くの命が足元に眠っていることを改めて感じさせられました。

  • 太平洋戦争末期、徴用された客船「弥勒丸」とそれにかかわる過去と現在の人々の織りなすストーリー。の、下巻。物語は急展開し、悲劇のラストへと向かっていくのですが、それに敢然と立ち向かう海の男たちがじつにかっこいい!。運命を受け入れつつも、軍の一方的な思惑に組み伏せられることなく、最後まで堂々と誇りを持ち続けるクルーたち。とくに最後のブリッジのシーンは感動モノでした。いや〜、おもしろかった。

  • 上巻に引き続き、弥勒丸に関わった人々の話。沈没船引き上げの話出あるが、話の内容は引き上げではなく、撃沈されるまでの話。
    遅ればせながら、シェラザードを聴いてみよう。果たして悲しい調べなのか、悲しい中に未来が見えるのか…

  • 下巻でいよいよ最悪の結末へと突き進む物語。

    太平洋戦末期、軍に徴収され特殊任務を与えられた、日本が世界に誇る豪華客船の弥勒丸。船乗りは、自分の乗る船を女性に例える。その美しい彼女と運命をともにする彼らの崇高な心に胸を打たれる。

    今を生きる日本人に、「良心」とは何かを切実に訴えかける娯楽大作だ。

    クライマックスで、死出の旅に出る弥勒丸。その航跡を思いながら、泣けてきそうになった。

  • 購入済み
    再読。
    2002年に初版が発行されているのでおそらく20年近く前に読んだ作品だろう
    読み始めてすぐに再読と気がついたが、悲しいかな起承転結ほとんど思い出せず、読み続けてみることに。。。
    天晴れ浅田次郎!
    本当に素晴らしい作品。
    年齢、次節、世界情勢、こちら側のいろんな要素を加えるとこんなに作品にたいする気持ちが変わるものか?と驚く。
    戦に大義も正義もない!の一節が心に響く。

  • ネタバレ何度聴き返したか、重厚感溢れるシェエラザード。この悲哀、幻想、希望を胸に読み進める。連合国軍の弥勒丸に対する撃沈カウントダウンには、大本営参謀達の悪企みが見え隠れする。この参謀達の判断ミスで、台湾沖合で4発の魚雷を受け2300人と美しい彼女も当然の如く沈んだ。これを悲劇と言わずして何を悲劇と言うべきか!間近に迫る終戦、もう少しで彼女も助かったと思うが、残念ながらこの戦局が運命を変えてしまった。また律子のクールな決断は弥勒丸への尊敬と愛情を含んだものだったと理解した。ヨォーソロォー(宜しく、候)。

  • 戦時中に沈没させられた捕虜用物資輸送船を引き揚げる資金提供の依頼が舞いこむ。この下巻で弥勒丸に関わった人々の重い口が開かれる。
    弥勒丸に乗り込んだ陸海の士官はシンガポールで荷物を積んで、上海で下すことしか知らなかった。なぜ内地ではないのか。その謎をシンガポールにいる日本銀行行員が解き明かす。でも彼らは同じ場所にいないから、読者にだけ分かる答え合わせ。侵略戦争ではないことを示すために、大東亜共栄圏の構想が語られる。
    復路の航路変更は危険だ。攻撃を避けるために民間人を乗せる。混血児が乗船できたのは、「混血児」だったからかもしれない。
    留治とターニャはどうなったのだろう。留治は終戦時、生きている可能性が高いだろう。彼に接したスパイたちは留治に「弥勒丸には戻るな」と言っている。ターニャはたぶん留治と同じくいろんなことを聞かれて、用なしなになったらどう扱われたのだろう。留治とターニャはお互いを探しただろうか。せめて土屋と留治が一緒にいた事実を律子たちに語ってほしかった。
    米海軍は、弥勒丸を沈めるために有効な攻撃方法をどう知ったのか。海軍士官が機関室で機関長に弥勒丸の装甲の秘密を聞いたとき、留治もターニャも一緒だった。このふたりがシンガポールで弥勒丸の秘密を自慢話として「無邪気」に語っても不思議ではない。

    上巻同様、ほほえましいエピソードには声をあげて笑ってしまった。
    ー気難しい堀少佐が夜中にこっそりジャズを聴いていた場面。スピーカーのスイッチを切り忘れて艦内放送されてしまった。
    ー言い争いの場面で、ベーカーが焼き立てのクロワッサンを持ってきた。「珍しい」と早速手を出す船長、「何ですか」と見たことない形のパンを手に取る海軍士官、ホクホクのパンを口に含んで笑顔になる陸軍士官。美味しいものは人を幸せにする。

    船内にいて緊張の時を過ごし海に消えた人たち、運よく助かって、助かったがために苦しい思いをした人たち、陸にいて弥勒丸に関わり大きな後悔を胸に抱えた人たち。シンガポールから船を占拠するように乗り込んだ陸軍軍人が滑稽だ。弥勒丸は不沈船とでも洗脳されていたのだろうか。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    弥勒丸引き揚げ話をめぐって船の調査を開始した、かつての恋人たち。謎の老人は五十余年の沈黙を破り、悲劇の真相を語り始めた。私たち日本人が戦後の平和と繁栄のうちに葬り去った真実が、次第に明るみに出る。美しく、物悲しい「シェエラザード」の調べとともに蘇る、戦後半世紀にわたる大叙事詩、最高潮へ。

  • 第二次世界大戦中、敗戦色濃厚な日本の悪あがきに付き合わされた2千人の人たち…モデルはいてももちろん内容はフィクションだけど、こんなふうに、何が何だかわからずに命を落としていった人たちばかりだったんだろうな。沈んだ豪華客船を引き上げる駆け引きと、なぜ客船が沈んだのかのミステリーが交互にやってくる、そんな話。

  • シンガポールに寄航する弥勒丸には二千人の帰国者を乗せると言う。安導券を持つ弥勒丸は安全な航海が保障されている。シンガポールで積み込まれる積荷は軍機だという。それに二千人にも上る帰国者。軍はシンガポールが攻撃されると宣伝してるが、軍事的に見て、それはありえない。これらのことは何を意味するのか。小笠原機関に出向している土屋には分からなかった。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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