- Amazon.co.jp ・本 (704ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062736329
作品紹介・あらすじ
私の見た「昭和二十年」の記録である。満二十三歳の医学生で、戦争にさえ参加しなかった。「戦中派不戦日記」と題したのはそのためだ(「まえがき」より)-激動の一年の体験と心情を克明に記録した真実の日記。
感想・レビュー・書評
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こんなに透徹した、現実的な眼でみた昭和20年を読めるのは、本当に有難いこと。そのような資料的価値とともに、作者が心に抱える悲しみ孤独にも魅かれてしまう。「この不幸がやがておれの武器となる、とー。」橋本治の解説がまた過不足なくて凄い。文中に註や解説が全然無いので、この解説を先に読んでも良かったな〜
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どういう読み方をするかで、どう感動するかが決まってくるような60年前の日記である。
60年とは遠い昔だし、戦時という異常な状態の記録でもある。私としては私が幼かった時代を知りたかった。戦争も末期、そして終戦と激動の一年、冷静に事実を記してあるその体験をくまなく知ることは出来た、がそれだけではなかった。
毎日のようにB29の爆撃を受けて、いつ死ぬかもしれない東京の一医学生の青春だからではない。貧しい孤独な青年の内的生活の豊かさに感動してしまったのだ。
空襲警報で不安な眠れない一夜を過ごしたとしても、配給制度で食糧の不足、お腹がすいてる日でも、日記の終いには何々を読んだと淡々と括ってある。ツルゲーネフだったり、モーパッサン、チェーホフだったり、医学書、哲学書だったり、と読んだ本の数々に本好きとして感激。(どのようにして本を手に入れたのか?)
当時のラジオ、新聞の報道も克明に日記に記されている。ラジオからの「敵機来襲」「空襲警報」「艦砲射撃ある」こんなに情報があったのかと驚く。新聞から知ったる歴史的事実も間違っていない。いつの時代も見る目に曇りなければ真実に近づくのだという感動!
このような激動にもまれながら、深く、真摯に、率直に考えることの出来た一青年の日記は今でも立派に通じる。風太郎青年の生い立ちと内面の悩みが、この日記に色濃い憂愁をかもす。
孤独で内に秘めた想いが沸々と湧いて思いのたけを述べたく、でも忸怩たる青年は現代もたくさんいるのだ。否、時代が相も変わらずなのかもしれない、というのが杞憂であってほしい。
日記に書かれている田舎の風景描写が涙の出るほど美しい。ところどころの人物活写におかしみがある。
やはり山田風太郎の日記だった。一読の価値あり、いえ再読もすべき。 -
戦況が悪くなる日々の中で、
毎日著者が本を読んでいて、その作品名を記録していたのを
見るのが面白かった。
戦後、文化面で花開いた文化人が
戦時下何を思っていたか を知りたいと思う。
コロナ禍を経て、新しい世界で新しい文化が花開くことを期待している。 -
これほどまでに、戦時中の生活をリアルに知ることが今まで無かったため、あらゆる点で衝撃が大きかった。思想、物資、貧困…
都心ではB29の襲撃が毎日のように起き、それに対して慣れてしまっていたり、芝居を観に行くなど娯楽もあったこと、冗談を飛ばし合うユーモアの溢れる日常。。。
もちろん山田氏が戦争に加わっていないことや医学生という身分故に、戦線に立っていた兵士とは雲泥の差があるだろうとは思うけれど。。
終戦直前の精神状態など決死の覚悟に脱帽したし、恐怖を感じた。
しかし大層なボリュームだったため読了までにかなり時間がかかった。
解説を読んで、初めて腑に落ちた部分もありもう一度読んでみたいが、あのボリュームを前になかなか読む気力が起きない(笑)。 -
『敗戦して自由の時代が来た、と狂喜しているいわゆる文化人たちは彼らが何と理屈をこねようと、本人は「死なずにすんだ」という極めて単純な歓喜に過ぎない。』という文が印象的でした。
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これ読んで山田風太郎が大好きになった。天才。
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作者の小説以上に面白いと感じる。
特に、執筆時の作者と同年代で読んだ時には圧倒された。