新装版 戦中派不戦日記 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (704ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062736329

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  • 3.76/353
    内容(「BOOK」データベースより)
    『私の見た「昭和二十年」の記録である。満二十三歳の医学生で、戦争にさえ参加しなかった。「戦中派不戦日記」と題したのはそのためだ(「まえがき」より)―激動の一年の体験と心情を克明に記録した真実の日記。』

    冒頭
    『 まえがき
    ――私の見た「昭和二十年」の記録である。
    いうまでもなく日本歴史上、これほど――物理的にも――日本人の多量の血と涙が流された一年間はなかったであろう。そして敗北につづく凄じい百八十度転回――すなわち、これほど恐るべきドラマチックな一年間はなかったであろう。』


    『新装版 戦中派不戦日記』
    著者:山田風太郎
    出版社 ‏: ‎講談社
    文庫 ‏: ‎704ページ
    ISBN‏ : ‎9784062736329

  • 読売新聞2010125掲載
    毎日新聞2011130掲載 評者: 関川夏央(作家)
    毎日新聞2016814掲載 評者: 古川隆久(日本大学教授・日本近現代史)
    日経新聞2021828掲載 評者: 上野千鶴子(社会学者)

  • まだ読んでる途中だけど相当面白い。小さな物語のリアリティがふんだんに詰まってる。風呂屋の話など、好き

  • 深い洞察力で見つめた昭和20年の1年間。後に作家となる医学生の日記は貴重な一次資料。

    歴史は後世により書き変えられていくことがある。学校で習いドラマなんかに出てくる戦前、戦中の日本。まるで8月15日を革命が起きたかのような歴史観は全く違ったことが本書から良く分かる。

    日本国民は政府や軍閥に騙されていたわけでもなく、自らの意思で戦争に協力している。日本の勝利を狂信的に信じるところはあるが、ことのほか情報も伝えられている。原子爆弾、ジェット戦闘機などウワサではあっても一般人に伝わっていることが分かる。

    昭和20年という一年間。作品化を前提としていない、装飾のない記録だけに貴重であろう。

    現在はモーニングでマンガ「風太郎不戦日記」として連載されているようだ。こちらも気になる。

  • 山田風太郎 「戦中派不戦日記」 昭和20年 敗戦前後における自分との対話という感じ。当時の著者は 戦争肯定、玉砕上等、復讐のための復興 という思想を持っている


    この本の命題は 著者の言葉「戦争の前は憤怒なり。戦争の中は悲惨なり。戦争の後は滑稽なり」にあると思う。

    著者は戦後の何に滑稽さを感じたのか 特定できなかった
    *死ぬべき世代(戦中派)である著者が 生きようとする姿?
    *戦争責任をすべて軍人に押し付けた民衆の姿?
    *科学を勉強し 軍事力を上げ 再び戦おうとする姿?


    8/15 の日記 「帝国ツイニ敵に屈ス」の一言のみ
    *ショックの大きさ、自暴自棄の心情を感じる
    *戦争=科学→戦争の敗北=科学の敗北
    *負ければ賊軍〜何を言われても耐えるしかない


    書評も面白い
    *菊池寛 〜職人〜芥川の小説より妖気あり。皮肉に滑稽あり、妖気は 滑稽より発する
    *露伴「風流微塵蔵」登場人物の過去、運命を描きつくし〜壮大なる人間の城を描く

    「中間に立って動かざるものかえって 幸福なる人生を獲得する」

  • "昭和20年1月~12月までの日本が太平洋戦争敗戦へといたる時代、山田風太郎さんが記した日記。当時の雰囲気が現実感を伴って伝わってくる。われわれは終戦の日がいつだかも、原爆が投下された日がいつということも知った上で日記を読み返していることになる。自分がその時代を生きていたらどんな行動をしていたか?いろいろなことに思いをはせる。
    敗戦後寒い中寝床を暖めるものがなく、食べるものもなくても、山田さんは本を読んでいる。借りものなのか購入したものなのかわからないが、とにかく本を読み続けている。とてつもない量の本だ。
    驚くと同時に、平和な今の時代ではもっともっと学べる環境にあるはずであるが、当時の山田さんの足下にも及ばない。ねじを巻かないといけない気持ちになり背筋が伸びる。"

  • 再読
    最高潮の東京空襲から大転換へ
    昭和二十年で作者が消えてなくなるわけではないのだけれど
    その後も全部読んだあとで読み返すと
    この日記作品の面白みは急速に薄れていく
    個々人の紆余曲折はありながらも戦中の日常から
    戦後の平和な日常への切り替わり
    戦後生まれだからと戦中を暮らす人々と何も変わらない一方で
    時代は確かに誰かが動かして転がっていく
    自分は平均だとは思っても平凡だとは思っていない皆がつくる大衆がそれを映しているのであり
    そのまったく理性的でなく流れ行く先徒ならぬ景色は
    それでいて文明技術の変化を表層直ちに受ける
    一身にして二世を生きるような転換期にそれは見えるようであり見えないようでもある

  • 名著である。

  • 1月の初めの日記や8月14日の日記を見ると、愛国心のかたまりのような印象を受けかねないが、むしろ他の山田作品から推してどちらかというと人生・人間世界に対してはニヒルな?、シニカルな厭世的作家と思っていたので、意外であった。むしろこの一時期の愛国的心境は当時の青年がすべからくかかっていた熱病のごときもので、いかに山田風太郎と言えど例外ではなかったものと思われる。解説にもある通り、ややはすに構え客観的で冷徹な視点と熱情的なものとが混在している。
    山田風太郎の他作品との比較は非常に興味深いものとなると思われる。

  • 【目次】
    まえがき [003-007]
    戦中派不戦日記 009
    昭和二十年一月 011
    二月 057
    三月 093
    四月 143
    五月 191
    六月 265
    七月 319
    八月 361
    九月 457
    十月 537
    十一月 601
    十二月 637
    あとがき(昭和四十八年二月) [681-683]
    解説(橋本治 底本より再録) [684-697]

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著者プロフィール

1922年兵庫県生まれ。47年「達磨峠の事件」で作家デビュー。49年「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で探偵作家クラブ賞、97年に第45回菊池寛賞、2001年に第四回日本ミステリー文学大賞を受賞。2001年没。

「2011年 『誰にも出来る殺人/棺の中の悦楽 山田風太郎ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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