日本国債(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.46
  • (25)
  • (50)
  • (104)
  • (9)
  • (2)
本棚登録 : 496
感想 : 40
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062738873

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 景気浮揚策も投資呼び込み策も構造改革策もなしに議員定数削減なんていう精神論だけで相変わらず結論なしの消費税論議のこの頃、そういえば幸田真音で昔、話題の「国債」の本があったが、結局読まずにいたことを思い出しBOOK OFFへ。10年近く前の経済小説なんて古すぎるはずなのに問題は更に大きくなっているから殆ど古くない。むしろ、欧州金融危機やPIIGS問題などで国債の関心が高まっているが、なぜ日本国債なんてリターンのないものを買う人がいるのか勉強するつもりで読んだが面白いな~。
    「未達だ!国債入札が割れた!」「日本は破産するんですか?」「この国の資金調達は薄氷の上に成り立っているんだ。いつその氷が割れても不思議ではない。」「日本の国債ディーラーなんてなんの利回りのないのに、財務省にまずいものを黙って食べさせられている家畜みたいなものだ。」
    「政府が無能を棚に上げて、馬鹿のひとつ覚えみたいに金利を低く抑えるから、スワップ市場で円を調達した外資勢が思い切った抜きで儲けるばかりだ。日本人が我慢して市場を支え、海外勢においしい設けを提供しているようなもの。」
    おかしな国の経済合理性のない取引を痛快に切って捨てている。そもそも日本民族にそもそも経済合理性がないんだろう。嫌いじゃないが。小説としては後半がどうみてもインサイダーでかなり情緒的になったのが少し残念か。
    いくら借金しても大半が国内で持っているから大丈夫だなどともっともらしくのたまう政治家やアナリストがいる中、円が暴落する時はこんなことかもしれないなと思う。その時は給料の一部を国債にして買い支えてくれとでも言うのかな。

  • トレーダーに抜擢されたヒロインを中心に、国際暴落をめぐるサラリーマン反抗記かと思いきや、その裏では政治権力の影もちらほら。というわけで、話の筋は大人向けの少女漫画チックなキャラクターとストーリーで好き嫌いが分かれるところでしょう。しかし、国債という地味なモチーフ選択と実際のディーリングの現場の描写などは、国債について関心を持って学ぼうとする方の入門書としては最適だと思います。

  • チャットを信用して重要ツールとして使っている点や実行犯が小さいことにちょっと不満。でも面白い。今後幸田真音を続けそう。

  • 日本国債のディーラー達を描いた経済小説。98年~2000年に執筆した小説を2003年に文庫化する際に、03年の状況に合わせて数値や状況を書き換えたそうだ。
    国債を扱うディーラーの世界を知らなかったので、解説の児玉清さんじゃないが「とてもためになった」。思わず、ネットで関連情報を読みながら、小説を読んだ。
    小説で書いた「未達」が2002年に実際に起ったこと、2005年にシ団が廃止されプライマリー・リーダー制度が導入されたことも初めて知った。日本国債に多くの種類があり、財務省国債課がクーポンを決めて売り出すと、ディーラーが指値をして買いを入れる。手元の国債や先物取引も絡んで、日本国債だけで複雑な市場ができている。
    ほとんどを国内プレーヤだけで売買する閉塞的な市場だから、シンプルな業界かと思っていたが、そうでないことがわかって興味深かった。

  • 【日本国債 下】 幸田真音さん

    多希は「牛熊クラブ」のホームページ開設者を調べた。
    開設者は尾張証券という小さな証券会社に勤めている
    久保井という若いトレーダーだった。

    多希は彼を訪ね、今回の未達事件について「牛熊クラブ」
    という親睦団体が深く関与しているコトを知る。

    牛熊クラブに名を連ねるトレーダーは国債市場では名を
    馳せた優秀なトレーダーたちだった。

    彼らは一様に今の国債市場のシステムの不備を嘆き
    危機感と遺憾を持っていた。

    多希自身も彼らが結束すれば、マーケットを人為的に誘導
    するコトも決して不可能なコトではないと思っていた。

    そして、未達は起きた。

    この未達は彼らが望んで起こしたコトだったのだろうか。



    佐島が調べている証券会社と官僚の癒着は調べが進むうち、
    ある大物政治家の名前が浮かび上がってきた。

    この度の未達事件にに大物政治家はどう関わったのか。

    また、この未達により誰が利益を得、経済はどう
    動いたのか・・・



    よかったです。面白く読ませていただきました。

    単純なプライドから未達を画策し、
    より狡猾な人たちがそれを利用し一儲けをたくらむ。

    だけども、一旦動き始めたマーケットはその思惑を
    こえた動きを見せる。

    なんとなく、今回の原発の事故を想像してしまいました。
    制御出来るつもりが、勢いがつくと手に負えなくなる。

    むやみやたらと増発する国債とソレを担う次の世代。
    色々と考えさせられる小説でもありました。(^^)/

     

  • 一気に読んだ。日本の借金国債について初めて触れた。少しは分かったような気がする。膨らむ一方の日本の借金。いつ誰が返すのだろう。

  • このかたの本はスピード感があった面白いです。

  • 27冊目。

    日本国際をテーマに或る事件が繰り広げられ、政治家・マーケタの思惑による意図的な未達(国債の発行額に入札額が達しない)と、それを契機に日本がプライマリー・ディーラ制に転換していく...という内容の経済スリラー。

    「国債って何?」っていう自分も愉しんで読むことができました。日本国債のクーポンが外債に比べて低い/発行量が多い理由にも言及している良書。

    『日本銀行券』も読んでみたいと思います。

  • 内容は、日本が毎月発行している国債。
    これはシンジケート団という国内金融会社に割り当てられる部分と
    競争入札の部分があり、割合が2:8だが(今は知らないけど)
    競争入札の8割の部分が想定以下の購入量(未達)で日本大混乱
    っていう話。

    おれとしては国債が暴落したらどうなるのか、
    メカニズムと起こりうる生活への影響みたいなのを知りたかったんだけど
    あんまりわからなかったかな。

    国債未達⇒日本の経済への不安⇒円売り&日本株売り⇒財政不安
    ⇒アメリカ国債売るのでは?⇒アメリカドル売り&アメリカ株売り&国債売り
    っていうような流れで描写がなされていたんだけど
    タイトルと違ってそこはメインポイントではなかったらしい。

    いかにして未達は(小説の登場人物が組織的に)引き起こされたのか
    という事件解決モノでした。

全40件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1951年生まれ。米国系投資銀行等で債券ディーラー、外国債券セールスを経て、1995年『小説ヘッジファンド』で作家に。2000年に発表した『日本国債』は日本の財政問題に警鐘を鳴らす作品としてベストセラーになり、多くの海外メディアからも注目される。2014年『天佑なり 高橋是清・百年前の日本国債』で第33回新田次郎文学賞を受賞。主な著書は『日銀券』『あきんど 絹屋半兵衛』『バイアウト 企業買収』『ランウェイ』『スケープゴート』『この日のために 池田勇人・東京五輪への軌跡』『大暴落 ガラ』『ナナフシ』『天稟(てんぴん)』のほか、『マネー・ハッキング』『Hello, CEO.』『あなたの余命教えます ビッグデータの罠』など、時代に先駆けてITの世界をテーマにした作品も多い。

「2022年 『人工知能』 で使われていた紹介文から引用しています。」

幸田真音の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×