- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062757416
作品紹介・あらすじ
「あたしは絶対、人とは違う。特別な人間なのだ」-。女優になるために上京していた姉・澄伽が、両親の訃報を受けて故郷に戻ってきた。その日から澄伽による、妹・清深への復讐が始まる。高校時代、妹から受けた屈辱を晴らすために…。小説と演劇、二つの世界で活躍する著者が放つ、魂を震わす物語。
感想・レビュー・書評
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「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」
1.著者 木谷有希子氏
知るひとぞ知る劇作家。
作品は2000年に舞台化されていて、小説が2005年。
2.作風
タイトルは激しく挑発的。
内容は、読者に対して挑発的ではない。
色彩に例えると黒または灰色のトーンである。
そう、明るい兆しが一切ない。
3.テーマ
人間の内面にある保身、プライド。
それに気づかず大人になった人間の顛末を描いている。
4.読み終えて
人間はどんなときに「絶望」をするのかと考えた。
同じく、分をわきまえる、足るを知るについても考えてみた。
わきまえる、足るを知るには、自己と向き合う/認識する時間づくりが必要となる。
それは、どれだけ歳を重ねても無いよりは、あった方が無難なのだろう、、、。
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表紙、山本直樹……というよりも私にとっては森山塔。山本直樹=森山塔、塔山森というのは小学生の頃に知った。昔、『くりいむレモ(自主規制)
本谷有希子の本を読むと、どうしても国語の先生のような添削目線で見てしまってイカンなあと思う。マンスプレイニング的だし、考えながらだとなかなか作品に入り込めない。
『腑抜けども』の映画版は面白かったが(もうあまり覚えていない)、小説版の方はあーみん的なドライヴ感というか勢いが足りないなと思った。映画はワンショットで情景がわかる、情報量が多いが、小説だと言葉をいくつも並べて描写しなければならない。そうすると、勢いがなくなる。たぶん上手い小説家は、文章のテンポをコントロールしたり、話に引き込む表現や描写のテクニックが上手いはず。この頃はまだ熟練していないのでは。『進撃の巨人』の最初の頃、絵が下手すぎて立体機動が何やってるかわからんかったのを思い出した(もちろん本谷有希子はそこまで下手ではない)。アニメの方が絵が良くて面白いという逆転現象。
だから、この作品は演劇・映画・アニメ・漫画などヴィジュアルがある方が向いているのかもしれない。
あと文章がおかしいところが2箇所ぐらいあって「俺の読み方が悪いんか?」と5分ぐらい悩んだ。たぶん推敲or校正ミス。
という感じで序盤の(田舎の)情景描写のところで話に入り込めず、あまり面白くなかった。しかし、途中の澄伽の手紙の章はめちゃくちゃ面白かった!こういう人は実際にいる。私の知り合いを何人か合体させると、澄伽が出来上がると思う。
私が学生の頃以降、やっぱり病んでいる人がけっこういた。顔見知りで挨拶したり世間話する程度の知り合いの女の子から、急にリスカ痕(まだ治っていない)を見せられたこともある。私は痛いのとか血とか苦手なんだから、見たくないっちゅーの笑。
『腑抜けども』は同じくメンヘラ姉妹ものの『江利子と絶対』が原型のひとつだと思う。この姉妹のキャラは、どちらも本谷有希子の中にある人格なのではと。逆に、お兄ちゃんの宍道の方はキャラ設定があまりリアルじゃない気がする。扱いが雑というか、カマキリの雄みたいな感じ笑。
妹の清深は観察者で、マンガが本谷有希子の小説などに相当する。自分で自分のことを客観視している感じ。
これを読んで連想したのは熊切監督の『ノン子36歳(家事手伝い)』や、セロン様主演&ディアブロ姐さん脚本の『ヤング≒アダルト』などだが、どちらもこれよりだいぶ後の作品。これ以前にこういう話があったか、よくわからない(真魚八重子さんの映画本に色々紹介されていると思う)。漫画・アニメだと『彼氏彼女の事情』で、本谷有希子が出演している。庵野秀明は、アスカ、カレカノ、『式日』と、似たようなメンヘラ少女をずっと描いていて、たぶん影響を受けていると思う。
閉鎖的な田舎が舞台のものは昔からあって、それこそ横溝正史の金田一シリーズなんかもそうだと思う。ただ、この作品は田舎という舞台そのものはあまり重要ではなさそう。
もうひとつは変人家族もので、良い例えが思いつかないが『逆噴射家族』など。こっちはお父さんが……ってのが重要だった。当時はベースにまだ、家父長制的なお父さん像があったから。
しかし『腑抜けども』の時代、すでにそういうのは崩壊しきった後。この作品は、両親が死ぬところから始まる。
内容はそんなに面白く感じなかったが、高橋源一郎の解説がとても良かった。私は前作を読んで「本谷有希子は妙に安部公房に似ている」と感じたが、それに近いことを書かれていて驚いた。高橋源一郎さんの書いてることが正しいかはわからないが、私の感覚を的確に表現してくれている。本の解説で泣いてしまったのは初めてだ。 -
本谷さんに出会った最初の作品。
狂気じみた女達が気持ち悪さも感じさせながら、ポップ&リズミカルに描かれていて非常に面白かったです。
狂気の中に漂う哀愁、みたいなものを感じるのだけれど、そういう尖りきって、周囲を寄せ付けないように見せている女性というのは結局、自分の中に内包されている弱さみたいなモノを包み隠すために狂気というベールを纏っているだけなのかも、そう感じさせてくれる小説。 -
佐藤優さんのオススメで読みました。少々エグい表現もありましたが、人間が持つ病んだ部分をテレビドラマを見るように描いた作品です。
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腑抜けども、悲しみの愛を見せろって、誰の台詞だったんだろう。
それが分かったら、もっとこの作品を理解できるような気がするのに。 -
なんというか独特で、肌なじみの悪い小説だった。俯瞰するような視点でしか読めなかった。あとに何も残らない。あくまでも、私にとっては。
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三島賞候補となった本谷有希子の原点とも言える作品。
相変わらず自意識過剰なメンヘラ女子を中心に据えて、これまたキャラ立ちした周囲が、どんどん巻き込まれていく。まず舞台ありきなので、これも章ごとに主人公が変化しつつ、多面的に物語を紡いでいくが、中心にいる姉の在り方は終始変わらない。この極端な自信過剰と自己を客観視できない哀れさは、過剰にデフォルメされているのだが、自分もこうした人とは、一定数出会っているし、こういう人とは本当に話が通じなくて困るんだよなあ、とあるある。しかし、女優やアイドル目指す人なら、ある時期このぐらいのメンタリティーが必要なんだろうし、どこからそのパワーを作り出すのか、などと思いを巡らせる。
今の時代なら、蹴落とすのではなく共存していく、が健康的な目標の立て方のような気も。。 -
初めて本谷有希子作品を読んだが、中毒になりそうだ。これはホラーかコミックか。随所に散りばめられた、あるある的な毒とグロいほどの細かい描写。今度、舞台に行こう。