文庫版 百器徒然袋 風 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 2939
感想 : 201
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  • Amazon.co.jp ・本 (842ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062758628

作品紹介・あらすじ

調査も捜査も推理もしない、天下無敵の薔薇十字探偵、榎木津礼二郎。過去の事件がきっかけで榎木津の"下僕"となった「僕」は、そのせいで別の事件にも巻き込まれてしまう。探偵を陥れようと、張り巡らされた罠。それに対し、榎木津の破天荒な振る舞いが炸烈する!「五徳猫」「雲外鏡」「面霊気」の三篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 今作も榎木津ワールド一色の世界。

    ますます榎木津探偵の魅力にハマってしまった。

    今回は巧妙に仕掛けられた罠にどう立ち向かうのか、これまた榎木津探偵はもちろん下僕ズを含めて随所に笑いあり、スカッと爽快ありで満足。多々良センセイとの迷惑のかけ方の違いを分析している中禅寺に妙に納得し、下僕の本島くんの、毎回果てしないマイナス思考と共に榎木津ワールドの渦に巻き込まれていくのも面白い。

    益田さんたちの下僕ズ トークが前回よりもツボだったな。
    ちょっとだけ垣間見れた榎木津探偵の優しさも良かった。

    薔薇十字探偵メンバーあっての京極堂、面白い。

  • 薔薇十字探偵社を標的にえのさんの下僕たちに巧妙に仕掛けられた数々の罠。

    声に出して笑うくらい楽しくひたすらおもしろかったです。「榎木津好きでしょ?」と友達から回って来たのですが、読み始めてすぐに違和感。あれ?第2弾ですよね?これ。
    まず本島くんを知らなかったし、わからない事件もあったけれど、特に問題もなく読み進められました。第1弾も必ず読みます。

    意外にもこっそり優しいえのさんが出て来たりするのもよかったです。
    神無月との対決は何度も読んでしまったし、最後のあの方の登場もすごかった。
    楽しいお話だけどどれも実は結構凝っていて大きな事件でした。
    個性的な下僕たちはこれからも事件に巻き込まれていくのでしょうねw


  • 【収録作品】五徳猫 薔薇十字探偵の慨然/雲外鏡 薔薇十字探偵の然疑/面霊気 薔薇十字探偵の疑惑
    ノベルスのほうを読む。相変わらずの暴れっぷりが小気味いい。ちょっと本島が気の毒にもなるが、ラストがきれいに収まって、なんだかずるい気もする(褒めてる)。

  • 榎木津礼二郎率いる薔薇十字探偵社のドタバタ劇の第二弾。
    とにかく何か事件が起きる度に榎木津が高笑いしながら悪い奴らを(物理的に)懲らしめるという非常に分かりやすいタイプの話。

    前回は主人公の「僕」が榎木津と出会ったがために様々な事件に巻き込まれ続けていたけれど、今回はそれを踏襲しつつ巻き込まれ具合もパワーアップ。
    もうさ、ここまで来るといくら彼が「違うんです!仲間じゃないんです!」って言ったとしても絶対に誰も信じてくれないと思う。
    もう立派に仲間だよ君は、おめでとう(おめでたいのかは分からないけれど)!
    遂に噂だけが独り歩きしていたあの人物が出て来たりしてサプライズもありましたね。

    そしてこの話を読むと榎木津の新しい一面を見ることが出来るというか知ることが出来るというか。
    邪魅の雫を読んだ時に「あれ?榎木津ひょっとして?」と思ったことを京極堂が教えてくれたような気がしました。
    そうだよね、榎木津ってただただ破天荒なだけの人じゃないよね?っていう。
    よく考えたら育ちはめちゃくちゃいいはずなんだもんなぁ、榎木津見てると忘れちゃうんだけど。

    今回もケラケラ笑いながら読んで、「あー楽しかった」と本を閉じた後に思ったけれど……割と扱ってる事件大きかったよね?
    五徳猫とか特に大きかったよね???
    榎木津が中心にいるとそんな事すらも些事に思えてしまうから凄い(凄いのか?)。
    「僕」をはじめ親友の近藤もなかなかにクセの強いいいキャラクターだったのでまたどこかで会えないかなぁ。


  • にゃぁんこ。

    榎木津主人公痛快アクション小説第二弾。
    語り手の本島くんの名前が明かされる1冊(笑)。
    自分は京極堂シリーズを刊行順に読んでるんだけど、時系列的には本作品は『邪魅の雫』のあとみたいで、どっちを先に読んだら良かったんだろうか(ネタバレ的に)。
    さらに『百器徒然袋ー雨』の直後の話だから『陰摩羅鬼の瑕』に行く前に読んでしまいたくなるし。
    まぁどれ読んでも大丈夫なようにはなってるんだろうが。

    例によって榎木津が気持ち良く暴れる。
    『百器徒然袋ー雨』で結構出張ってた中禅寺は、本作品では参謀に徹していて、肉体労働嫌いのキャラ設定を守っている。
    中禅寺は、榎木津に関わるともの凄い勢いで馬鹿になると言うけど、むしろ榎木津本人がもの凄い勢いで馬鹿になってる気がする。

    中編三編の繋がりが強く、一冊の長編と見做してもいいかもしれない。
    中編の各タイトルは鳥山石燕の妖怪絵本から取ってるけど、作中では妖怪そのものについての蘊蓄はほとんど語られないし、妖怪絵本が開かれるシーンも全くない(薀蓄のあるような妖怪じゃないのかも。みんな石燕の創作で)。
    おまけに民俗学的な問答も最初の招き猫に関することくらいで(…と思ったら能面の蘊蓄もあったか)、とにかく、2話目から羽田製鉄の陰謀話になってしまって、3話目の落としどころで羽田氏が今後大人しくなってくれるのかは若干疑問である。
    なので、続きを!
    是非続きを書いてください京極夏彦。

    これ読み終わると『邪魅の雫』を残すのみになってしまうので、読んでる間中ずっとそこはかとなく悲しかった…(笑)。


    ・「五徳猫 薔薇十字探偵の慨然」
    招き猫がたくさん出てきて、どの猫がどっちの手挙げてる子なのか混乱した。
    奈美木セツやら沼上やらの再登場で楽しく読める話だった。
    事の真相は私も説明されるまで見当もつかなかったけど、巻き込まれそうな予感に珍しく取り乱す中禅寺は、らしくなくて可愛かった。まぁその割には作戦が悪ノリ気味か。
    なんというか、榎木津が幻視体質なら、中禅寺は実は思考が読める体質なのを隠してるんじゃないかと疑ってしまう。ていうか、中禅寺の脳裏に策が浮かぶ時、決して視覚情報はないはずなのに榎木津が察知してしまうのは、榎木津も中禅寺の思考を読めてるように思うんだけど。違う? 頭イイ人はこんなもんなの?
    中禅寺の、多々良と榎木津の分析には賛同しかねる(笑)。正しいだけ榎木津の方がずっとイイ。
    美津子に大金が入り、その大金で年季が明け、親子関係は修復され、主人の小池も大損はせず、北九州のボンボンには良い別荘が見つかり、悪は裁かれるなんて、榎木津が仕切った事件の中では最高に上手くいった例だと思う。
    エチオピア人の益田可愛い。

    ・「雲外鏡 薔薇十字探偵の然疑」
    神無月鏡太郎なんて胡散臭い関西の霊感探偵が出てきて、榎木津にギャフンと言わされる話。
    本島に人を刺すフリをさせたのが榎木津ターゲットなのは途中で分かったけど、実際神無月が榎木津と対決してからの顛末は、予想を超えていた。
    視えるってことがどういうことか、私も認識が甘かったわ。
    中禅寺は謎解きはするけど、特に動かない。榎木津が自力で解決(?)した稀有な事件(?)。

    ・「面霊気 薔薇十字探偵の疑惑」
    ついについに幹麿氏登場!
    でも『魍魎の匣』で電話越しに声だけ出演した時の幹麿さんとあまりに印象が違ってて、私ここだけは納得いかない。こんな上品な好々爺じゃなくてもっと威厳があったじゃん。京極夏彦そのこと忘れてるんじゃない?
    その上、ほんの数週間前に危篤状態だった老人を引っ張り出した中禅寺も、いつもの配慮に欠けていて違和感を持った(危篤ってのは榎木津の誇張表現だったと捉えるべきか)。
    「五徳猫」の招き猫がここでも小道具として使われてて上手い。しかし怪盗招き猫はイイとして(新聞掲載の写真がありありと目に浮かんだ)、本島を泥棒に仕立てて羽田別邸に捕らえさせたあと、あんなに思惑通り行くだろうか。かなり無理がある作戦だと思うんだが。
    鰹節盗むのにわざわざ木場修の管轄区域を選んだりして、巻き込む気満々である。
    繰り返すが、ホントにこれで羽田氏は恩義を感じて手を引いてくれるのだろうか。続きを(略)。
    まぁでもこのラストを見る限り上手く落ちてるからここで終わりなんだろうな…。

    ラストに榎木津の不器用な優しさが感じられて、ついでに中禅寺の榎木津愛も感じられて、ほっこりした読後感だった。
    関口は全く出てこなかった。関口って…。


    (追記)
    『邪魅の雫』読んだあとでちょっと再読してみたけど、やっぱり刊行順に読むのが正解みたい。ちょっと矛盾した描写があった(鞭について)。
    逆に『百器徒然袋ー雨』のすぐあとに(『陰摩羅鬼の瑕』に行かずに)本書を読む分には問題ない気がする。

  • 何度読み返しても面白い。本当にツボにはまった作品。
    この一冊に限らず百鬼夜行シリーズに言えることだが、ちょっと助長かなと思える語り口が思わぬ伏線になっているので、何度読んでもジックリと一文字一文字きちっと折ってしまう。斜め読みなんて出来ない。
    また本編以上に荒唐無稽なのが良い。すごく良い。本編には出てこないキャラクター達ながら誰も彼も個性的で、一話ごとのボリュームこそ控えめながらキャラの立ち方は全然控えめじゃない。むしろ個性的すぎてどちらも続編が待ち遠しくてならない。
    本当に続編が何時出るのか気になってしょうがないくらいこのシリーズが好きです。

    あえて難点を言うならば文庫の厚さ。笑い話ながら手が小さいのでずっと持っていると肩が凝ってしまうってことと、ページがめくりにくいことでしょうか。

  • 京極堂さんのお友達、変人で美男中年の榎木津さんを中心にした短編集のその2。

    まぁ、榎木津さん周辺で事件が起こるってだけで、榎木津さんは最後に登場して引っ掻き回す役割です。
    さすがは変人美男中年ハイソ探偵…。

    ここで問題点。
    この作家さんのこのシリーズは、ちゃんと通しで読まないとわかりにくいと思います。

    京極堂シリーズが好きな人には、めっちゃたまらないと思うけれど、仲間になれないとそれほど楽しめない。
    だって、登場人物が多すぎるし、そのバックボーンを知らないと楽しみ半減なんだもの…。

    この本も最後の悪の親玉さんとの因縁は、今までのシリーズを知らないと「?」って感じでした。
    知らなくても楽しめるっちゃ楽しめるけどね。

  • 百鬼夜行シリーズ番外編の第2弾。
    本編との関わりが色濃いので先にこちらを読んでしまうと、何がなんだか分からないと思う。
    しかし、本編を読み終わってから手に取ると、
    関わった人物が再登場、その後の様子などが描かれていて懐かしく楽しく読めた。
    榎木津の大暴れっぷりは本編以上で思わず声を出して笑えた。

  • [五徳猫]
     招き猫が持って来た謎。前回と同じように本島が巻き込まれて事件が進む。前より間が悪くなっている気がして、ますます関口くんに似てきた印象。榎木津の下僕らしくなって来たが本編には登場しないのかな。
     親切にしてくれた旦那さんが実は悪党で、依頼人の母の所に殺人を犯して死んだと思われていた娘を偽って当てがっていた。
     話は重いのだが、外伝だからか軽く書かれている。
    [雲外鏡]
     榎木津に対して敵愾心を燃やす神無月という心霊探偵。やる事も見た目もダサいので、あっけなく榎木津にしてやられる。世界一敵に回さないほうが良い人である。
     榎木津の能力を手にとって、してやろうと画策したのは良いが、自分がメイクをして変装をしているところを鏡を見て行っていたので、どれだけ頑張ろうと榎木津には筒抜だった。本編の事件も、こんな風に雑魚ばかりだったらあんなにページ数も増えないのに。
    [面霊気]
     突然現れた面。それは本島の隣に住む近藤の部屋にあった。そして泥棒として益田が疑われたりする。京極堂が忠告した通りに、榎木津のそばにいたから面倒ごとに巻き込まれてしまった。
     全ては榎木津の評判を地に落とすために、羽田が仕組んだ事だった。盗まれた品を榎木津の関係者の所においておき、関係者の持ち物を盗んで何か事件を起こすという作戦だったのだろうが、榎木津と京極堂にしてやられた。この二人が組むと誰も手出しが出来なそうだ。
     最近は事件続きなので、榎木津がみんなのためにお祓いをしようとしていたのが意外でもあり、らしくもある。やはり榎木津というのは面白いキャラクターだ。

  • ★4.0
    再読。「待たせたな!僕だ。うはははは」、相変わらずの榎木津節が懐かしく、下僕たちに吐く罵詈雑言の数々が最高に面白い。そして、「いんかーん!」と「にゃんこ」に完全にしてやられた。全3編の中でも「面霊気」が一番興味深く、誰もがその時々で異なる仮面を被っている。が、時に大人の対応が含まれてはいるものの、それは決して偽りではなく、そういうものなのだと思う。それはそうと、満を持して登場した榎木津父の言葉、京極堂による榎木津評に思わず泣きそうに。また、本人も言っている通り、本島さんは本名が一番嘘臭い(笑)。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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