大本営発表という権力 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062761345

作品紹介・あらすじ

大本営発表は、あの時代、単なる戦況報告ではなく権力そのものであった。意図的な情報のみを一方的に押しつけられ、「事実」は国民に隠されたのだ。関係者の証言をはじめ、発表回数や発表場面、発表の表現等の当時の資料を解析することにより、何が見えたのか!大本営発表の登場から消滅までを解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 「大本営発表」という語は、力の強い者が不都合なことは隠して自分に都合のいいことだけを発表する意味で使われることが多い。しかし、それは単に虚偽や隠蔽ではなく、戦時における巨大な権力そのものでだった。国民を正常な感覚を失った酩酊状態に落とし込み、軍指導者自身が自らの発表で錯誤の連鎖にはまり、国そのものを解体寸前まで追い込んだ。
    「主観的な願望を客観的事実にすりかえてしまうという心理構造」は今の日本でも時々起きているように思える。願望を持ちつつも現実を見て、そのギャップを冷静に把握して次の一歩を踏み出す、ということを当たり前にできるようになりたいものだ。

  • おもしろい。今こそ読んでおくべき本だ。

  •  小説とは違うが、「陰陽師」シリーズや「IWGP」シリーズと同様のオールタイム・オールベスト。

    納得するだけで

    の著者・著作だけに


    当たり前のことだが、今まで読んできた多くの著者の著作に書かれている内容に変わりがない。
     歴史研究家

  • 国民を考えさせない4つの枠組み。
    1.教育の国家統制
    2.情報発信の一元化
    3.暴力装置の発動
    4.弾圧立法の徹底

    大本営発表の内容そのものが短文でしかなかったのに、それがこうして装飾されることによって聖戦必勝の心理状態が国民の側に作られていく。ニュース、ラジオで皇軍勝利が繰り返された。

  • 8/12が発売日だったらしいのですが、たぶん発売日の丁度1年後に買いました。すごい縁ですね。報道問題と報道を信じたくなる人の心理をどう突くかというプロパガンダ論の一環として手に取ってみた次第。戦時中の日本が欧米諸国から「病的な空間」とそれぞれ自国でキャンペーンするとともにそれを自己実現させ、結果的に異常性を裏打ちしてしまったのが当時の異常な報道のありかただったというのは示唆に富んでいます。根拠は示せないけれど「我が」軍が勝ってるんだ!といってだんだんと煌びやかにデコレートされる報道文とともに報道をある程度コントロールできる者が「これまでの嘘がばれる」のを防ごうとするあまり国家反逆罪級の行動に出てしまうメカニズムは現在においても再現される危険性が高く過去の話と切って捨てるにはあまりに切実な問題だと思います。

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著者プロフィール

1939年生まれ。同志社大学卒業。ノンフィクション作家。とくに昭和期の軍事主導体制についての論考が多い。

「2022年 『時代の反逆者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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