スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

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著者 : 辻村深月
  • 講談社 (2010年1月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765572

スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • この本もきっと誰かにとっての「辻村ブランド」になるのだろう。

    学校と家庭が世界のほとんどを占める十代前半にとって、この二つに居場所を見いだせなければ、これほどつらいことはない。
    そんな時、息苦しい密閉空間に小さな窓を開いて風を通してくれるのが物語の存在だ。
    生きるか死ぬかの瀬戸際(比喩ではなく)に、あの本の続きが読みたい、次号の漫画が待ち遠しい、来週のアニメが気になる、やりかけのゲームをクリアしなければ、などが明日へのモチベーションになるというのは決して大袈裟な話ではないことを僕は知っている。

    古いかさぶたを剥がされ、むき出しの柔らかい部分をなぞるようなひりひりとした感触。
    そのかさぶたを集めて作った甲冑をまとい、血を流しながら行軍する赤羽環。
    暗く冷ややかな泉を湛えつつ空を仰ぐ狩野荘太。
    封印しながらも大切に抱えていた箱から、ようやく鋏を取り出す長野正義。
    はじめからわかっていた森永すみれ。

    苦手だと思っていた人々はいつしか気になる存在になり、やがて愛おしくなっている。どうでもいい人ならば最初から心に引っかからない。そういうものだろう。
    大人になったいまでは、アクロバティックな綱渡りを繰り返しながらもぎりぎり魂は売っていない(いや悪魔と契約はしているのか?)黒木がかわいく思える。
    千代田公輝はずっと格好良かった。

    何かを生み出す人(クリエイター)はそれだけで偉い。
    感想を言ったり、批評したり、あるいはケチを付けたり、そんな人達よりも圧倒的に偉い。
    脳みそを絞り、体を動かし、0を1にする。
    それだけで尊敬に値する。

    何の意図もなく書いていた物語でも、どこかの誰かの力になっている。もし作者がそれを知り肌で感じた時、その何倍の力を生み出すのだろうか。
    その力がリングのように巡って広がっていけばいい。
    世界は家と学校の往復だけじゃない。
    スタートダッシュは負の感情でもいいから、はやく大気圏を突破して太陽の光をエネルギーに代えてほしい。

    僕は誰に向かって言っているのだろうか。
    それでも、どこかの誰かに届いてほしい。

    (物語はもちろん素晴らしいが、ミステリとしても一級品だと思う。最終章の伏線回収は言うに及ばず、その他さまざまな「正体」を示唆する描写や表現の細かさに、上下巻を読み返してみて驚く。
    あと『とっても!ラッキーマン』を急に読みたくなったのは僕だけだろうか。)

  • よかった!の一言につきます。
    淡々と読み進めた上巻、あらゆるところに散りばめられた伏線を
    下巻では見事に回収され、その素晴らしさに一気に読みぬけました。
    さすが!!辻村さん。

    コウちゃんの環に対する、無償の愛っていうのかな、不器用なんだけど必死なところがなんとも愛おしい。環のコウちゃんへの思いも、これもまた不器用なんだけど一途で、後半は読んでいて涙がポロポロこぼれてきました。

    スロウハイツの住人もみんな素敵で、スーと環の関係もすごく好き。
    こんな女友達っていいなぁと思う。

    愛がいっぱいつまった本でした。人を愛するってことはなんて素敵なことなんだろう♫とあらためて感じました。
    下巻を読み終わったうえで、もう一度上巻から読み直したくなります(#^^#)

  • 前半少し重いのは辻村深月作品の特徴だろうか。
    文庫で言うと上巻の終わり、下巻の始まり辺りから急に読むほうが勝手にスピードアップする。
    一般道から首都高速に乗り、そこから彼女の故郷である山梨へ向かう中央高速に入ったかのように。
    60.70.80.90キロ、加速は増してぶっちぎり150キロのスピード感で先が読みたくなる。
    そして最後は何とも言えない爽やかな読後感と感動の涙。
    涙はもちろん、ラストに近づくに連れて徐々に溢れ出してくるのだが。
    今回もこう来たかと……。分かっていても瞼の裏が熱くなり始める。
    この本で言えば、十章「姉を語る」から最終章「死にたかった」とエピローグまで。
    普段、面白かった本でもすぐに読み返したりはしないが、これは十章に戻って、また最終章とエピローグへ、それを読んでさらにまた十章へ。
    何度繰り返したか分からない。というよりも毎晩のように読み返した。
    同じスタイルで。それでも涙が零れる。
    この本は、もう”素敵な物語”としか表現のしようがない素晴らしい小説である。
    本を読んだ後に幸せな気持ちになれる数少ない傑作だと思う。
    辻村深月さん、あなたは天才だ。
    ちなみに「名前探しの放課後」も十章からエピローグまで、時々読み返します。
    こんな作品をどんどん書いてください。

  • こんなに豊かな感情を内に秘めて人は生きているのだったか。
    上巻の素っ気なさにまんまと騙されていた。
    こんなに純粋で深い恋の物語だったなんて。
    いや、恋ではなく愛かもしれない。
    (こんなありふれた言葉しか出てこない自分が情けない。この言葉がこの本の価値を下げませんように)
    自分の想いが届かなくても、相手が知らないままでも、そんなことよりも一心に願うのは相手の幸せであり、笑顔だけ。
    コウちゃんの回想を読んで、嬉しくて涙が出た。
    なんて素敵な物語なのか。
    こういう物語があるから夢見る夢子さんをやめられないのかもしれない。(本のせいにするなと怒られてしまうかな)

    上巻のレビューに書いた「心温まる兆しはない」の言葉は撤回します。
    薦めてくれた先輩に感謝。

  • 好きな人のために生きている。
    好きな人がいたから生きた。
    決して、想いを伝えることはなく、
    遠くから、近くから、そっと見守ることしかできなかった。

    『スロウハイツの神様』(辻村深月)は、そんな不器用な人たちの恋のお話だ。


    大きな声で言いたい。
    お願いだから、上を読んだらすぐに下を読んで欲しい。
    上巻はこれといった大きなイベントもなく、展開もなく終わる。
    不満気に下を読んだらどうか。
    こりゃおどろいた、と散りばめてあった話が、一気に一つにまとまるのであります。
    下のスピード感は半端ないです。


    最後の、コーキの「お久しぶりです」。
    この言葉に、この物語の全部が詰まっているような気がしました。
    すごく感動した!


    何かに一途に打ち込むことって、私はこれまでなかったし、
    今後も縁が無いものだとおもってました。
    しかし、夢を追う彼らを見て、彼らがすごく格好よくって、
    すごく、羨ましい。
    彼らのように、追われるように、ひたむきに、
    頑張ることも悪くないなぁと思いました。



    それと、理帆子さんがでてきました。
    大人の理帆子さん、いい働きをしています。
    彼女は、もう、少し・不在じゃないのでしょう。

  • 伏線の回収されっぷりが気持ち良い。コーキの天使ちゃんと神様と。不器用で、まっすぐで、強く、優しい人たち。

    下巻まで読んで良かったです。

  • すごいもん読んだ!!!と,読み終えたときに思わず言ってしまいました。最後の最後で,全てがつながる。読んでいる途中から,それまでの伏線の多さに驚いてばかりいました。後半の駆け抜けるような展開。でもキャラクター1人1人のストーリーや心情が丁寧に描かれていて,息が止まりそうなくらいドキドキしたり,切なすぎて泣きそうになったり。正義の言葉を借りて言えば,本当に退屈しません。とても楽しかった。登場人物の誰かが自分の友達で,その話を聞いているような感じがしました。物語が終わっても,みんなのその後をつい想像してしまいます。そして,心から応援したい!

  • 上を読んだときと下を読んだときとでは、環の印象が全く違った。
    環みたいな、人を見下した態度はどうなんだろうと思ったけど、環には環なりの苦労と弱音を吐かず耐えるだけじゃなくコーキを好きだというぶれない強い気持ちを持ってたからこそ、他人にもあれだけの態度が取れるんだなーと。
    死にたかった時、環はコーキの文字に支えられ、コーキは環の文字に支えられて生きてきたんだなーと思うと切なくてドキドキした。
    二人の想いと努力が、お互いに遠慮なしで伝わればいい。
    ところで、一番喰えないのは黒木でも莉々亜でもなく間違いなく狩野だと思う。
    ひっそり2年も環になにも言わず桃花と付き合ったり、コーキのレディマディを越える小説を書いてたり、一緒に住んでるのに自分のことを語らなさすぎて怖すぎる!!

  • 私が読んだ本の中で一番、とびきり、大好きな本。
    一度読んでから是非とももう一度読んでほしいなと思います。
    実はたくさんの伏線があって、再読するとそれに気が付いて「ここでも実は!」という場面が多々ありました。

    最終章はもう何度読み返したか分かりません。全ての愛情がこの章に込められているような気がします。愛は執着、その言葉がずっしりと心に響きました。愛の形は人それぞれだけど、確かに執着しない愛は少ないかな、と思います。

    コウちゃんは相変わらずかっこいいなあ。

  • 私は本を読むのが好き。映画を観るのも好き。絵画や音楽も好き。大切にしている作品もいっぱいある。
    だけど、ある作品(本であったり、映画だったり、絵だったり、歌だったり)によって、自分の人生を左右された憶えはほとんどない。もちろん、『あの年齢』のときに『あの作品』に触れていなければ今の自分は存在していないという、そんな思い出がある筈もない。
    作品に触れて感じるのは「好きか嫌いか」「面白いか(印象的だとか、魅力的だとか、興味深いとか、感動したとか、そんなものみんな含めて)否か」それだけ。
    理由を考えてみる。私の感性が鈍いのだろうか。冷めているのかもしれない。そしてもうひとつ。それは、私が何かに救いや心の拠り所を求めなければならないほどの辛い思いをしてこなかった。家族やまわりの環境に恵まれ、平凡ながらも幸せな日々を送ってきた証なのかもしれない。この本を読んで、ふとそんなことを思った。

    構成・展開もうまく、良い作品だ。
    丁寧に綴られ、そしてクライマックスに近づく第12章~最終章では、コウちゃんと環の互いをそっと思いやる深い想いに、心が震え、胸が熱くなった。
    いつか再び、今度はもっとゆっくり読みなおしてみよう。
    この本を読むきっかけをくれたのはブクログのお陰。感謝!

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スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)の作品紹介

莉々亜が新たな居住者として加わり、コーキに急接近を始める。少しずつ変わっていく「スロウハイツ」の人間関係。そんな中、あの事件の直後に百二十八通もの手紙で、潰れそうだったコーキを救った一人の少女に注目が集まる。彼女は誰なのか。そして環が受け取った一つの荷物が彼らの時間を動かし始める。

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