カシオペアの丘で(上) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062766302

作品紹介・あらすじ

重松清のすべてがここにある。渾身の長編小説
平凡だけど、幸せな日々だった。これからもずっと幸せでいられると信じていた。

丘の上の遊園地は、俺たちの夢だった――。肺の悪性腫瘍を告知された39歳の秋、俊介は2度と帰らないと決めていたふるさとへ向かう。そこには、かつて傷つけてしまった友がいる。初恋の人がいる。「王」と呼ばれた祖父がいる。満天の星がまたたくカシオペアの丘で、再会と贖罪(しょくざい)の物語が、静かに始まる。

感想・レビュー・書評

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  • テーマは「ゆるす」こと「ゆるされる」こと。
    友情、家族愛、背負ったもの、そして生と死。
    本書は電車の中では読んではいけません。

    上巻です。

    過去に炭鉱の町として栄えていた北海道の北都という町で育った小学生の幼馴染の4人「トシ」、「シュン」、「ミッチョ」、「ユウちゃん」
    ストーリは、この4人が名付けた「カシオペアの丘」に遊園地を作りたいと夢を語るところから始まります。

    30年後、トシとミッチョは夫婦となり、トシは市役所の職員としてカシオペアの丘の赤字遊園地の園長。
    ミッチョは小学校の先生ながら、遊園地の手伝い。
    さらにトシは車椅子の生活です。
    車椅子生活になった背景は前半では語られず、何かあったと思わせる展開。
    シュンは東京で家庭を持ち、奥さんと小学生の息子と暮らしていますが、ガンと診断され余命宣告。
    ユウちゃんは東京でテレビの仕事。幼女殺害事件の取材でこの遊園地を訪れるところから、この4人が再びからみあっていきます。

    炭鉱の町だった北都を今も牛耳るシュンの祖父の会社「倉田」
    過去、炭鉱事故で下された決断と悲劇。
    炭鉱事故の犠牲者を見殺しにした祖父をゆるせなかったシュン
    シュンが突然転校していった理由。
    シュンとミッチョの大学時代の関係。
    と、4人の過去、背景が徐々に明らかになっていきます。

    いろいろ重い過去が、ガンの進行とともに語られていきます。
    幼女殺害事件の取材でしりあった「ミユ」さんがとてもいい味出しています。
    そして、やはり何か過去を持つ女性です。

    下巻に続きます。

  • 上巻を読み終えた感想は、「すごい」でした。

    正直、第七章までは、「あれ?これ散々風呂敷広げてるけどちゃんと収集つくのか?ちゃんと盛り上がるの?」って不安に駆られましたが、第八章から重松清さんが本領を発揮し始めます。(第八章まで300ページくらいかかります笑)

    主人公シュンの幼馴染、雄司が優しくて、作品の良心だなって思います。

    特に雄司が悲しみについて、語るシーンがストンと落ちてきて、ここを読むだけでもこの作品に出会えて良かったなと感じました。
    =====================
    悲しみは、二人いれば何とか耐えられるんじゃないか。
    悲しみを分かち合うとか、半分にするってことではなく。同じ悲しみを背負ってる人がそばにもう一人いれば、押しつぶされるぎりぎりのところでも耐えられそうな気がするんだ。
    絶望とは希望をなくすことじゃない。もう誰ともつながれなくなること。
    誰かのためにとか、誰かと一緒にとか、そういうのを全部奪われちゃうことなんだ。
    =====================

    非常にいい場面で下巻に続いていて、この先がものすごく楽しみです。

  • 今回は以前から読みたいと思っていた「カシオペアの丘で」を読みました。
    4人の幼なじみが中心の話でしたが、テーマは「生(死)」と「家族」、「友情」でした。
    40歳という若さで癌のために苦しむ「シュン」。
    余命を宣告されてから、どのように「死」までを生きていくか。
    子供に どうすれば父親として伝えなければならないことを伝えることができるのか。
    病気で一番苦しい所を逃げも隠れもせずに 真正面から描ききっています。
    読んでいる間 ずっと涙が溢れてくる作品でした。

  • 癌ので亡くなる設定と、出てくる女性達にあまり共感出来ず。ただ、やっぱりどんどん読み勧めたくなる。行った事の無い知らない場所でも、読んでいるだけでそこに自分もいるような気持ちになる。

  • 「ゆるしたい相手を決してゆるせずに生きていくひとと、ゆるされたい相手に決してゆるしてもらえずに生きていくひとは、どちらかが悲しいのだろう」

  • 子供に先立たれ妻に裏切られた男性と、子供と妻を遺して死ななければならない男性と、複雑な事情を抱えた4人の幼なじみの話。

    中学生の頃に1度読んだことがあり、今回は2回目。
    看護学生になってから読み返すと中学生の頃とは違った視点と想いで読むことができた。

  • そうだったな。僕だってそうだった。学生時代は、おとなの存在など目に入らなかった。背広にネクタイ姿で会社に通うことが、ちょっと考えればなによりもリアルなはずの未来だったのに、それを自分と結びつけることはなかった。身勝手なものだった。人より図抜けた才能や強烈な野心があるわけでもないのに、ひととは違う人生を歩むんだと決めつけていた。ずうずうしかった。甘かった。若かった。すべてをまとめて、要するに、生きることに対して傲慢でいられたのだと思う。

    まだたっぷりと残っている手付かずの未来を前に、今日をむだづかいしているような恋人同士の笑顔は、いつの時代の、どこの街でも変わらないのだと思う。
    そんな日々は、いつか終わる。僕はそれを知っている。だが、いつか終わってしまうんだと知らないからこそ、いまがいとおしくなるんだということも、おとなになればわかる。

    ゆるしたい相手を決してゆるせずに生きていくひとと、ゆるされたい相手に決してゆるしてもらえずに生きていくひとは、どちらが悲しいのだろう。

  • 下巻へ

  • 赤字続きで閉園間際の遊園地の園長トシとその妻ミッチョン。がんで余命幾許もないシュン。妻の不倫相手に愛娘を殺された川原さんと関わる雑誌記者のユウ。幼馴染の4人が再び生まれ故郷に集い、友人の死に向き合う。暗い内容に嫌気が差しそうになったが、一方で家族や友人たちへの愛がしっかりと描かれており、下巻でどう決着するのかが楽しみになった。

  • ひとまず上巻読み終わったので、簡単に感想を。
    すごく情景が思い浮かぶ小説!
    ずっしり重くて内容が詰まってるからまさに日曜劇場とかになりそうな感じ。

    全体の感想は下巻読み終えてから書くことにして、久しぶりに読んだ重松清は、読者に伏線?をすごくアピールする人だなぁと思った。
    最近、読んだ作品はどれも気づかない程度に伏線置いてる感じだったので新鮮。小説の書き方も流行り廃りがあるのかな。

    上巻時点ではまだシュンとミッチョが大学生の頃付き合ってたことはわかったけど、なぜシュンはミッチョに会えないと思ってるかは謎のまま。

    でも、青春ぽくて切ないのは、大学時代の回想シーンでアサガオが昼にしぼむのが悲しくて朝方からふたりで咲くのを待ってるっていうシーン。なんかすごく素敵だった…胸がギュンとする感じ。
    愛を表現するのに、キッチン含めて六畳しかない部屋で2人で暮らしてるってところもいいなぁと思った。

    下巻も楽しみ。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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