ミノタウロス (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062766517

感想・レビュー・書評

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  • 2010-05-00

  • 100殺!ビブリオバトル No.20 午後の部 第4ゲーム(2班) [チャンプ本!]

  • これも方々で絶賛されているので。あと、佐藤亜紀作品をとりあえずどれか読んでみないと、ってことで。そもそも舞台設定がロシア方面だからではあるんだけど、まるで外文を読んでいるような荘厳な語り。会話も地の文のまま、物語はひたすらに突き進む。凄惨なバトルシーンも織り交ぜて、敵味方問わず、どんどん死んでいく。あとどうしても触れておきたいのが、装丁の美しさ。この表紙、素晴らしいです。内容ともバッチリ合っていて、本作の魅力を存分に伝えてくれている。凄い作品でした。

  • ピカレスクの語源は悪漢小説。
    この小説の主人公、自由奔放に生きる地主の息子ヴァシリも見事な悪漢です。
    とにかく密度が濃いです。時代設定も二十世紀初頭ロシアという知る人ぞ知る非常にマニアックな選択。
    裕福な地主の次男として生を受けたヴァシリは、成り上がりの父を継ぐことを夢見て農業を学ぶも生来女好きな放蕩癖あり、下宿先の叔父の家の女中や故郷の娘とたびたび関係を持っていた。
    しかしそんなヴァシリの運命はロシアに迫り来る戦火に煽られ風雲急を告げる。

    強盗・強姦なんでもあり。
    人倫を踏み外す行為全般に一切ためらいない主人公の破滅的生き様は凄い。
    殺人や悪事に手を染めても一切心を痛めず自分を貫き生きるさまはいっそ清清しい。
    良心の所在が人間を定義する必須条件ならヴァシリの生き様はけだものさながら自由で獰猛で野蛮。
    常識に束縛されず倫理に唾し欲望に正直に生きるヴァシリはやがて脱走兵のイタリア人少年・ウルリヒと出会い意気投合する。
    このウルリヒがすっごいいいキャラしてるんですよ!
    ニヒルでいながらユーモアセンスに冴えて、飢えと寒さに苛まれたみじめな逆境でも軽口を忘れない。これにフェディコというびびりの少年をくわえ、やがて三人で盗んだ馬車を駆り、略奪と殺戮とどんちゃん騒ぎをくりひろげつつロシアを縦横無尽に奔走する帰るあてなき旅が始まる。
    そんなヴァシリたちのやりたい放題の暴走ぶりを「おいおいそのうち因果応報天罰がくだるぞ…」と眉をひそめ読んでいくと案の定後半で…ラストは言わぬが華ですがああ無情なかんじです。天罰というか人誅のほうでしたが。ヴァシリは自業自得だけどなあ…ウルリヒ…。
    文章の密度もかなり濃い。
    主人公が初めて人を射殺するシーンは比喩の秀逸さに感動しました。
    嗚呼美しい、官能的…ため息。
     
    佐藤賢一さんの「傭兵ピエール」や森博嗣さんの「スカイクロラ」なんかが好きな方にもおすすめです。

  • 苦手です。

  • 第一次世界大戦のあった帝政ロシア崩壊直後のウクライナ地方が舞台。
    成金青年が殺人や強盗等の悪事を尽くしながら狂奔する物語。

    どうやらこういった悪者物語はピカレスクロマンとのこと。
    1人称で物語が進み、坊っちゃんだった青年が徐々に変貌していきます。

    主人公の青年は殺人・強盗・強姦等をどんどん行います。
    まさに弱肉強食の地獄で必死に生きようとします。
    っというよりもみんな悪事をするのが当たり前の状況です。

    物語はかなり堅い文章ですが、読みごたえを求める方にお勧めの作品です。

  •  硬い文章が時々読みたくなるのだが、読み始めて後悔するほど硬くて、全然進まない。特に登場人物の名前が覚えられず、最初は前に戻って確認しながら読んでいたが、途中から覚えられないまま読んでいて、その人が死ぬと安心したのだが、回想で名前が出てくると、くうと思った。メモしながら読むべきであった。

     お坊ちゃん育ちの青年の地獄めぐりであった。仁義もなにもなく、仁義があるのは余裕のある時だけ、それでも意地だけはある。現代の世界でも難民の生活や紛争地帯はきっと同様の地獄が存在しているであろうことを思うと心が痛い。

     女性に対してむごい描写や辛辣な表現が多々あるのだが、男性作者が書いたら読めたものでない感じがした。特にマリーナというお姫様みたいな女がひどかった。きっとそういうタイプが嫌いなのだろう。

     田舎者の訛りが新潟弁で面白かった。

  • 歴史もっと勉強するんだったー!と思わずにはいられない。

    時代背景がすでにロマンを感じると思って読んだものの、勉強不足で知識が追いつきませんでした…

    それでも、十分楽しめましたし、のめりこむことのできる一冊でした。
    強いて言えば主人公の周辺が淡々とかかれていく感じが、普段読む本に比べて心理描写少なめで物足りなかったかな?という感じです。

    他の作品も有名なようですので読んでみたいと思います。

  • 舞台はロシア革命後の混乱極まるウクライナの片田舎、主人公は地主の小倅で、教養はあるものの故郷を出奔して悪逆の限りを尽くす転落劇である。

    読み終えて呆然としてしまう。

    この世界は一体なんなのだろうか。このリアリティは何か。この酷い状況はなんだ。(戦争の悲惨さなんて生易しいものではなく、ロシアの大地の広大さと人間の身勝手さに目の前が暗くなる)こんなに胸の悪くなる内容なのに、読み終えて、こんなにも爽快なのはなんでだ。

    どちらを向いても盗みと強姦と人殺し、殺しても殺されてもお互い様というような「のらくろども」の一人である主人公の、時折垣間見える人間らしさが妙に切ない。
    彼は語り手である。だから「粋がってる」「強がってる」「悪ぶってる」だけで根はいいコなんじゃないかと思えてしまうのは、ちらりと描かれる女性たちの彼への眼差しのせいかもしれない。
    待て、これは小説だ。そうだとしたら、なんという二重三重構造なのか! 著者の技量と冷静さに感服というか、もうひれ伏すしかない。

  • ★★☆☆☆

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著者プロフィール

1962年、新潟に生まれる。1991年『バルタザールの遍歴』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。2002年『天使』で芸術選奨新人賞を、2007年刊行『ミノタウロス』は吉川英治文学新人賞を受賞した。著書に『鏡の影』『モンティニーの狼男爵』『雲雀』『激しく、速やかな死』『醜聞の作法』『金の仔牛』『吸血鬼』などがある。

「2022年 『吸血鬼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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