酔いがさめたら、うちに帰ろう。 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062766883

感想・レビュー・書評

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  • 西原理恵子さんの元旦那さんの筆による作品。
    どうしようもないアル中の筆者と、それを見捨てることなく(毒舌まみれではあるが(笑))、世話を焼く(元)奥様、それからその子供たちが織り成す何とも暖かい家族愛。
    決して誉められたものではないが、ほのぼのの中に、随所に奥様に対する感謝の気持ちが感じられて、悪くないな、と思いました。

  •  2007年にガンで世を去った「カモちゃん」こと鴨志田穣が、その早すぎる晩年に書いた私小説。東陽一によって映画化された。

     西原理恵子の夫でもあったカモちゃんだし、タイトルの印象から、この小説もサイバラ(作中では、主人公の妻はマンガ家ではなく画家という設定になっているが)とのラブストーリーが主軸なのだと思っていた。だが、実際に読んでみたらそうではなかった。

     ラブストーリーとしての側面もないではないが、主軸はむしろ、主人公が入院するアルコール依存症治療病棟の人間模様であり、依存症治療をめぐる悲喜こもごもなのだ。アルコール病棟の狂騒の描写は、吾妻ひでおの傑作『失踪日記』を彷彿とさせる。

     アルコール依存症の恐ろしさも、これでもかとばかり描かれている。と同時に、依存症患者が酒を飲んだときに感ずる、一瞬だけの心地よさまでが伝わってくる点がすごい。たとえば――。

    《最初のビール一口でかならずと言っていいほど吐き出すのに、一休みしてあらためて飲み出すと、するすると喉を流れてゆく。
     胃のあたりがほんわり温かくなる。
     起き上がるのもやっとの状態で立ち上がっているのに、酒が入ると何だか元気になる。
     買ったもの全部を飲み干すと、すたすたと家に帰る。》

     もっとドラマティックに、泣かせる内容にしようと思えばできただろうに、カモちゃんはそうしなかった。淡々としたユーモアとペーソスを全編にちりばめて、自らが死に向かう日々を客観的に観察して(!)小説化しているのだ。

     アマゾンのカスタマー・レビューを見たら、カモちゃんの文章について「相変わらずヘタ」などと酷評しているものが散見された。だが、本書の文章には心地よいリズムがあって読みやすいし、けっしてヘタではないと思う。

     本書を「泣ける本」にすることを注意深く避けていた感のあるカモちゃんだが、それでも、ラストシーンだけは泣ける。
     それは、末期ガンで余命一年を宣告された主人公を、一度は離婚した妻が家に迎える場面。次のように結ばれている。

    《目が覚めると見なれたベッドの上だった。
    「お帰りなさい、先生から聞いたわ、あなた。これから一緒に生きてゆきましょうね」
     ハスの花が咲いたような妻の顔があった。》

  • この本を読むたびに涙が出てきますがアルコール依存症で、奥さんにも捨てられた男が自らアルコール病棟に赴き、病を治して家族のもとへ帰っていく話です。生きることの重みを伝える本です。

    永作博美と浅野忠信主演で映画化されるというので、久しぶりに読み返してみた。涙が出た。リリー・フランキーの帯にある、
    『なんだかんだあっても、幸せな男』
    というように、彼は、鴨志田穣は『幸せもの』だとおもう。本当に。

    内容はというと、アルコール依存症で十回血を吐いて閉鎖病棟で治療をする鴨志田穣と離婚をしながらも『家族』として彼を支え続ける西原理恵子とその子どもたちの家族の物語である。僕は、ほとんど酒が飲めない。でも、それが救いになっていて、おそらく現在の僕のような経験をすると、アルコールに限らず何らかの依存症になってしまうのではないか、と思うからだ。

    鴨志田穣は、帰る家を見つけて、愛する人の膝で、最期を迎えた。立派で品行方正な人間の人生には少しもシンパシーを感じないが、不思議と彼の人生にはシンパシーを感じてしまう。それは僕が、『ダメ人間』であるからに他ならない。そんな『本性』をひたすら押さえつけて『世間』という実体のないものとひたすらおり合わせようとしている自分がいるんですけど、「はたしてそれでいいんかね?」と自問している自分が最近います。まぁでも、彼は結局、帰ることが出来る「場所」があった。僕はたぶん、ないだろうな。

    まぁでも、「帰らぬ道は誰もおなじ」ですからね。くいのない生き方をしましょう。それが彼にとっての供養です。

  • 誰も鴨ちゃんを見捨てなかったのは、鴨ちゃんが見捨てられない人だったから。
    愛されていたのですね。

  • 読書の醍醐味
    壮絶

  • 毎日かあさんの元夫か!!!!と買った後に知った。読みやすくて面白い。

  • 西原理恵子の夫だった著者のほぼ実体験の話だと思う。
    フィクションとしてあったが概ねノンフィクションなのではないだろうか。
    アルコール依存症で入院という重いテーマを軽く書きあげている。
    塀の中の懲りない面々のように濃いいキャラの人ばかりでてきて、感心する。
    最後、酔いをさまして、うちに帰る主人公が哀しくて切なかった。

  • 西原理恵子の元夫で戦場カメラマンの鴨志田穣の本なですが、
    腎臓がんで無くなっていてその原因はアルコール中毒。
    そのアルコール中毒の療養のための入院生活を綴った本です。

    闘病生活と戦場カメラマンの話題とあるかなと思ったものの基本的には闘病生活について書かれています。

    とはいえ、アルコール中毒となった原因に戦場カメラマンとして過酷な現実と向き会ったことによるストレスがあったみたいで、
    著者が戦場カメラマンになった経緯や
    戦場の兵士について、
    ポルポト政権の取材についてだとかも書かれています。
    ほんとに軽くですが与えられたインパクトは大きかったです。

    はなしの基本となるアルコール病棟という閉鎖された世界についてや
    アルコール中毒の辛さについてだけでも
    自分にとって未知の世界で面白いのですが

    この著者は
    子供の時に見た夢を叶えるチャンスを
    酒場でつかみ
    叶えるため努力し活動し叶えたものの
    現実の辛さから逃げるために酒を煽り
    仕事が出来なくなり
    人間関係も壊して身体も壊す

    というお酒で得たものも大きく失ったものもそれ以上に大きくとすごく複雑な気分にさせられて考えさせられました。

    この本で一番印象に残った言葉は酒場で言われた
    「カメラさえあれば君もカメラマンだ。
    あとは儲かるかどうかだけ。」
    という著者の師匠に当たる人から著者が出会った時にもらった言葉です。

    夢に飛び込むことがじつは簡単なんだけどその世界で生き抜くことの難しさを感じさせられてすごくかっこいい言葉だと思いました。

  • いい本だなあ

  • 決して上手な文ではないですが、温かい人であることが伝わってきます。
    壮絶な人生ですが、非常に情けないものが大半で、しかし思ったとおりに生きていて。そのしょうもなさと子供さが、やっぱり昔から僕のヒーローです。ご冥福をお祈りします。

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