誘拐児 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 892
感想 : 98
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770132

作品紹介・あらすじ

終戦翌年の夏、5歳の男の子が誘拐された。"使い古しの新圓で百萬圓を用意しろ。場所は有樂町カストリ横丁"という脅迫状に従い、屈強な刑事たちが張り込むなか、誘拐犯は子どもを連れて逃げてしまう。そして15年後、とある殺人事件をきっかけに、再びこの誘拐事件が動き出す。第54回江戸川乱歩賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 「購入」
    読めば読むほど、引き込まれていきます。
    戦後の混乱期に誘拐された勇一をめぐる物語です。

    発端は、昭和21年8月7日に東京都世田谷区成城町に大きな屋敷を構える実業家、久我恵三の一人息子勇一5才が誘拐されたことです。15年後に、この事件が、ふたつの違った方向から物語が進んで行きます。ひとつは、関内市民病院で危篤の母親谷口貞世の枕元で息子の良雄が、母から聞いた「おまえは、ほんとうの息子でないよ。私が誘拐ーーー」と言って昭和36年6月25日に亡くなります。もうひとつは、昭和36年6月28日に殺されて、家探しをされた下条弥生25才の捜査をしていた神奈川県警捜査一課の輪島刑事が、誰かを脅迫をして殺されたのではないかと推測していきます。

    良雄は、恋人で横浜市の関内市民病院の看護婦、杉村幸子と出生の秘密を探し始める。そして輪島刑事は、家政婦である下条弥生が身分不相応な旅行を計画している事と、本の栞として使われていた新聞の写真から15年前の誘拐事件にたどりつきます。

    第54回江戸川乱歩賞受賞作。
    翔田寛さんの本を読むのは初めてです。

    【読後】
    字か小さく、そして印字が薄いために最初は購入をやめようと考えたのですが、表紙に「第54回江戸川乱歩賞受賞作」と書いて有りタイトルの「誘拐児」にひかれて購入しました。買って良かったです。面白く、展開が早く、テンポがよく、本から離れることが出来ませんでした。すべての舞台が、良雄の母が亡くなった関内市民病院に結びついていきます。読んでいて40年以上前に目の手術をした横浜市立大学附属 市民総合医療センターを思いながら読み進めました。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    誘拐児《文庫本》
    2011.08発行。字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。
    2023.01.21読了。★★★★☆
    ブックオフ、66円で購入2023.01.15
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  • 事件解決のきっかけにもなる、主人公の恋人である幸子の行動力にご都合主義を感じる。
    もう少し誘拐児の心の葛藤を表現して欲しかったし、刑事ベア2組が、競っている感じでもないので、登場人物を減らすためにも一本化した方が良い。人間相関図もぐちゃぐちゃにで分かりにくい。
    あまり好きでない。⭐︎2つ。

  • 2つの事件がどう交わるのか、そして、結末は…一気読み。

    まさかあの人が…の展開には驚かされたし、良雄のことについての着地はすっきりした。

  • 終戦の翌年、昭和21年の夏、ひとつの誘拐事件が発生した。狙われたのは、実業家の長男で、まだ5才の子供。
    しかし、警察の失態により、身代金は奪われ、犯人は取り逃がし、更に、子供は帰って来なかった...

    それから、十数年が経ち、ひとりの女性の殺人事件が発生した。捜査を続けたところ、十数年前の幼児誘拐事件とのリンクが出て来た。
    果たして、殺人事件の犯人は、誘拐犯の人間と同じ人物なのか?

    母親の最後の言葉『お前は、本当の息子では...』に苦しむ青年とその恋人、反目する2つのグループの刑事達。
    最初、バラバラであった3つの糸が不思議に絡み、やがて、ひとつの真実に行き着く。

    各所に伏線があり、二転三転するハラハラドキドキの連続ですが、最後は納得の結末です。

    生みの親か、育ての親か、いろいろ意見はありますが、やはり、親の愛は、深いものがありますね。

    なお、随所にある当時の言葉『アッパッパー』、『解放国民』、『楠公飯』などなど...難しい言葉もありますが、著者は、よく調べていますね。

  • 「真犯人」に続いて、江戸川乱歩賞を受賞したという本作を読んでみました
    こちらも読み応えがあります

    自分の過去に疑問を持つ青年と、その恋人、二組の刑事とそれぞれの視点から事件の真相に迫っていきます
    さらに過去に捜査に当たった人々が出てくるところは、「真犯人」に似た設定です

    時代設定が戦後まもなくで、当時らしい捜査で進みます
    登場人物が多く、主人公が誰なのかはっきりしない作品(群像劇ではない)ですが、よく練られて構成だと感じました

  • 江戸川乱歩賞受賞作 ということで手に取る。戦後の混乱期から始まり15年後につながるストーリーですが、リアルな熱が伝わって来なかった。
    (リアルな体験ないけど)
    主人公と恋人が20歳前後(幼児誘拐から時効で設定したら必然だけど)ちょっと大人び過ぎているというか、それも時代なのか
    あと偶然が多いかな、って印象。

  • 時代の割にはどこか新しい雰囲気が同居してしまっており、古きを書ききれていない違和感がずっと付きまとう。内容だけを追えば、まず流れている感じもするが、リアルではない。それは、突拍子も無いオチだとか、実現の蓋然性の低さを上げ諂っているわけではなく、あくまでこの本の中の世界に説得力がないということ。その違和感を抱きつつも、人間関係の数奇さにページをめくらされた。

  • むむむ。☆2はちょっと厳しいかなあ。でも3あげるにはちょっと・・・。2.5って所でしょうか。江戸川乱歩賞を定期的に遡って読もうと思っているのですが、最近ちょっと心が折れそうです。乱歩賞って新人賞なんだなあとつくづく実感しました。

    乱歩賞のイメージを、ろくすっぽ知らない野球に例えてみると、甲子園の最優秀選手って感じなんじゃないでしょうか(そういうのあるのか知らないですけど)それを取ったからってプロになれるわけでは無くて、金を腕一つで稼ぐプロがひしめき合う業界の中で、頭一つ出たというだけなんでしょう。そりゃあその中にはのちに偉大な選手となる子もいるかもしれません。が、プロの中で揉まれてたたき上げで自力を付けてきた選手と、高校で頭一つ出ただけの子とを必ずしも同レベルで見る事が正しいのではないのですね。
    片やイチロー、片やハンケチ王子。
    という事でもうちょっと温かい目で見ないといかんですなあ。すまぬすまぬ。

    自分は誘拐された子供だったのではないかと、母の今際の言動で疑いを持った青年が、母の知人を訪ね歩き次第に確信が深まって行き、現在進行形の殺人事件と交差していくという話でございます。なんというか緊張感に乏しく、妙に説明的で、人情に訴えかけたいという意図が丸見えで全然胸に迫って来ず、刑事もなんだか迫力が無い。結構題材がいいので惜しい!

  • 読み始めはイマイチかなと思ったんですが、最後は面白くて寝るのを惜しんで読み切っちゃった。
    ただ、ちょっと物語が複雑すぎた感があって、それが残念。
    登場人物も多かったし、難しかったっていう印象でした。
    でも、視点が面白くて、物語の背景の設定とかも初めてのパターンだったので、すごく面白かったです。

  • 戦後間もない時期、闇市で起きた誘拐事件と、それから15年後に起きた殺人事件。二つの事件が交錯するところに思いがけない真実が。誘拐事件そのものの真相も気になって読み進めたが、戦後日本の荒廃した世の中で必死に生きた市井の人たちの優しさと力強さにも心打たれた。

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著者プロフィール

1958年東京都生まれ。2000年「影踏み鬼」で第22回小説推理新人賞を受賞し、デビュー。01年「奈落闇恋乃道行」で第54回日本推理作家協会賞(短編部門)候補となる。08年『誘拐児』で第54回江戸川乱歩賞受賞。14年「墓石の呼ぶ声」で第67回日本推理作家協会賞(短編部門)候補に。17年『真犯人』で第19回大藪春彦賞候補になり、18年にWOWOWで連続ドラマ化。他の著書に『人さらい』『左遷捜査 法の壁』『左遷捜査2 迷宮入り事件』『冤罪犯』など多数。

「2022年 『時効犯』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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