きのうの世界(上) (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770378

感想・レビュー・書評

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  • 恩田氏独特のクロスオーバー的作品だった気がします。
    殺人事件、地方史伝奇風味添え、そして最終的に死者のエンディングスピーチ。みたいな。

    ・・・
    前半部分はやや入り込めなかったです。

    まるで催眠術師に語られるかの如く「あなたはふとそこで気づきます。何かがおかしいと」、という感じの自分の行為を第三者に説明してもらうかのような描写はすこし取っつきづらかった。

    また視点が頻繁に切り替わるのは、思考の一貫性をやや妨げるきらいはありました。ただしあとがきで本作が新聞連載であることを知り合点がいきました。

    ・・・
    謎の殺人事件も、とにかく前半はモヤモヤしますが、何とか頑張って頂きたく。後半はもう少し視界が晴れてきます。なかなか面白くなりますよ。

    ただ言ってしまうと、やはり恩田ファン向けの作品かなあと思います。

  • 「恩田陸」の長篇作品『きのうの世界』を読みました。

    先日、『蜜蜂と遠雷』で第156回の直木賞を受賞した「恩田陸」の10年くらい前の作品です。

    -----story-------------
    塔と水路がある町のはずれ、「水無月橋」で見つかった死体。
    一年前に失踪したはずの男は、なぜここで殺されたのか?
    誰も予想できない結末が待っている!!
    「恩田陸」が紡ぐ、静かで驚きに満ちた世界。

    〈上〉
    他殺か事故か。
    町の外れの「水無月橋(みなづきばし)」で死んでいたのは、一年前に失踪したはずの男。
    ようこそ、ここは、塔と水路の町。

    上司の送別会から忽然と姿を消した一人の男。
    一年後の寒い朝、彼は遠く離れた町で死体となって発見された。
    そこは塔と水路のある、小さな町。
    失踪後にここへやってきた彼は、町の外れの「水無月橋」で死んでいた。
    この町の人間に犯人はいるのか。
    不安が町に広がっていく。
    「恩田陸」がすべてを詰め込んだ集大成。

    飼い犬の「トラ」とともに暮らす、76歳の一卵性双生児「華代」と「虹枝」。
    彼女たちはいつも同じ時間に散歩をする。
    水無月橋で一人の男が死んだあの日も。
    そして、二人は思い出す。
    バス停に捨てられた赤い印のついた地図のことを。

    「ねえ、雨はどうやって数えるの? ほら、『ひと雨来た』っていうじゃない?」
    「あのねえ、雨を数えてはいけないよ。雨を数えると鬼が来るよ――」

    〈下〉
    この町の秘密。
    住人は塔のことを何も知らない。
    真実を隠すために、知らないふりをしているみたいだ。
    死んだ男は、一つの謎かけを残した。

    塔のある町が抱える秘密を住人たちは何も知らない。
    夜に塔を見てはいけないという町に伝わる不思議な教え。
    亀とハサミと天の川のステンドグラスが表す意味とは。
    殺された男は駅の掲示板に奇妙な貼り紙を持ち込み、誰かと連絡を取っていた。
    彼は町の秘密に触れてしまったのか。
    雨が降る。
    町の本当の姿が明らかになる。

    焚き火と推理小説が好きな高校生の「田代修平」。
    彼はあの死んだ男と河原で出会い、「この町には天の川が隠されている」という謎かけを残された。
    塔と町を見守ってきた旧家の少女「和音」とともにその死の真相に近づいていく――。

    「大人はすぐに忘れてしまう。楽しんだことも。怯えたことも。傷つけたことも」
    「それでいいのさ。続いていく、ということはそういうことだ」
    -----------------------

    塔と水路がシンボルで昭和の雰囲気を色濃く残している架空の町を舞台にした幻想的なミステリ作品… 独特の雰囲気に引き込まれましたね。

     ■第1章 捨てられた地図の事件
     ■第2章 日没から夜明けまでの事件
     ■第3章 溺れかけた猫の事件
     ■第4章 駅の掲示板の事件
     ■第5章 紫陽花とハンカチの事件
     ■第6章 川沿いに建つ洋館の事件
     ■第7章 焚き火の神様の事件
     ■第8章 点と線の事件
     ■若月慶吾の幕間
     ■第9章 同じ顔をした男の事件
     ■第10章 散歩する犬たちの事件
     ■図書館での幕間
     ■市川吾郎の幕間
     ■第11章 風が吹くと桶屋が儲かる事件
     ■第12章 井戸と鋏の事件
     ■第13章 帽子と笹舟の事件
     ■第14章 不吉な電話の事件
     ■第15章 彼女の事件
     ■第16章 彼らの事件
     ■第17章 彼らの事件の続き
     ■第18章 私の事件
     ■第19章 水無月橋の殺人事件
     ■解説 鈴木理策

    塔と水路の町の外れの水無月橋で「市川吾郎」が死体となって発見される… 彼は1年前に東京から忽然と姿を消しており、失踪後、「色川」という偽名を使い町の外れの隣の市の飛び地となっている場所に住み込み、町が抱える秘密を探ろうとしていた、、、

    そして、水無月橋の近くの洋館に住み、死体の第一発見者だった元教師で郷土史学者の「田中健三」が亡くなり、「吾郎」のことを調べようと町を訪ねていた「楡田栄子」も宿泊先のビジネスホテルで倒れ命を失う… なぜ三人は死ななくてはならなかったのか?町の抱える秘密とは? と、不穏な空気が充満しており序盤から中盤は興味を惹きつける展開で、どんどん読み進める感じの展開でした。

    あと、気になるのは、続々と登場するいわくありげな人物(犬猫含む)たち、、、

    ・喫茶店の女主人「宇津木宏子」と雨の日に喫茶店に現れる猫
    ・毎朝決まった時間に散歩する76歳の双子の老婆「虹枝」と「華代」と飼い犬の「トラ」
    ・川辺での焚き火と推理小説が趣味の新聞配達の少年「田代修平」
    ・殺人事件に興味を抱く元刑事「辰五郎」
    ・死体のあった場所を記した張り紙を見たかもしれない駅員「各務原猛」
    ・塔と町を見守ってきた旧家「新村一族」を仕切っている「新村志津」と、その親戚にあたる「新村和音」
    ・「若月酒造」の跡取りで、子どもの頃から「あいつ」が見える多重人格者の「若月慶吾」 等々

    それぞれ何か秘密が隠されているような個性的な人物たち… 彼等が、異次元的な雰囲気を持つ町での事件とどう係ってくるのか、興味深く読み進めました。

    三つの塔のうち、残っていた二つの塔が燃やされ、その後、ゲリラ豪雨のような大雨(嵐)が町を襲い、町全体が隆起し始め、遂に町の秘密が明かされるとともに、殺人事件の真相も判明する… のですが、うーん、ちょっと消化不良というか拍子抜けした感じでしたね、、、

    町がそもそも浮島的な構造になっていたり、「新村一族」には超常的な超能力が備わっていたり、殺人事件は起きていなかったり、死んでいく自らの姿を肉体から浮遊して見ていたり… と、ファンタジー(若しくはSF)的な要素やホラー的な要素、ミステリ的な要素がミックスされた作品なのですが、ちょっと詰め込み過ぎな感じで、それぞれの要素が中途半端な感じがして、結果的には物足りなさが残りました。

    これが「恩田」ワールドなのかもしれませんが… 独特の世界観を築き、中盤までの展開が愉しめただけに、ちょっと残念でした、、、

    広げ過ぎた風呂敷を、上手く畳めてない印象の作品でした。

  • なんやろ、モヤモヤ。あなたはだれ?

  • 上巻だけだと話は見えてこない。不思議な感じがするなと思ってたけど、「あなた」が誰なのかがわからないからかな。あなたと言われると私かと思うが、私じゃないから変な感じ。下巻に続く。

  • 不思議。どうなることやら。

  • 突然東京から失踪し別の土地で暮らし殺された市川吾郎とその不思議な土地

    そこに興味を持ち真相を探しに行った若い女の人
    その人の章になると彼女とかじゃなく、あなたはになるのがわくわくした

    3本の塔、水無月橋、雨の日にだけ喫茶店に現れる猫、駅の案内板、双子の老婆が拾った地図、、とか不可解なことが沢山でてくる

  • 「あなた」はどんな人なんだろうと読み進めていった。なんとなく女性なのかなと思った理由は未だにわからない。
    日本であるはずなのにだいぶファンタジーな世界を思い浮かべながら読んでしまった。
    ちょっとホラーになるのかな?と思っていたのですがね…

  • タイトルからして面白そうで内容も先が気になってどんどん読み進められました。

  • この世界観、嫌いじゃないんだよな

  • こってりとずっーと導入をしている。
    よって話が見えないため、下巻が凄い楽しみです。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

恩田陸の作品

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