パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062776615

感想・レビュー・書評

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  • 文学

  • [沈思と行動と]明治から大正にかけての社会主義者の頭目として紹介されることが多い堺利彦。社会主義者の「冬の時代」と呼ばれる時代に、糊口を凌ぐため彼が設立した「売文社」という代筆業に注目し、新たな堺の一面を浮かび上がらせるとともに、日本の社会主義・文学運動に与えた影響を解説する作品です。第62回読売文学賞受賞作。著者は、2010年に鬼籍に入られた後に本書が受賞作となった黒岩比佐子。


    本書で映し出される堺利彦像は、社会主義者というよりも一人のヒューマニストであり、俗な言葉を使えば良いおじさん。遠大な理想を抱きながらも沈着としており、後進の生活や保護に苦心をした懐の深い人物という印象を受けました。代筆という業を通して、日本の翻訳業などに大きな影響を与えていたこともわかり、社会主義者というベールの裏に埋もれていた堺利彦の新たな面影が本書で明らかにされているのではないでしょうか。

    〜堺利彦の事績は脚光を浴びることもなく、讃えられることもなく、人々の記憶から消えて、文字通り「棄石埋草」となった。それは堺が自ら望んだ生きかただった。〜

    一歩下がった生き方が良い☆5つ

  • あとがき を読んで、黒岩さんはご壮健なのだろうかとネット検索してみて、既に亡くなっておられたことを知る。奥付の著者略歴を見落としていた。

  • 長い…。でも勉強になった。堺利彦が小学校教師だったときに臀肉事件の野口男三郎を教えていたことがあるとか、本筋から逸れてはいるが、うおおって思わされるエピソードも盛り沢山。

  • 「苦労人」である。
    「日本社会主義運動の父」とも呼ばれる堺利彦は大逆事件で多くの運動家が処刑された時も、関東大震災直後に大杉栄が射殺された時もたまたま別件で監獄に繋がれていたために生き延び、「劇的な」生涯を終えなかったために知名度が大きくはないが、大逆事件関係者の家族や、或いは別件で釈放された多くの主義者の糊口を凌ぐべく「売文社」なる恐らくは日本で最初の出版エージェントを起こし、日保の社会主義運動を下から支えた男の詳細な記録である。
    本編の感動と共に、文庫版の梯久美子さんの解説にもこみ上げるものが。

  • 「理想を求めながら、時勢に反して生きることの意味を問うた名著~中島岳志」  簡にして要を得た見事な解説といい、無駄なページが1ページもないすばらしい良書。教科書でサラリと流される「大正デモクラシー」がいかにすさまじい時代だったかを想像するための必読書といえる一冊。
    「堺が生きた百余年前の「冬の時代」は、また違った形で、現代に繰り返されている。華々しい闘いの昂揚はなく、目の前に広がるのは、果てしなく続くように見える困難な日常である。引き波に足もとをさらわれるような時代にあって、何をよすがに生きるのか。そのヒントが本書にあるように思えてならない。 梯久美子 解説より」

  • 単行本で既読。

  • 祝文庫化!!!!

    講談社のPR
    「20世紀初頭、社会主義への激しい弾圧の中、同志に仕事と居場所を与えるため、堺利彦は「売文社」を立ち上げる。読売文学賞。遺作。 」
    (単行本)
    「それは“大正版忠臣蔵”というべき不屈の時代だった
    夏目漱石から松本清張まで多くの作家との意外な接点、日本初の編集プロダクションかつ翻訳会社を率いて「弾圧の時代」をユーモアと筆の力で生き抜く姿、社会主義運動家に文学から光をあてる画期的試み。

    堺利彦が幸徳秋水と共に日露戦争に反対して設立した平民社のことは、これまでに多くの歴史書が取り上げている。一方、堺が社会主義運動の「冬の時代」を耐え抜くために設立した売文社は、ほとんど無視されているに等しい。だが、私は「売文社」という語の強烈なインパクトに惹きつけられた。調べ始めるとユニークな出版物が次々に出てきて驚かされた。売文社に集った人物も個性派揃いで面白い。――<「あとがき」から(抜粋)>

    講談社創業100周年記念出版
    第62回読売文学賞[評論・伝記賞]受賞」

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著者プロフィール

1958年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。ノンフィクション・ライター。図書館へ通い、古書店で発掘した資料から、明治の人物、世相にあらたな光をあてつづけた。
『「食道楽」の人 村井弦斎』でサントリー学芸賞、『編集者 国木田独歩のj時代』で角川財団学芸賞、『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』で読売文学賞を受賞。
他の著書に『音のない記憶』『忘れえぬ声を聴く』『明治のお嬢さま』など。10年間で10冊の著書を刊行した。惜しまれつつ、2010年没。

「2018年 『歴史のかげに美食あり 日本饗宴外交史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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