喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062776813

感想・レビュー・書評

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  • 「(気持ちが疲れたとき)(人生に疲れたとき)心を整えてくれる小説」
    大学生活を思い出した。私は橋場さんにも喜嶋先生にもなれなかった。

  • 再読。私は修士までで研究の道を挫折してしまったけれど、もしもっと気持ちを強く持てていたらきっと橋場さんみたいになっていたかもしれない。でもきっと喜嶋先生にはなれない。
    私には焦燥と羨望の本だったけれど、そうでないにしても買った文庫の帯にあった「(気持ちが疲れているとき)(人生に迷っているとき)心を整えてくれる小説」というのは最後の1ページを無視しすぎているのでは。

  • まず、タイトルが素敵。好き。
    淡々とした文章で面白いことを言おうとしていないのに、クスッとしてしまう可笑しさがある。
    大学生、修士課程、博士課程についてや教授、助教授、助手のことなど内部からの視点があって興味深かった。
    最後の数ページは胸が押しつぶされそうな感覚。ずっと低温(表に出にくいつくり)だったのに、思いがけず感情が現れていて苦しかった。
    ラストも想定外で驚きのまま終わる。
    小学生のときに夜空の星を眺めることが大好きだった主人公が、大人になって空を見ることもなくなってしまったのが悲しい。

  • 誰にとっても、かけがえのない一瞬が人生のどこかでやってきて、だけどそれは一度っきり。皮肉なことに、その時間の中にいるときはその愛しさに気づけない。自分を取り巻く環境に支配されるようになると、そういうのって忘れてしまう。喜嶋先生はげんきでいるだろうか。

  • 手元に置いておきたい、何度も読み返したいと思える本。
    実際に何度か読んだ。
    どこが良いのかうまく説明できないが、この本を読むと何かに打ち込みたくなる、一生懸命になりたくなる。しかも、その気持ちは激しくというよりはじわじわと。
    タイトルと文庫の表紙も好き。

  • 自分自身が理系でこれから研究室に配属される身なので、自分の将来を重ね合わせて読んでいてワクワクした。

    文章や思考がまさにザ・理系という感じで、それがむしろ読みやすく気づいたら次々とページをめくっていた。

    ちょくちょく垣間見える主人公の人間らしさが可愛いく彼自身の素直さを表していて、感情を面に出すことはあまりないのだけれどその言葉が彼の素直な気持ちであることがより表現されている。物語の中で喜嶋先生もそのようなことを言っていた。

  • どちらへ進むべきか迷ったときは、いつも『どちらが王道か』と僕は考えた。
    それはおおむね、歩くのが難しい方、抵抗が強い方、厳しく辛い道の方だった。
    困難な方を選んでおけば、絶対に後悔することがない、ということを喜嶋先生は教えてくれたのだ。」

  • (私が読む)小説には、正しくないこととか、それを許すこととか葛藤とかが描かれていることが多いのに対して、喜嶋先生はずっと曇りなく正しかったように思う。

  • 理系の研究者、大学院ってこうなんだ、ということが分かった。なんだ、私が探してた世界はそこにあったのか。夢中になれるものをずっと追い求める。捨てるのではなく、選んでいるのだね。その結果がとても悲しいけれど、事実はそういうことで、喜嶋先生の心は大丈夫かな、と心配になる。子供にも読ませて、人生を選ぶ前に世界の一端をのぞいてみてほしい。95


  • 色々と思うことがあって泣いた。文系だったけど。
    大学時代の私がいたし、同期も、先輩も、教授もいた。

    私は学問の純粋さと謙虚さが好きだったんだなと思う。
    今思えば汚くて狭い研究室で泥水みたいなコーヒーを飲みながら膝の上で必死にメモをとっていたあの時間は本当に贅沢だったなと思う。

    当時から他学部の人に〇〇勉強して(将来)どうすんの?って言われるたびに、私は就職するために大学来てねーよって思ってた。
    好きなことをただもっと知りたかった。

    気づけばあの頃からだいぶ遠いところまで来てしまったけれど、私が今頑張れているのは間違いなくあの時間で知った感情と感動があるからだと思う。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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