世界は分けてもわからない (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
3.80
  • (167)
  • (320)
  • (239)
  • (30)
  • (8)
本棚登録 : 2805
感想 : 274
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880008

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 随分前に「生物と無生物のあいだ」を読んで以来の福岡本。
    生物学者のエッセイ風読みものだが、とにかく文章が極上の作家並みに上手い。内容も相変わらず面白い。ロードムービーさながら場所と場面を変え、自然科学的切り口から日常の常識を覆し、読者の知らなかった真実を教えてくれる。作中にひとりの写真家が著者のところに来て自分の作品の言語化を依頼するという下りがあるが、確かに福岡氏の文章にはそういった圧倒的な力量とオリジナリティがある。
    後半100ページほどはアメリカコーネル大学の名門研究室でのデータ捏造事件のドキュメンタリーが続く。この本の出版数年後に理化学研究所でSTAP事件が起こったのはなんとも予言的だ。
    極上の小説を読んだような読後感。オススメです。

    「不足と欠乏に対して適応してきた私たちの生理は過剰さに対して十分な準備がない。インシュリンは過剰に対して足るを知るための数少ない仕組みだった。それが損なわれたとき代わりの因子は用意されていなかった」
    「生命現象において部分と呼ぶべきものはない。...全体は部分の総和以上の何ものかである」
    「消化のほんとうの意義は...前の持ち主の情報を解体するため消化は行われる」
    「細胞が行っているのは懸命な自転車操業なのだ。エントロピー増大の法則に先行して細胞内からエントロピーをくみ出しているのだ。あえて分解することによってエントロピー=無秩序が秩序の内部に蓄積されるのを防いでいるのである」

  • 読み進めていくうちに震えた。すごくいい。

  •  新年1発目は積んでいた福岡伸一氏の著書。毎回恐ろしいほどの文章のうまさでビックリするけど、それに加えて本著は圧倒的な構成力も加わり、とてもオモシロかった。リリースされたのは2009年だが、このタイトルがこれほどまでに意味ありげに思えてしまうことに隔世の感あり。
     12章からなるエッセイなんだけども各章につながりがある。著者がイタリアの学会へ行くところから始まり、そこからの展開が上質なノンフィクションそのもの。(実際、絵画の切断の話と別件のスペクターによるデータ改竄の話は一級品!)生物学まわりのガン細胞とES細胞、食品添加物や絵画や写真といったアートなどさまざまなテーマを取り扱いながら、それらの共通点を見出してエッセイが紡がれている。しかも内容としては難しいにも関わらず、著者の圧倒的な文章のうまさで分かりやすく噛み砕いてくれており興味深く読めた。
     タイトルにある「分ける」というのは、全体から部分的に切り取ることに果たしてどれだけ意味があるのか?というテーマ。また視点に関する議論も多くマップヘイター、マップラバーというキャッチーなワードで主観と俯瞰について話していて、それも「分ける」の一種として捉えている。世界と相対するにはどちらか片方だけではなく両方大事という話は当たり前のように思えるが、生物学を通じてこの内容で著者から伝えられると納得感が違った。最近はあまりにも俯瞰の意見が多いから、主観の視点を大切にしたいと個人的に思っていたが、本著を読んで何事もバランスだなと思い直した。

  • ★図書館だよりNo.73 「読書への羅針盤」
     松本 健作 先生(土木工学科)
     ➣記事を読む https://www.sist.ac.jp/about/facility/lib/letter.html#073

    【所在・貸出状況を見る】https://sistlb.sist.ac.jp/opac/volume/93865

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=0001043736

  • 「生物と無生物のあいだ」がとても好きだったのと、タイトルに惹かれたので!

    構成や言葉えらびが本当に素敵で、科学について書かれた文章と思えない、美しい〜〜SDS-PAGEとか、学生の時にやったけどこんなに美しく文章にできるのか…となった。

    スペクターのストーリーは、最近読んだ「科学とオカルト」の議論が思い出された。理論と技術、再現できないことに価値があったこと、とか

    人がものごとを分けてしまうこと、勝手に境界をみつけてしまうこと、なインクラビリ

    (ちょっと表現が違うかもしれないけど)「全体から部分を取り出したときに失われるものは、その流れである」みたいな記述は、なるほど〜と思った!組み合わせや相互作用、生物以外でもこの考え方ってつかえそう

    「分けてもわからないと知りつつ、今日もなお私は世界を分けようとしている。それは世界を認識することの契機がその往還にしかないからである。」
    細谷さんの具体と抽象にも通ずるかな、具体だけ、抽象だけじゃなくてその粒度をコントロールしていくこと

  • 動的平衡のまた違った説明パターン、いろいろなエピソードを交えたバリエーション

  • ミクロの文体、言葉の選びとしてもおもしろいし、マクロな構造としても素晴らしい。

    自分も幾何学的な美のある文章、美しい文様を描けるようになりたい。

全274件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

福岡伸一 (ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2013年4月よりロックフェラー大学客員教授としてNYに赴任。サントリー学芸賞を受賞し、ベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『できそこないの男たち』(光文社新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)、『せいめいのはなし』(新潮社)、『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』(文藝春秋)、『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)、『生命の逆襲』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『フェルメール 隠された次元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

福岡伸一の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
フランツ・カフカ
ジャレド・ダイア...
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×