世界史を変えた薬 (講談社現代新書)

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感想 : 65
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062883382

感想・レビュー・書評

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  • 歴史の面から見た薬の話なので難解な化学的なあれこれは登場せず読みやすかったです。
    以前知人から「麻酔は理屈が分からないけれど効くから使っている」と聞いた時は本当だろうか?と思っていたのですが現在もそうなのですね。
    大発見も利権や権威のプライドの前に破れ、幾つもの救える命が失われた記述を読むと悲しくなりますがとても分かりやすい内容でした。

  • ここ数年で、一番読み応えがった。

    人類の最大の敵の1つである細菌に対して、
    作られた人類の武器である薬。

    それらのなかでも、歴史を変えたであろうという
    薬剤をピックアップした本書。

    漫画ワンピースでも紹介された壊血病へのビタミンC
    人類初の抗菌薬、サルファ剤
    奇跡のセレンディピティが起こした神の恩恵とも
    いえるペニシリン
    20世紀に出現した最悪のウイルスであるエイズの
    治療薬を生み出した日本人、満谷裕明さん

    人類文化史初期の治療では、動物の糞や血を薬にする事で
    汚れによる悪魔を追い出すという発想の汚物薬から、
    消毒という概念が理解できなかった中世医学。

    今では、信じられないような治療を駆逐し、正しい薬効を
    追求していった研究者達。
    『解らない事の道筋を探すその過程を科学という』
    この言葉が深く感じられる。

    そして、特に印象に残ったのが、ペニシリン以降に多くの発見をされた、より優秀な抗生物質の数々。
    一度、限界を超えることができたら、
    雪崩のように進化していく『1マイル4分の壁』

    この言葉は人類の進化にとって、とても本質をついた
    言葉だと思われる。

  • 「ふしぎな国道」の著者による、本人の専門分野かつ超興味深い、この内容。ぜひとも読みたいと思ってきた。
    はたして、一気読みである。目下旅行中で手元の本が少ないのに、非常に困る(笑
    内容はオーソドックスに麻酔剤、消毒薬、ペニシリン、アスピリンなどを含むが、ビタミンC、キニーネ、モルヒネ、サルバルサンの採用に著者の見識を感じた。エイズ治療薬など最新の知見を含めるのも然りだ。
    私事になるが、今年は家族に本書にも言及のある重病患者が出た。それはそれでもちろん大変な事件だったが、超メジャーな病気でもあり、その克服に人類最高の叡智と資源と労力が惜しみなく投入されていることをつくづく感じた。これがマイナーな難病患者であったなら、闘病の苦痛や死の恐怖に加え、勤務先の上司から製薬会社に至るまでの社会の無理解とも戦わなければならないわけで、こんなことにさえ「格差」は存在するのだと絶望した。
    そんな次第で、いかに病魔の克服が社会に待ち望まれているかを目の当たりにしただけに、重大疾患の画期的治療薬が幾度となく闇に葬られかけてきたと知って仰天した。医師の手指消毒の重要性を最初に説いたゼンメルワイスの悲惨な生涯や、ヴィクトリア女王が麻酔下(いわゆる無痛)分娩をしてから150年以上経った今なお、くだらない議論に終始している我が日本のお寒い状況など、叡智とともに人類の愚かさもまた、この分野には凝縮されているようだ。
    人類最高の頭脳が銀行や証券会社に流れるようなことがあってはならないと、「隷属なき道」(ルトガー・ブレグマン)には書いてあった。ベーシックインカムによって全員に最低限の食い扶持が確保されれば、英才が金のために虚業に身売りするようなことはなくなり、人類の進歩と幸福に大いなる貢献をするようになるだろうと。
    そんな日が来ることを祈らずにいられない。

    2017/8/5読了

  • 紹介されている薬の発見の歴史は、
    大抵は知識として持っているものが多かったが、
    どの薬もその時代の人物を中心に、
    歴史を絡めてざっくりと紹介してあって読みやすい。

    「もし」という部分はそれほど深くはないので、
    その期待には応えていないけれども、
    十分に楽しめました。

  • 著者の本領発揮の作品。自分のフィールドの製薬については、ちらりと裏側をのぞかせるだけで、難しい話はほとんど出てこない。薬品の周辺のエピソードもしっかり載っていて読んで面白くためになる。
    理系というか化学畑に進学を考えている中高生にはぜひ読んでおいてもらいたい作品。

  • 2015年刊行。著者は元東京大学大学院理学研究科広報担当特任教授。

     壊血病、梅毒、マラリア。人間が克服しようとした、あるいは克服しようとして未だ達成できていない疾病に対抗する薬剤の発見・確立を叙述する。ペニシリンやビタミンCなどさほど新奇でないのも多い。
     その中で、麻酔の確立が齎した益は計り知れないなあとの感。とはいえ、ここまで利用が進んでいる麻酔の機序が未だ判然としていない点は驚かされる。

  • ビタミン、モルヒネ、鎮痛剤、ペニシリン・・など現在日常生活や医療現場で使われている薬がどのように発見されたかをその歴史とともに解説。

    現在では当たり前のように使われている薬がどんな苦労を伴って開発されたのか、ということを知るのには非常にいい。

    普段薬のことなど意識もせずに暮らしているが、感染症など、先進国でその脅威が克服されたのはひとえに薬の影響が大きいだろう。

    薬局で買えるような薬が当時の人々にとっては国家全体で取り組むような規模のプロジェクトだった。そんなことを教えてくれる。

    また長年、害にしかならない薬をその害毒を認識せずに使い続けていたというところも興味深い。

  • 薬剤師ではありますが、あまり薬の歴史については勉強したことがなく、知識もありません。
    普段何気なく調剤している薬には、それぞれに開発者の思いがあると思います。また、そこには悩んでいる患者さんがいます。
    本書では、限られた薬剤についてですが、そういったことが丁寧に書いてありました。
    大変勉強になりましたし、歴史を学ぶことで薬に対する有難味が出たというか、やさしくなれたというか。業務に対する姿勢が少し変わりそうです。

  • 馴染みのある薬剤が多数出てくるが,キニーネが清の康熙帝の命を救ったことやモルヒネを含むアヘンをイギリスが中国に輸出して大きく歴史を変えたこと,ペニシリンを発見したフレミングの予備知識が素晴らしかったこと,梅毒がいち早く世界中に広まったこと,エイズの治療薬の開発に日本人が絡んでいることなど,話の種に使えそうな話題が満載だ.

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著者プロフィール

千葉大学大学院社会科学研究院准教授。1976年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)

〈主要業績〉
『「平等」理念と政治――大正・昭和戦前期の税制改正と地域主義』(吉田書店、2014年)
「大正期の東北振興運動――東北振興会と『東北日本』主幹浅野源吾」(『国家学会雑誌』第118巻第3・4号、2005年)

「2019年 『公正から問う近代日本史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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