タテ社会と現代日本 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062884303

作品紹介・あらすじ

『タテ社会の人間関係』著者の最新刊!
現代新書既刊3部作『タテ社会の人間関係』『適応の条件』『タテ社会の力学』累計170万部超のベストセラーシリーズ第4弾!

長時間労働をもたらす小集団の封鎖性。
非正規・正規雇用問題と「ステイタス・コンシャス」。
家族という小集団が招く家庭内虐待問題。
「場」の序列意識から生まれる新参者へのいじめ。
タテ社会のなかの女性の社会進出……

「資格よりも場」「序列意識」「ウチとソト」など、日本社会独自の構造を鮮やかに解き明かした「タテ」の理論。現代日本の抱える問題を「タテ」の理論を使って読み解く52年目の続編。

終身雇用制が崩れても、なぜ先輩・後輩の関係は変わらないのか?
日本の組織で上司の上司に告げ口をするのが許されない理由とは?
なぜ序列の意識なしに席に着くこともできないのか?
『タテ社会の人間関係』から50年超、著者がいま感じることとは?
現代社会と向かい合うための、「タテ社会」入門書!


「失われた二〇年」などと言われるように、低成長の時代が長年つづき、新卒一括採用から定年まで、すなわち入り口から出口まで面倒を見るという日本型経営がかたちを変えつつある、と報じられている。しかし、年功序列のようなものが薄らいだとしても、タテのシステムは残るところに残る。その大きなものが、先輩・後輩の関係である。最近の若者は自由になったといわれるが、学校において上級生、下級生の区別はなくならない。親分・子分の関係が薄らいでも、その要素がなくなっていないのと同じように、会社における先輩、後輩の関係はなくならないだろう。――「プロローグ」より

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭「二〇一七年に、今年は拙著『タテ社会の人間関係』が出版されてちょうど五〇年になります、と出版社から知らされて(私自身気がつかなかったことであったが)、それを記念して小冊でもよいから一冊出してほしいと依頼を受けた。」
    末尾「日本人一般が坊主と袈裟をはっきり分離して考えられるようになり、職種別組合というものが本当に成立するようになったら、そのときこそ、ソーシャル・ストラクチュアも変るのであろうと思う。それほど、体質改善がなされなくても、少しでもそうした部分がふえていくことが可能であるならば、それにこしたことはないと思うのである。」

    雑誌「クロワッサン」で紹介されていて購入。
    日本社会の構造を「タテとヨコ」、「場と資格」などのキーワードを用いて分析。前著の『タテ社会の人間関係』(1967年刊)での主張を現代の現象に当てはめ直してある。巻末(というには長い)には附録として大元となった「日本的社会構造の発見」(『中央公論』1964年)も掲載されている。

    日本ではその「場」に着いた順番が重視され、タテの関係が形成される。資格(属性)は重視されない。長幼の序(中国や韓国)ともまた違い、親分と子分、先輩と後輩の人間関係。
    対して、イギリスやインドでは、階級やカーストが重要な役割を果たす。

    最近、成果主義を導入したり、終身雇用が崩壊して雇用の流動性が増している職場が増えているのだろうけど、どこかでタテ社会が残り続ける。単純に外国の仕組みを取り入れてもうまく機能しない場合もある。そうしたことを考えるためには、本書の言うところが参考になる。

    エピローグで「一つだけの「場」からの転換」として、「日本のタテ社会は、どうしてもネットワークの弱さを抱えています。その弱さをいかに補間していくか、複数の居場所をいかに見つけていくか、高齢化が進む現在、そうしたことを考える時期にきていると思います。」と述べている。家庭や職場以外の人間関係を築くためには自分で努力をする必要がある。ボランティア的にやっていることとか習い事とか、面倒だったり自分で自分を追い込んでるような気がしてしまう時もあるけど、無駄ではないと思える。

  • 本書の本筋ではないが、結婚した男女と生家との関係の分類が興味深い。
    日本が男系でも女系でもないことを明確に示している。
    筆者によれば、祖先崇拝も感情的つながりを重視する日本ならではの慣習らしい。

  • 社会集団構成の要因を「場」と「資格」の2つと捉え、それぞれの内部メカニズムを分析することで、こと日本におけるタテ社会の人間関係を描写した1冊。

    特に印象的だったのは前述の2つの概念整理に加え、会社内における序列意識の一節(原文は下記)。日本社会は場を重んじる社会集団であり、大きくその特徴として①序列意識(年長者など)②集団内のエモーショナルな結びつきの2つが挙げられる。
    これらを背景とした際、重視すべきは自分個人の能力ではなく、集団内における自己の立ち位置や結びつきであり、故に下記のようにどこまでいっても「オレだって」という不公平感が拭えないのだと理解できる。他国と明確な比較を行なったことはないが、この企業内における意識は実感とも通ずる部分があり、故に能力主義のインストールが困難であるのだと認識するに至った。

    「筆者のみるところ、日本人の「オレだって」という意識はまったく世界に類例をみないほど強く、自己に対する客観性をミニマムにしている」(p.73)

  • 学生時代の国語で読むくらいだったが、監査系雑誌で紹介されてたので、読んでみた。
    古典となった、タテ社会の人間関係読むよりも手っ取り早いのだろうけど…

    それにしてもいまも同じ、たいして変わらんと思う事象が並んでることに驚きもある。

  • プロローグ 日本の先輩・後輩関係
    失われた20年とタテ社会
    先輩・後輩の関係ー集団構成と人間関係
    第1章 タテの関係とは?
    資格と場
    核心としての小集団
    上司を飛ばすのはご法度
    小集団の封鎖性
    エモーショナルな結びつき
    理論より感情を優先する社会
    ウチとソト
    転職の損失
    序列意識
    伝統芸能とオーケストラ
    第2章 タテ社会と「いま」
    タテのシステムと雨具たり
    普遍的なルールへの流れ
    ステータス信仰
    長時間労働の温床
    社会習慣と法制度
    まだらな働き方
    専門職の扱い
    村八分と仲間外れ
    第3章 「タテ」の発見
    交わらないイギリスの回想
    インドのカースト意識
    西洋の近代化とは異なる姿
    第4章 これからのタテ社会
    社交の場がない
    核家族化と孤独死
    インドのシニア・モスト・ウーマン
    エピローグ 場は一つとは限らない
    附録 日本的社会構造の発見

  • 会社における人間関係の複雑さ、意思決定の遅さ、イノベーションの少なさなど、日本の会社の問題点はいくつか挙げられる。

    その原因の一つが、タテ社会における「感情の結びつきの強さ」にあると感じる。
    タテ社会の良さももちろんあるが、少子化が進み、一層国際化が進む日本において、タテ社会のままでは国際社会から取り残される気がする。

    本書の付録にもあるが、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の感情を持たないようにする事を心掛けたい。

  • 昔何度も読んだな、中根先生の著書。
    新刊が出てたんで読んでみたが、新参向けの、先生の簡単なまとめと、最初の論文をまとめた、記念稿みたいなもんだった。
    あんまり新鮮味はなかったが、おっしゃってることは、改めて感服。

  •  
    ── 中根 千枝《タテ社会と現代日本 20191113 講談社現代新書》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4062884305
     
    ♀Nakane, Chie 社会人類学 19261130 東京 20211012 94 /生涯独身
    /女性初の東大教授。日本ユネスコ国内委員会会長、途上国への政府開
    発援助(ODA)の在り方を議論する文部科学省の国際教育協力懇談会
    座長などを歴任。日本学士院会員。1998 勲二等宝冠章、2001 文化勲章。
    …… タテ社会を本の名前としたのは講談社の編集者で、タテを上意下
    達や権力構造と考えるのは誤解だと述べている。
    ── 朝日新聞 20120714 熊本版朝刊27頁(Wikipedia)
     
    (20211106)
     

  • 日本に強く根付いている、先輩と後輩、上司と部下の関係、集団で行動する傾向について書かれていました。
    集団の封鎖性からその集団でしか生活できないと考えてしまい、結果自殺へ繋がることも問題視されていると述べられていました。

    また、日本では同じ「場」を共有することを重要視し、年功序列のようなその「場」に居た長さで集団内の階級が位置づけられていました。
    今では年功序列などの廃止を進める企業もありますが、タテのシステムつまり先輩と後輩などの関係はなくならないと語られています。


  • 前半部の分かりやすさ、それを読んだ後に、後半部に引用された骨太の理論がすんなり入ってくる。日本の人間関係をインドのそれと比較する。

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