ユダヤ教の誕生――「一神教」成立の謎 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062921527

作品紹介・あらすじ

放浪、奴隷、捕囚。民族的苦難の中で遊牧民の神は成長し、ついには全宇宙を創造・支配する唯一なる神ヤハウェに変貌する。なぜ彼らは「一神教」を成立させ、「律法の民」となったのか?キリスト教やイスラームを生み、歴史の果てにイスラエル国家をも造り上げた「奇跡の宗教」の軌跡を、『聖書』の精読を通して、神理解の変化に焦点を当てつつ探究する。

感想・レビュー・書評

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/740879

  • 旧約聖書は、事実?フィクション? という議論があったりするのだけれど、そんなことは一切気にせず、歴史の事実をトレースした寓話として、そこからユダヤ教がどんな生い立ちを経て来たのかを教えてくれる本。研究者が書いた本だけあって、中途半端なオカルト的なところはない。諸説あるものもニュートラルに扱ってくれるから、説得力のある論に思える。進化の過程を事細かに説明するなんて複雑になりそうだが、神の性格を角度を変えて見ていくことで、流れを作って教えてくれる。その成り立ちを考えることなど無かったが、ユダヤ教は最初からユダヤ教ではなかったのだ。原初のユダヤ教を、小さな規模の家畜飼育を生業にした部族が生み出し、エジプトやギリシャ、ペルシャなど古代の歴史との関係で変化、変遷してきたという。ユダヤ教の成立をこのように、ある種明快に説明されればされるほど、その運命的な不思議さを考えてしまう。同時にその魅力も増すのである。 

  • 導く神―放浪の民に与えられた約束
    解放する神―エジプト・奴隷生活からの脱出
    戦う神―「聖戦」と約束の土地カナンの征服
    農耕の神―農業王国としてのイスラエル
    審きの神―王国の発展と選民思想の強化
    隠れたる神―ユダ王国滅亡の衝撃
    唯一なる神―世界の歴史を導く神へ
    律法の神―ユダヤ教の成立

    著者:荒井章三(1936-、福井市、神学者)

  • 仏教にせよアブラハム宗教にせよ世界宗教は反権威に始まりどこかで社会の中心となって権威を築きながらも反権威を貫くものなのであろう。先日読んだラブキン氏の『トーラーの名において』でユダヤの本来的な周辺性、流浪性を著者は主張していた。あくまで我々は周辺であり、虐げられてきた者たちであり、流浪の民である。本書でも初期ヘブライ人の起源を古代エジプト期のオリエントにおける低社会階層民一般を指す言葉であるハビルに求めている。虐げられた者たちのための思想であることは彼らがイスラエルとして豊かに強大になってからも預言者たちによって受け継がれ、後にキリスト教やイスラームに繋がっていった。

  • 旧約聖書の研究書。各篇で語られている「神」の像から、どのように人々の中の「神像」が変化していき、「人」と「神」の関係が変わっていったかを考察する。一つ一つの論は分かりやすく、そこに描かれる「神」の姿も納得がいった。旧約聖書は、こういう風にも読めるのだなあと納得した。ただ、旧約聖書の各篇は必ずしも古いものから順に並べられているわけではない(たとえば、「創世記」の成立は後に続く「出エジプト記」などより新しい)という論も読んだことがあるので、その辺との兼ね合いはどうなっているのかなあと思った。

  • ユダヤ教の本質は人間の行動原理を示すことである。自分がしてほしくないことは、他人に対してするな、という点に集約されている。

    イスラエルという国家にはユダヤ人が住み、ヘブライ語を話している。

    私をおいて神はいない、という言葉によって、神の唯一的普遍的性格が強調されている。他のいかなる神も主に対抗して神的権威を主張することはできない。

    ユダヤ教の歴史において民が苦難の時代を迎えるとメシアが登場し、その都度人々は熱狂した。

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著者プロフィール

1936年生まれ。神戸松蔭女子学院大学教授、学長を歴任。現在、同大学名誉教授。著書『新共同訳聖書 旧約聖書注解Ⅰ』(日本基督教団出版局)、『ユダヤ教の誕生ーー「一神教」成立の謎』(講談社)ほか。

「2021年 『ナチ時代に旧約聖書を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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