インド仏教思想史 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062921916

作品紹介・あらすじ

初期仏教(原始仏教)、部派仏教、大乗仏教。仏教とは何か? インド仏教史に沿って、基本思想と重要概念、諸思想の変遷を概観する。

感想・レビュー・書評

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  • インドにおいて展開された仏教の展開を追うかたちで、その思想について解説している本です。

    初期仏教から部派仏教を経て、大乗仏教にいたるまでの仏教の諸思想が手堅くまとめられており、入門書として優れた内容の本だと思います。ただ、大乗仏教の諸思想をとりあげている箇所では、本書の説明からその概要を知ることはできるものの、その思想的な意義についてもうすこし踏み込んだ叙述がほしいようにも感じました。たとえば、大乗経典の代表的な思想をあつかっているところで華厳経や法華経がとりあげられていますが、その思想上の意義についてなんらかの見通しを示してもらえたほうが、読者の理解が進むのではないかという気がします。

    著者は本書のほかにも『仏教入門』(岩波新書)という入門書を刊行していますが、本書はそれよりもさらに一歩踏み込んで仏教の諸思想を紹介している本ということができるように思います。

  • 三枝先生が中村元先生と書かれた『バウッダ』が流れとすれば、この本は思想の一つ一つに触れて解説してある。
     初期仏教、部派仏教、大乗仏教の大きな分類とその中に「名前のついた」思想の解説がある。テストだと教科書的に名称だけ覚えておくようなことをきちんと解説してある。学術的な解説だが極力難しくなく、大前提となる仏教基礎知識がなくてもわかるように書かれていると思う。それ故に専門的な人には物足りないのかもしれない。自分くらいだと、浄土真宗の法話で聞いていることが、いかに初期仏教、部派仏教とも関わりがあるのかと言うことを解説を通して明らかにしてもらっている感じがしてとてもよかった。
     ずっと佐々木閑先生のYouTube講座を聞いているので、インドからの仏教の伝播についてはなんども聞く感じになってなかなか身につかない自分にとっては復習のようでよかった。
     あとで用語も丁寧に解説されているので、あとで気になることを探して読むのもいいと思う。
     ナーガールジュナから如来蔵・仏性思想、唯識説の辺りは系統だったものを読んだことがなかったので、難解なことながら解説が丁寧で挫折しない入門書としてはいいと思う。
     バウッダとこの本で初期仏教から大乗仏教への流れと先人の考えた中身が一致する感じがする。そう思うとこんなにたくさんの人がこんなことを考えていまここの自分に仏教が伝わっていると言うことに感動して泣いてしまうのだ。

  • 読みやすい仏教の入門本。インドというタイトルがありますが、実際には大乗仏教を意識しながらのものなので、そこまでインド感がありません。
    多少著者の語りが気になりますが(現代に通じるとかいって、物理学者の話とかヴィトゲンシュタインとか持ち出さなくていいでしょ)、基本的には仏教の概要をざざっと説明しています。

  • やはり大乗の徒だなあ、という。無味乾燥な中に突然文学的詠嘆が出てきたりして読む気が失せる。

  • (後で書きます。索引および簡易な参考文献リストあり)

  • ゴータマ・ブッダの活躍した時代は、非常に多くの議論が自由奔放におこなわれており、たとえば六十二見といわれたほどであった、ということは先に述べた。そのなかに、つぎのような難問(アポリア)が流行していた。

    A
    ①世界は常住である。
    ②世界は無常である。

    B
    ③世界は有辺である。
    ④世界は無辺である。

    C
    ⑤身体と霊魂は一つである。
    ⑥身体と霊魂は別である。

    D
    ⑦人格完成者(如来)は死後に存在する。
    ⑧生存しない。
    ⑨生存しかつ生存しない。
    ⑩生存しないかつ生存しないのでもない。

    これを「十難」と称する。
    ゴータマ・ブッダに対しても、何度もこの難問がつきつけられた。ブッダはこれに対して、つねに「無記」を通した。すなわち回答をしなかった。
    「ここにわたくしが断定して説かなかったことは、断定して説かなかったことと了解せよ。…「世界は常住である」などということは、わたくしが断定して説かなかったことである。何故にわたくしはこのことをいずれとも断定して説かなかったのか?なぜならば、このことは目的にかなわず、清らかな修行の基盤とならず、…正しいさとり、ニルヴァーナのためにならないからである」

  • 本来、大学で学んであって然るべき(印度哲学科出身)ものなのに、多くの気づきや発見があったのが、嬉しくも情けない。
    インド仏教の歴史を網羅的に扱っていて、かつ平易な文章で書かれているので、入門書としても優れている。
    やはり今の世界には仏教が、それも原始仏教が必要だという想いを新たにした。
    慈悲喜捨、楽を与え苦を取り去り、己と他を喜ばせ、人に何かを与えてもなんの見返りも期待しない。これこそが今の世の中の多くのことを解決してくれるはず。

  • インド仏教思想史の入門書です。若干、著者の主張をまじえますが、インド仏教史について、簡潔にまとめられていました

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著者プロフィール

1923年静岡市生まれ。東京大学・ミュンヘン大学などに学び筑波大学・日本大学などで教授として勤める。現在、筑波大学名誉教授。文学博士。著書に『バウッダ』(中村元と共著、小学館)、『仏教入門』(岩波新書)、『世親』(講談社)、『初期仏教の思想』上・中・下(第三文明社)『龍樹・親鸞ノート』『大乗とは何か』『ブッダとサンガ』(法藏館)ほか多数。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

「1985年 『比較思想研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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